銀時が風呂場を出た後も、はひとりで悠々と湯船にくつろいでいた。水面でぴちゃぴちゃ手を遊ばせると、柔らかさを増した風呂の湯で肌がなめらかに包まれていく。
 ほんのり雪の色をした湯は惜しげもなく投入した入浴剤のおかげ。先日出かけた温泉宿で、土産にとたっぷり持たされた物だ。旅行をゆずってくれたお妙や大家のお登勢、ご近所へ配りまくってもまだまだ使いきれないほど。
 肌はすべすべ、身体はほかほか、思い出しても薬効あらたかな良い温泉だった。商魂たくましく「仙望郷の湯」そのものまで商品化してくれた女将に感謝。遠い山奥までせっかく出かけていったのに、あちらでと銀時は面倒ごとに巻き込まれ、たった一度しか温泉に浸かれなかったのだ。

「おい着替え〜。ここ置いといてやっからな〜」
 ところがそこへ曇りガラスの向こうから銀時の眠そうな声がして、は訝しく眉を寄せた。
 なにあれ怪しい。いつもはどんなに頼もうとろくに動かない面倒くさがりが。いかにも気だるく装った声も怪しかった。気まぐれにでもわざわざのために動いたなら、ここぞと張りきって恩を着せるはず。

 これは何かを企んでいる証拠。そろそろ上がった方が良いかもしれない。
 は名残にもう一度湯をすくい、さらさらと手からこぼしてみた。



 戸をあけてすぐの洗濯機。着替えはその蓋の上に出ていた。のものではない浴衣と帯と、一番上にはなぜか見たこともないパンツ。
「なにこれ」
 がきょとんと下着を手に取った。いつも着ているものとは違う、そうは思ったが深くは悩まず身につける。警戒心の働かなかったのも無理はない。レースにシルクの色っぽいモノではなく、コットンの青いボーダー柄、普段づかいのショーツだったのだ。
 それよりむしろ浴衣の方に呆れ果てては絶句した。
 白地に飛び散るのは「仙」の字模様。用意されていた寝間着とは、仙望郷の客室に備えつけの浴衣だった。


「もうっ!ちょっとちょっと銀ちゃんなにこれぇ?!」
 足踏み鳴らし和室へ踏み込み、ところがはそこでまた言葉を失った。布団の上にと同じものを着た銀時が、神妙な面持ちで三つ指をついていた。
「お待ちしておりました」
「な、なに?」
 思わず一歩足が引ける。手回しよく、既に明かりを落とした部屋で、銀時はやけにかしこまり訴えた。
「あのさァ、あっちであんまゆっくりできなかったじゃん?」
「うん」
 そのことはも残念に思うけど。
「で、やり直そうと思って」
「やり直すぅ?」

 間の抜けた顔でおうむ返すへ、銀時はしれっとのたまった。つまり「旅館にお泊りプレイ」。
「じゃあこの寝間着…」
「おう、もらってきた。宿の備品は持ち帰り自由だろ」
「んなわけあるかぁぁぁぁ!!」



「ああもうっ!やだもう!どうすんのこれ、今さら送り返すのもヘンだよう!」
「いいからいいから。おめーもあんだけ頑張ったんだ。バーさんも文句言いやしねーよ」
 頭を抱えるのことなど銀時はまるで構わない。ほら来なさいと足を組みなおし、あぐらをかいたひざをたたく。渋々ながらそれでもは、招かれるまま銀時のひざへ腰掛けた。

 座るなり背後からぎゅっと包まれる。腕の力はありあまり、抱くというよりを羽交い絞めにするようだった。
「やぁん、銀ちゃん。苦しい、苦しいよ」
 身をよじっても離してはくれない。それどころかの胸の上で、指は鍵のように堅く組まれた。身動きを封じられたを力ないため息がくすぐった。
「あーあ。銀さん楽しみにしてたんだけどぉ。気分変えてじっくり一晩可愛がってやろーと思ったのにぃ〜」
「んもぉ…」

