こども達が寝静まった後、銀時は夜のかぶき町に繰り出した。
 朝まで開いてる安い立ち飲みで軽くひっかけ、いい気分に。そのままそこで呑み続けても構わなかったが、思い立って銀時は、徳利に酒を買って店を出た。もうとっくに寝ているはずの時間だけれど、をたたき起こして酒の相手でもさせてやろう。流れ次第では違うコトの相手もさせよーかな、なんてよからぬ考えも少々。
 酒が入って無性に人肌が恋しい。銀時はまだまだ人通りの減らない街の中を、徳利片手にだらだら歩いた。


 意外にも窓からは明かりがもれていた。日付けも変わろうという時間なのに、まだ起きているらしい。銀時は勝手口の鍵を開け、がたがたと木戸を動かした。わざと音をさせているのは一応エチケットと言うか、ノックの代わりだ。
「こんばんわぁ、銀さん来たぞー」
 扉を開けても返事はなかった。
 返事どころか、ひと目で全体が目に入る狭い部屋なのにの姿がない。電気も明々とついているのに。
「あれ」
 勝手に中へ入り込む。奥にいないということは。
 土間を通ってつかつか表へ。やっぱり。店への戸が少しだけ開いていた。
「おーい」
 板戸をずらすと、店の中へ差し込む明かりが広くなる。机の下の濃い陰の中に、何かがいるのが照らし出された。知らずに見たら妖怪かなんかと勘違いしそうだ。妖怪といっても蝦夷地のコロボックルとか琉球のキジムナーとか、ああいうカンジの可愛い系の。
「…ー?」
 声をかけてもは物も言わない。黙ってしゃがみこんでいた。
「どしたぁ?イヤなお客にでもいじめられたかぁ?」
 店の片隅にうずくまっていたが、泣き顔を驚かせて銀時を見た。もしや図星だったんだろうか。それはそれは。珍しいこともあるもんだ。はそりゃあ、つつけばすぐ泣く涙腺のゆるい娘だけれど、それでいて実は真剣に涙を流すことなんてめったにない。ましてやお客の言うことなんかで。しょせんお客はお客、わりきっているから何を言われようが気にしたりはしないのに。
 銀時はのすぐ横に座った。うーわ、こりゃあケツが冷える。さっさと奥に引きずっていかねーと。
「なになに?どこのどいつがに意地悪ゆーの」
 軽い口調で頭を撫でてやる。がされるままになってくれたので安心した。自分に怒っているわけではないと、一応は確認してしまうところが我ながら情けない。

「…キライ、あのひとっ、きらいっ…」
 今までずっと泣いていたせいか、搾り出されたの声は、かすれて引きつり気味だった。
「あ?」
 は堰を切って話し始めた。興奮して前と後ろを行ったりきたり、支離滅裂に話すのをなんとか判読したところによると、読んでる本を取り上げて返してもらえなかったり?前掛けをめくられたり?すぐにぽかぽか殴られたり?人前で恥ずかしい質問をされたり?コドモがするようなイタズラばかりを仕掛けてくる客が、どうやら一人いるらしい。
 そして今日。むさ苦しいヤローばかりの住む屋敷へ出前に来いと呼び出され、そいつらの中に1時間も放置されて、ついにも本気で怒ったとかなんとか…。

 話を聞いているうちに、銀時の背筋にうすら寒いものが走った。せっかくの酔いが一気に醒める。なんだそりゃ。銀さん中2とかよく言われるけど。てゆーか男は基本、中2なんだけど。
 そいつのやってることってどっちかってーと小学4年生。小学生がしつこく女子に意地悪すんのってまさかまさか。
「それさァ…」
 …いや。
 言ってがその客を変に意識しては困る。銀時は口をつぐんでおくことにした。
 だいたいだって、なんでそいつだけ特別に出前なんてしてやってんの?嫌な客とか言うわりに、それってずいぶん仲良くしてねぇ?


