銀時の手はまっすぐに、着物の裾へのびてきた。
襦袢と、それからもう一枚巻いている下着をかきわけて、骨ばった指がしのびこむ。
「やっ、だ…もう、いきなり…」
は身体を軽くよじらせた。物事には手順というものがあるだろうに、いきなりそれはないでしょう、と思う。
けれど聞く耳はないらしい。しっかりと閉じたままの太ももを、指で突かれて促された。は仕方なしに足の力を抜いた。
大きな手が少しだけ開いた内股のすきまにすべりこみ、性急な動きで最もやわらかい場所へ分け入った。
ぬるり。
そしてその指は思いのほか滑らかに、の割れ目を撫であげた。
「何がイキナリ?もうとろとろなんですケド」
さらに入り口で何度も指が動き、ぴちゃぴちゃと卑猥な音を出される。そこにはもうたっぷりの蜜が溜まっていた。
かあっ、との頬に朱がさした。
「ちっ、違う、それなにかの間違いっ」
「間違いって何よ。そーかそーか、それで一生懸命誘ってたんだな?」
「誘ってなんか…っ」
銀時の嘲笑う口調に身がすくんだ。自分の身体がこんなことになっているなんて、は本当に思わなかった。誓って。
にやにやと、銀時はの中心をかきまわした。奥からすくってはひだの部分に塗りたくる。すべりが良くなったところで先端の粒にもそっと触れる。
軽く刺激されただけでの身体は奥まで鈍く疼き、粘液は面白いようにあふれてきた。
「あーあー。こんなにしちゃって。子供が隣で寝てるのに、何考えてんの?」
「な、なによお、銀ちゃんだって…」
銀時の股間に伸ばそうとした手はしっかりと押さえつけられた。
「いやいやいやいや、俺は静かに寝ようと思ってたしー?こんな清らかな夜もたまにはいいよなー、とか思ってましたしー?」
「うそばっか…ぁんっ」
よくない展開だ。このままではだけがいやらしかったことにされてしまう。けれど抵抗する言葉を考えつくより先に、微妙な場所で蠢く銀時の指に意識を持っていかれる。
中指の腹でひだの奥の方まで引っ掻かれた。そのくせの柔らかい入り口が銀時の指を呑み込もうとすると、その寸前で指を引かれた。繰り返し繰り返し、挿入する寸前で逃げられ、ついには逃げる指を思わず腰が追いかけてしまう。
「ずっといやらしいコト考えてたんだろ。そんなにココが寂しかったんですかぁ?こんな指じゃ物足りませんねえ?」
「は…あ、は、やめて、思ってない、っ…」
手前まで犯されているのに、指一本も入れてはもらえない。ゆっくりと何度も繰り返されて身体がくねる。じらされてたまらず腰が迎えにいく。
口からはテンポの早い息遣いと途切れ途切れのあえぎ声が止まらなくなった。
「ほーら、あそこは『早くちょうだい』っつってるぞ。腰振ってんじゃねえか。こんなとこ神楽に見られたらどうすんの」
「う…、ん…っ、…やだあ」
「それとも呼んできて見てもらおうか?性教育してやらねえとな?こんなメス犬になってはいけませんよお」
「なんで、そんなに意地悪ばっかり言うのぉ…」
言葉で執拗になぶられながら、同時に与えられる秘所への刺激は頭をとろかす。いくら嘲笑われても、この先に待つものを知っているの身体は、銀時の愛撫を浅ましくおねだりする。
思いどおりにならない身体が悔しくて涙が出た。
「したかったんだろ?」
腰をくねらせ銀時にこすりつけた。精一杯意思表示しているのに、それでは許してもらえない。
銀時はの耳元に口を寄せ、口唇で耳たぶを挟むように、もう一度ささやいた
「な。…?したくてたまんなかったんだよな?」
吐く息が耳をくすぐりの背筋が総毛立った。抗えなかった。言うとおりにすればもっと気持ちよくしてもらえると解っていた。
「んー…そ、そうよぅ…、したかったのぉ…」
銀時の顔は見ないで、小さな声で降参した。
「誘ったよな?」
「……………ました」
「聞こえませーん。なんですかぁ?」
「誘いました!………だって…ぇ、一緒に寝てるのにぃ、なんにもしないで寝たくなかったのぉ!」
銀時は勝ち誇った笑いを浮かべた。を抱き寄せ髪を撫で、頬に口づけた。
そして目じりの涙をぺろりと舐めてやると、うってかわって優しい声で言った。
「最初からそう言やぁ、銀さん優しくしてやんのに」
ちゅぷちゅぷ、とわざと二、三度音をたててから、中指を一気に挿入された。きゅふんっ、と子犬が甘えるような声が漏れた。
腰にぞわりときた快感が、一瞬で背筋を走りぬけ後頭部まで震える。の内部が銀時の指をぎゅうっ、と締め付けた。
「うっわ。指1本できつきつになってんぞ。どんだけ欲しがってんの」
中指を何度も乱暴に抜き差しされた。指を抜かれそうになると、離すまいと内壁がまとわりつく。深く突っ込まれるとまた締め上げる。
呑み込むばかりで息が止まりそうになる。
は銀時にしがみついて、何度も左右に首を振った。
「ん?気持ちいい?どこ?」
「…ひぅん。それぇ。気持ちいいの、…っ」
中指を奥まで入れたまま、手のひら全体をぶつけるように動かされた。
