からだのあちこちを撫でられる感触では目を覚ました。
 窓から日が差している。もう朝。暖かい布団の中だった。
 枕にもなっている銀時の太い左腕に肩を抱かれて、反対の手で今はお尻をまさぐられている。は寝起きでろれつのまわらない舌でどうにかこたえた。
「おあよぅ…」

「ああ、起きたぁ?」
 銀時がを抱き寄せて、頭のてっぺんにくちづけた。
「またするの?」
 が顔をあげるとそれを待っていたように口唇にかるくキス、それから頬擦り。ひげがちくちくして少し痛い。
「いーや。今日俺仕事あるから」
「そうなんだ。おめでと。じゃあ朝ごはんする…」
 目をこすりながら起き上がろうとしたは銀時にまた布団の中へ引きずり込まれた。
「まあまあもう少し」
 銀時が両腕でを抱え込んだ。頭に顔をうずめて、髪の匂いをすうすう吸う。もう少し眠っていたかったのと、温かくて気持ちいいのとで、も全く抗わない。銀時の腰を抱いて胸板に顔をこすりつけた。
 銀時はの頭から下に向かって、順番に丁寧にキスしていった。額にまぶた、鼻のあたま。頬はかぷりと甘噛みした。
 そして寝乱れた襦袢の上から、胸のふくらみをやさしく揉みはじめる。マッサージでもするように。は体の力を抜いて銀時のするのに任せきった。
 けれどうっすら予想していたとおり、だんだん手の動きが怪しくなってくる。揉む感覚がゆっくりになり、手のひらが意味ありげに胸の頂上で円を描く。の乳房のふくらみと、ほとんど同じやわらかさだった乳首が次第に主張しはじめる。銀時の指が突起をきゅっとつまんだところでは抗議の声をあげた。
「やめてよう。欲情しちゃうぞー」
「そう?そりゃ困るねえ」
 でも銀時の指は動くのをやめない。反対側の乳首も指でつつきはじめた。の体にほんのりと火がともる。ゆうべのことまで思い出されて、お腹の奥がきゅうっ、と緊張した。
「もう、だったらも触る」
 は媚びた声色で怒ってみせて、銀時の股間に手をのばした。いきなりそこを触るのは身もフタもない気がしたけれど、銀時は乳首や首筋をさわってもくすぐったがるばかりだし。

「あれ」
 寝間着の上からでもはっきりとわかるくらい、硬い手触りがした。
「そっか朝勃…ちっ」
 最後まで言わないうちにごっつん、と頭突きで怒られた。
「年頃の娘が!」
 が口をとがらせる。教えてくれたのは銀ちゃんですけどぉ?

 は銀時の股間で手を遊ばせ始めた。布越しにそっと撫でてやると熱をもった塊がそれだけでぴくり、と震えた。手のひらで包みこみ、力を入れて揉んでやる。つまんで前後にごしごしと動かす。熱さと硬さが手の中で増してきた。まだ余裕のある銀時がの耳たぶをくちゅりとしゃぶった。
「なぁ、それ触ってんのそんなに面白れえ?」
「だってだけもやもやしてんのくやしいもん。銀ちゃんももやもやしたまま仕事行け」
「なにそれ」
 笑われたけれど、嬉しそうにキスもくれた。優しく唇を舐めてくれる。が薄く口を開けると生き物みたいな銀時の舌が、入り込んですぐに出て行った。次に這入ってきた時はがその舌をくちびるでつかまえて吸う。おかえしに銀時はの舌に軽く噛みついた。
 ふたりでお互いの舌を味わっているあいだも、の手は止まらずに銀時の性器を慰めていた。手の中で肉の塊がどんどん膨れあがってくる。銀時はなにもしゃべらなくなった。
「はあ…」
 しばらくぶりの声は苦しそうなため息。銀時はの肩に顔をぴたりとくっつけて、を触る手の方は少しお留守だ。
「気持ちよくなっちゃったの?」
 はやさしく聞いてあげた。ふわふわと暖かい優越感が湧いた。銀時がの肩の上で黙ってうなずいた。
 下着の中に手を入れて、直接銀時のものを触ってみた。熱い。の指がふれると銀時の腰がびくん、と小さく浮き上がった。
 人差し指と親指の腹で棒の根元をぎゅうっ、と締めつける。しめつけた力をそのまま返してくるように、全体が硬く大きくなっていく。敏感そうな先端が下着に突っ張って窮屈そうでかわいそう。は銀時の耳もとにささやいてあげた。
「脱がない?」
「…さわってくれんの?」
 甘えたような声を出す銀時を可愛いと思った。はうなずく代わりに銀時の寝間着をずり下げた。銀時が腰を浮かして、下着ごと脱がすのを手伝ってくれる。
 は銀時を押して仰向けにすると、布団をかぶって中に潜った。
 