 銀時もの隣に、しばらく黙ったままでいた。それから何を思いついたか、おもむろに奥の部屋へ行き、ごそごそと物音をさせてから舞い戻った。
「こんなとこ座ってたら冷えんだろー?部屋ぁ入ろ」
 両脇に手を入れてを立たせる。そのままひょいと体を持ち上げ、子供にするように抱き上げてやると、驚いたが宙に浮いた足をばたつかせた。
「な、なあに?どしたの?いいよ、自分で、行くよ」
「いいからいいから」
 構わず抱っこしたまま奥へ入ると、ちゃっかり布団がのべてある。音をさせていたのはこれだった。を布団の上に座らせて、銀時は優しく口唇を重ねた。は嫌がらないし逆らいもしなかったが、困った顔も隠さなかった。
そういう気分じゃないよぅ…」
「すぐになるなる」
「そーだけど」
 それはにもわかっているけど。
 ほーらりらっくすりらっくす。銀時は持参の酒を湯のみに注いで、ひと口に含ませた。の顔がまたたく間に赤く、そしてうぇっ、と舌が出た。
「まずっ…!」
「何ィ?こんな安酒は飲めねぇってかァ、コラ」
 銀時がの両頬をむにっと引っ張った。が泣き笑いの顔になる。ちょっとずるい手のような気もするけれど、酒のおかげで体も心も手っ取り早く力が抜けた。
「気分転換、な?」
 がこっくりうなずいたので、銀時は立ち上がって電気を消した。もやもやとわだかまる自己嫌悪からはひとまず目をそらすことにして。
 あーもう。俺ってヤツは。
 どこの誰だかもわかんねーやつに張り合っちまってこんなことして。



 の背中に手を回して、帯をきゅきゅっとゆるませた。自分で解こうとするを止めて、銀時が花の形をした結び目を解体していく。今夜は簡単な半幅帯一本で助かったけれど、それでも時々わからなくなって手が止まった。
「へんなの」
「いーからじっとしてな」
 帯の次には各種ひも。ほどいては放り投げほどいては散らかして、着物と襦袢を肩から落とす。
 やっと肌着にたどりついたら、がわずかに体をよじった。
「ん?なに」
「恥ずかしいよ…」
 は消え入りそうに訴えた。いつも脱がされて見られているけれど、今日はとりわけ。
「だって今日、なんか銀ちゃんじろじろ見るし」
 電気を消しても窓から入る街の明かりで部屋の中はずっと薄明るい。の体も隅々までちゃんと見える。白い肌着一枚でかしこまって座っている様も、布越しにそれとなく浮き上がるふくよかな体の線も。
 それじゃあ、と銀時はを布団に横たえた。自分も並んで横になって、頭の上までかっぽりと掛け布団をかぶった。
「こーすりゃいい?」
 布団の中でもぞもぞ動く。真っ暗で確かに何も見えない。
「どーしたの?銀ちゃん今日ヘン」
 銀時はそれにはもう答えなかった。布団の中での肌着を上下ほどいて裸にした。見えない中でにまたがり、やわらかい体のあちらこちらを力いっぱい揉みしだく。きっと上からは二人の体積分、もこもこにふくれて怪しく動く布団が見えたはず。