まだ、それがはっきりわかるほどの身体は開発されていないけれど、銀時の手がどこかに当たるたび、びくん、と体がのけぞった。
「い…あんっ!」
「しー。聞こえんぞ?」
「ん…うんっ」
大きく息を逃したが、すぐにまた大きな声が出そうになって、銀時の胸に喰いついた。んーっ、と可愛らしいうなり声が漏れた。
顔を伏せたまま、は与えられる快感に集中した。
入り口を何度も指が通り抜ける感触、ときどき内側を擦っていく動き。もっともっと気持ちよくなろうとして、貪欲に腰が動く。
小刻みな呼吸。かすかなあえぎ声。
すこし惚けたような、上気した顔で銀時を見上げた。
銀時は指の動きを早めてやった。しがみついた手に力が入る。時折つま先が反りかえって、高まった性感を教えている。
「銀ちゃん…銀ちゃん」
やがて小さく漏れる切羽詰った声。
「イきそう?」
銀時が耳元でやさしく訊いた。指の動きがさらに激しくなった。
「ん…、うん、いっていい?イっ…あ…」
ざわざわと体を伝わる波。銀時にぎゅうっ、と顔を押し付ける。歯をくいしばって声をこらえる。
下腹部の、しびれるような熱いうずきが限界までたかぶって弾けた。
「…ん、あっ!!!」
最後の一瞬だけ、抑えきれずに短い短い悲鳴が響いた。
力の抜けた身体をひょい、と裏返された。うつぶせになった腰をもちあげられる。
「…清らかな夜は?」
がけだるく冷ややかな顔を向けると、肩越しにきまりわるそうな銀時の顔。
「…何それ。そういうコト言う?」
「…知らない。はどーせエロい子だけどー、銀ちゃんはオトナだから、隣に子供が寝てたら我慢するよねぇ?」
ぽふっ、と頭を枕に押し付けられて、強引に黙らされた。
「おだまり。銀さんも限界です。我慢すんのやっぱ無理」
背中から抱きしめられた。一度達して敏感になったところに、ぴたりと固いものが添えられた。
「もう少しだけ声我慢しろよ?」
はされるがままにのしかかられた。首のすぐ後ろに銀時の息が熱くかぶさった。余裕のない呼吸が聞こえる。
「…銀ちゃんの意地悪」
ため息と一緒に笑いがこぼれた。
は枕にかみついて、ふたたびこみあがる快感を必死にこらえた。
翌朝。
目覚まし時計の音はしっかり聞こえているというのに。意識はどんどんはっきりしていくのに。体は少しも動かなかった。
ものっそ眠い。眠いはずだ。結局眠ったのは昨夜というより今朝になってからだ。
は指の先から順番に力を入れて、なんとか体の自由を得た。
目をつぶったまま、はいずるように起き上がり、それでも生真面目に朝ごはんの支度をした。
「眠そうヨ」
元気に三杯目のご飯をお代わりしながら神楽が言った。
隣の銀時は目の下にくっきりと隈。と、いうことはおそらくも同じような顔なのだろう。照れ笑いして繕った。
「へへ。銀ちゃんと遅くまでおしゃべりしてて」
「おう。スタートが遅かったからな…」
「い、いらんこと言うな…っ」
ツッ込む手にも力が入らない。
結局銀時は寝なおすと言ってのそのそ和室に戻った。自由業の強みだ。には今から仕事がある。小さいながらも自分の城。決めた休日以外は営業すると決めている。
「〜?」
けれどお腹がふくれると緊張も緩んだ。ソファに座っていると、とろんと目蓋が垂れ下がり、がくんと首の力が抜け、頭がさがった拍子にはっとしてぱちりと目が覚める。
そしてまたしばらくするととろん…。そしてがくり。はっとしてぱちり。
とろん。がくん。ぱちり。
とろん…。がくん…。
……ぱちり。
とろん…。がくん…。
…。
「ー?もう時間アルヨ〜」
「ー?」
はソファに横になってしまって、神楽がゆさぶっても幸せそうにむにゃむにゃ言うばかり。
テレビではそろそろおでかけ時間の合図、お天気アナウンサーが週間予報を終えて星うらないを読み始めていた。
−さそり座のアナタは今日接客業で大成功の予感♪ヘッジファンドの社長サンが身体と引き換えに資金援助してくれるでしょう♪北新地に2号店が出せまぁす♪…
「………?」
神楽は画面に目を留めた。何を言ってるのか半分くらいはわからないけど、今日の運勢は上々…と、言われたような気がする。
をもう一度見ると、気持ち良さそうに寝息をたてていた。
「2号店…」
神楽に名案がひらめいた。
急いで顔を洗って、ミニワンピースになっているチャイナ服に着替えた。動きづらいのでいつもはあまり着ないけれど、今日は機動力戦闘力は二の次でいいのだ。
それからそうっと、傘を片手に玄関へ出た。
「定春おいで」
「わん!」
「しー。静かにするアル。は寝かしておいてあげるネ。」
「今日は私がおだんご娘やるヨ!」
…が跳び起きた。
「ありがとう!神楽ちゃん!おかげで目が覚めた!!」
かんかん、と下駄を突っかけて、扉も開けっ放しで出て行くを、神楽は憮然と見送った。
「…私コレ怒ってもいいアルよな、定春…」
「わん」
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