 薄暗くて見えないけれど、熱くて大きな存在感が目の前にある。は銀時の開いた足の間にひれ伏して、細い指を幹の部分にからませた。力を入れすぎないように握り締めて上下に動かす。銀時からまたため息がもれた。うれしくなって何度もゆっくり手を上下する。の手がじっとりと汗ばみ、銀時の先端にはじわりと露が湧いた。
 銀時の手がの頭に乗せられた。下向きに軽く押す仕草。はいわれたとおり頭をさげて、目の前の肉棒をぺろりとひと舐めした。
「…っ」
 銀時が息をのむ。声になる寸前のような、大きな音。自分が男にこんな声を出させたと思うと恥ずかしいというより誇らしい。は作業に熱中しはじめた。
 ぺろぺろと先っぽをよだれまみれにしてから、くびれたところまでを口に含んでちゅうっ、と吸った。それから口いっぱいに入るだけくわえこんで、そのまま顔を上下する。
 大きく勃起した銀時のものはの口にはとても余る。深く呑みこむとのどまで塞がれて苦しいけれど、口の中でも舌を使って表面をたっぷり愛撫した。くわえきれない根元のところは、両手のひらでぎゅっと締めあげた。
 銀時は大きく息をして、声が漏れるのを逃しているのがわかる。が露わになった裏側を舌でなぞるように舐めあげると、ぞくっ、と体を震わせて、そしてまた大きく息を逃した。
 は反応の良い部分に何度も舌を這わせた。それからまた全体を口に含み、頭を激しく上下させる。頬に被さる邪魔な髪を何回もかき上げた。
「ひおちいい?」
「…あぁ」
 銀時が短く、でもはっきりと、せつなげに返事をした。
 たったそれだけのその声にの下腹部がずきん、と痺れた。
 腰の中に鈍く重いしこりを感じる。このまままたがって挿れてしまいたい。銀時のものでお腹の中をかきまぜて欲しいと、頭でなくあそこが切実に求めている。男の上で腰を振る自分を想像したら、もうそのことしか考えられなくなった。
 夢中でしゃぶりつくに同調するように、銀時も急激に高まっていった。はっ、はっ、はっ、と小刻みに、次第に呼吸が速くなる。の頭に乗せられた指にきつく力がこもる。その指がの髪をくしゃくしゃに掻き乱す。
「わ、悪りぃ、…、いきそー…」
「ふゅん…いーお…」
 は手と口の動きをもっと早めた。それから少しだけ緊張して、心の準備をする。
 銀時の腰がびくん、と大きく跳ね上がった。同時にの頭が力いっぱい押さえつけられた。
「んんっ!」
 口の中の銀時自身がひときわ大きく脈打って、生暖かくて苦いものを放った。
 どくん、どくん、と続けざまに痙攣し、粘りけのある液体がそのたびの中に吐き出される。は最後の一滴まで、すべてこぼさずに受け止めた。
「んー…くっ」
 じゅるるっ、と、先端まで搾りつくして口を離す。口に溜まった精液をせーの、で飲み込む。眉間にしわがよるくらい変な味。
 それからは、萎んでおとなしくなった銀時を、味がしなくなるまできれいに舐めてやった。の舌が触れるたびに、まだびくびくと反応するのがおかしかった。

 後始末を終えてはあ、と息をつく。上から腕を引っ張られた。銀時が無言でを引き寄せて、その胸にすがりついてきた。の息が止まりそうなほど強い力で、それでも抱きしめるというよりはすがりつく、といった方が合っている。
 はくしゃくしゃの頭を撫でてやった。銀時が自分に頼りきっている。果ててしまったあとの、こうして弱気になっている銀時がは大好きだ。
 銀時はの胸の上で長い間荒く息をしていた。落ち着くまで静かに深呼吸を繰り返し、ようやく息を整えてぽつりとつぶやいた。
「お前…悪いコト覚えたなァ…」


「ねえ…銀ちゃん、」
 今度はの番だった。銀時の手をつかんで甘い声でおねだりする。
「ねえ、も…」
「ん?」
 銀時がの太ももに軽くさわった。襦袢の上からだというのに、するりと触れられただけでくらくらするほどの快感が走った。
「お前店休みなんだろ?」
「…うん、だから。ねえ、早く…」
 は銀時の指を自分の中に誘った。たしなみとか恥じらいなんてものは、とっくにどこかへ行ってしまっている。

「残念。俺仕事だから」
「は?」
 一瞬何を言われたのか理解できなかった。
 じゃっ、と軽くに声をかけると、銀時は手早く下着を身に着けてすっきりとした顔で布団から出た。

  えええええええええ!?





「お前まだ寝てていいけど?どーする?朝飯にする?お前も食うなら支度して。俺、顔洗ってくる」
 銀時はのさのさと和室のふすまを開けて出て行こうとした。
「あの…」
「仕事夕方終わるから。風呂掃除と洗濯もしといてくれると銀さんすげえうれしー」
「あのね!!」
 は布団の上に起き上がった。
 銀時が振り返り、意地悪くを見下ろした。口の端をあげて目をきらきら輝かせて、聞こえはしなかったけれど、間違いなくフフンッ、と鼻で笑っていた。
「お前は夜までそのままもやもやしてなっさぁい」
「ええええええ?」

「だめそんなの!無理無理無理!だって…!」
「だって俺仕事だもーん。仕事しないと食ってけないの。ちゃんわかるぅ?」
「そんなぁ…」
 きつく閉じた太ももがもぞっ、と勝手にこすりあわされた。ほらみてこんなことになってるのに?
「そうそう」
 銀時がダメ押ししていった。
「もしも自分で慰めちゃったりしたら銀さんちゃーんとわかるからな。したらお仕置きなお仕置き。あ、いいなァお仕置きかァ」

 もちろん銀時はわかった上で言っている。こんなになったが夜まで我慢できるわけがないことを。
 にもわかった。銀時は本気でこのまま自分を放置していくつもりだと。そして何をしようがしなかろうが、今夜はお仕置きと称してなにかしらされてしまうことを。
 真っ赤になって泣きそうなを銀時は満足そうに一瞥して、本当に部屋から出て行った。

「この…!」
 残されたは拗ねて布団にくるまった。
 枕を腹に抱きかかえ、銀時の顔に見立ててがしがし殴る。このこのこのこの!
 このいじめっこぉ!







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