 も趣向がわかってきた。今日は優しくしてくれるんだな?泣いてたから?お願いしたらなんでも言うこときいてくれるのかな。
「銀ちゃんも、脱いで」
 自分も暗闇で手探りに、銀時の腰のベルトを解く。その下の帯もほどいてやると着物がだらりと垂れ下がった。下から抱きつくように服の下へ手を入れて、いつも着ている黒いシャツを胸のあたりまでたくしあげる。銀時はそのまま袖を抜いて上着を脱ぎ捨てた。
「下も」
 ズボンと下着も、途中までがずり下ろしたらあとは自分で脱いでくれた。丸まった服のかたまりを、布団の外へ蹴り出して、全裸になった銀時がの傍にひじとひざをつく。
 二人の素肌がぴったり重ね合わされた。
「は…ぁっ」
 嬉しすぎて、の喉からため息が漏れた。銀時の硬い体。分厚い胸板太い腕。どこも傷だらけの体がの柔肌とぴったり貼りつく。もっともっと隙間なくくっつけるように、体をくねらせ姿勢を探っていたら銀時にくすくす笑われた。
「なにやってんの」
「だって…」
 は溶けあいそうなほどにぴったりと、銀時に寄り添って静止した。
 銀時の肩に顔を埋め、両手は背中にぐるりとまわした。右足は銀時の足の間に割り込ませて、裏側からふくらはぎ同士をくっつける。の太ももが銀時の足をしっかり挟む形になって、そのせいで銀時が少しでも身動きをすると、の股間が微妙にこすられた。
「んっ…」
「いい?」
 はゆっくりと縦に首を振った。素肌をただ重ねあうのがこんなに心地よいとは思わなかった。暗い中さらに目まで閉じて、触覚だけで銀時を感じる。銀時の体温と、時々髪に吹きかかる息。密着させた乳房のあたりでじわりと浮き出る互いの汗。指にふれた刀傷をなぞると銀時がくすぐったがって声をあげた。
 次に両足のつま先から、ふくらはぎ、太ももへと、順番に感覚を集中させてみる。下腹部にまでたどり着くと、そこに押し付けられた銀時の性器が脈打っているのもちゃんとわかった。はしたないこととは思っても、はその部分から意識を離せなくなってしまった。次第にむくむくと起き上がる塊。じっとしているとその先端が、に触れる先端が湿り気を帯びてきた。
 湿っぽいのはも同様だったらしくて、耳元で銀時にささやかれた。
「足、濡れてきた…」
 でもその声は笑っている。今日は意地悪言わないのね。そう言うとまた笑われた。

 の太ももに挟み込まれた右足を、銀時は軽く前後に動かしてみた。ふわっとした陰毛が太ももにさわる。あまり意識したこともないけれど決してイヤな感触じゃない。さわさわと柔らかくこそばゆい。
 そして舐めるようにやわらかく、の口唇を味わった。両手で頭を抱きしめ髪を触る。に求められるままに、体を密着させてやった。つん、と勃ったの乳首が素肌にふれているのがわかる。
「気持ちいい?」
 は黙って頷いた。今度は白い首筋を、音がするほどきつく吸った。背中にまわされたの指が、ぎゅうっと銀時に食い込んだ。正直な反応を隠さないに銀時は気を良くする。
「銀さんのこと好き?」
「…うん」
 はだんだんと強く、自分の体をすりつけてきた。自分が気持ち良くなるように自然に腰を動かしているのが、動物のようにあさましくて可愛い。ほとんど抱き合っているだけなのに、気持ちも体も高まりつつある。
 銀時はぴたりと合わさった自分たちの間に片手をねじこんだ。の股間に潜りこませた指が、ちゅぷっと熱い蜜に沈んだ。粘液を指にからませて、すべりのよくなったところで最も敏感な芽をいじる。中身がぷっくり硬くなるまでくむくむ遊び続けてやると、の声色がすぐに変わった。
「あ…ふっ…、やぁんっ…」
 の手が、銀時の顔をぎゅうっと胸に押し付けた。乳房を甘噛みしてやったら、は喜んで体を震わせた。その手が下へ、銀時の頭を誘うように押さえる。が自分からそんなことをしたのは初めてだった。どきん、と銀時の胸が鳴る。あれ…?もしかして、下の方も、して欲しくなっちゃった?
 本当にいいのか戸惑ったものの、声に出してそう訊くのは野暮ってものだ。嫌がればすぐに止めるつもりで、銀時はの体を舐め下りていった。乳房の下からわき腹におへそ。時々思い出したようにきつく吸ってやるとがそのつど嬉しそうに喘いだ。
 そして足の付け根に。たっぷり欲情している証に、ふわり甘ったるい匂いがした。心の準備をさせるように、太ももの内側の、やわらかいところに数回ちゅうっと吸いついた。それから鼻づらを押し付けるように、銀時はの、女の子の部分にしゃぶりついた。
「は…、あんっ、銀ちゃん、そこぉ…」
 銀時の濡れた舌がの最も芯の部分をくまなく這いまわった。丁寧に丁寧に、舌で愛液をのばすように、それからあふれた蜜をすするように。の味がしなくなるくらい、きれいにぜんぶ舐めとってやろうと思ったのに、とめどもなしに蜜があふれて、銀時は溺れてしまいそうだった。が無意識に銀時の髪を引っ張った。自分もに口でされるとこんなになっているんだろうか、と一部だけ冷静に考えている銀時がいる。
 ちゅくちゅくと、何度も舌先を挿入した。ひやりと最初は冷たかった舌の温度が、次第にの内部と同じくらいに熱を帯びていった。
「ぁんっ!」
 花芯を口に含んで小刻みに吸ってやる。のひざがびくん、と跳ね上がって、銀時の頭を強く挟んだ。最後まで逃がすまいとするかのように。
「んんっ、銀ちゃ…ぁん、っ、そこっ、だ、だめ、かも…っ」
 規則正しく強弱をつけて、銀時が吸いつくのと同じリズムでの全身が痙攣する。が気に入ったのだと見て、銀時はひたすらその方法で責め続けた。

「ああっ!あっ、あっ、やんっ、やんっ、ああっ、っ…!」
 がこわばる。指も、足も。つま先がくんっ、と反りかえり、達する直前のしるしがあらわれる。両手で乱暴に太ももの肉をつかんでやったら、はそれも気に入ったようだった。ひくひくと腰が浮いてくる。裏返った声が止まらなくなる。
 銀時は続けた。あえて野卑な指使いで秘所をおし広げて舌でなぶり、湧き出る甘い蜜をずるずると音をさせて吸う。
「んっ、ん、んぁ、ゃんんっ、んっ…!」
 口をつく声は意味をなさなくなった。ゅんっ、と言葉にならない声をあげて、大きくがのけぞった。両膝が銀時の頭を締めつける。と、同時に、とくん、とたっぷりの愛液がこぼれた。粘度の高いとろりとした蜜は、が体を震わせるたびに後から溢れて止まらなかった。
「………っん、んっ!!」
 痛いほど髪の毛をつかまれて、その直後。がくりと力の抜けた膝と、自分の頭をゆっくりと押し除ける手の動きで、銀時はが登りつめたのを知った。




 もういいかな、と布団をはいで、銀時は薄明かりの中を見た。照れたような困ったような顔をして、も銀時をじっと見ていた。
 軽く口唇をあわせ、舌と一緒に口の中に残ったものを流し込む。にひろがる、甘くしょっぱい濃厚な味。
「わかる?お前の味…」
「…ん」
 がもういちどキスをねだった。今度は互いにもっと深く、噛みつくように口唇を重ねる。大きく開いた口からは、二人分の混ざりあった唾液が交わされた。よだれを飲ませてもらうなんて、自分のあそこを舐めた口とキスするなんて、はいやらしい自分に心が蕩ける。
 はふ…とうっとり息をついて、まぶしそうな目では笑った。
「お口で、いかされちゃった…」


 銀時は黙ってしまった。潤んだの、その目を見ただけで、身体の奥からせりあがってくるものがある。
 それでも、これでが満足したなら、今日はもう大人しくしていようと、本気で、本当に、心からそう思っていたのだ。今夜ばかりは本当に。
 それなのにが、ぎゅっと銀時の腰を引き寄せて、せつない顔をして言うものだから。
「…来て」
 銀時はごくりと唾を飲み込んだ。

「…はい喜んで」







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