 思わせぶりな言い様がをむずむずいたたまれなくした。
 それはまあ確かに、も、一緒。日常を離れたあの夜を、楽しみにする気持ちも、確かに、あった…。
 何を想像してしまったのか、ぽっと両頬に灯がともるよう。暗がりの部屋で、しかも背中から抱いているのに、赤く染まったその顔を銀時はめざとくも見逃さなかった。
 ぴたりと背中と胸を添わせ、ささやきながら耳元へ口づける。あごをつまみを振り向かせると、その頬へ甘く噛みついた。唇は触れるばかりじゃない。いくつも静かな言葉を投げかけ、その音は心への愛撫になった。
「ん〜、すべすべ。きーもちいい〜。やっぱすげぇな、あそこの宿。ひでぇトコだったけど温泉だけはいいのな」
「もぉ、やぁ…ん…」

 逃げても声は追ってくる。
「なぁなぁ、銀さんのお願い聞いてくんない?」
「なあにそれ…?」
 を縛っていた腕はほどけて、薄い浴衣地一枚を巻きつけただけの無防備な身体を今はさわさわ撫でさすっていた。襟元はたちまちはだけたものの、銀時はそれには目もくれず、たぷんと豊かな双丘を布越しに心ゆくまで揉んだ。
 身によく馴染むやわらか木綿の肌触りは、じかに触れるよりものどかで心地よい。身体中をいじり回されて、気持ちは今にも流されそうになりながら、はそれでも懸命に正気を手放すまいとしていた。
 負けない。きっとまた何かこの人は、よくないことを企んでいるのだ。パンツといい、この浴衣といい。

「ふ…、ふつーにしようよ…」
「ふつうって?」
「ふつーはふつう」
 もその手を伸びるだけ伸ばし、触れたところを優しく撫でて返してやった。太ももを中心へ向けてさすると、銀時もはっと身体を緊張させたのがわかった。

 ふつうはふつう。こうして互いにさわりあったり、揉んだり、舐めたり。
 うしろへ首をそらしてねだると、望みどおりに唇が重なる。絡み合わせた舌の上を、じゅるっとよだれが往き来した。
 ほらね。こんな風にキスしたり。

 身体を包む体温は熱く、ある部分は早くも硬く脹れていた。銀時も十分に楽しんでくれている。締めたばかりの浴衣の帯をほどこうと伸びてきた手には、だからも抵抗しなかった。

 しゅるしゅるかすれた音とともに、胸元が広くはだけていった。ところが銀時はゆるんだ帯を、へずっとまとわりつかせたまま。
 ふふーんと満足げな鼻息を、疑問に思った時にはもう遅かった。

「え…?あっ、きゃっ?やっ…!?」
 少し上へとずらされて、解けかけた帯がふたたび締まる。
 あれよという間にの両腕は縛り上げられてしまっていた。
 むぎゅ!



「な、なに、これ…やんっ?!」
 薄く平べったい寝間着用の安帯はの胸でちょうどふた巻きされている。上と下、丘の両裾をきつく締められ、胸のふくらみがいやらしく強調されていた。背中でどのように結ばれているのか、銀時が帯の手先を引くと、締めつけはぐいと強くなった。
「きゃああっ?!痛い痛い!銀ちゃんそれ苦し…っ」
 ぎゅうう!
「きゃあああっ?!」

 銀時の目はにやにやとそしてきらきらと、それまでになく沸きあがっている。
「思ったとーり。宿の浴衣についてる帯ってさ、こうやってすんのにぴったりだと思わね?」
「こう…?って、これ?をぐるぐる縛るのに?」
 あまりのバカバカしさに頭に来た。
「なんなの銀ちゃんなによそれっ!?こんなことがわざわざやりたかったの?バカじゃないの?ばーかばーか!銀ちゃんのばーかっ!」
 縄抜けしようと身体をねじるが、帯は少しもゆるまないどころか、かえって柔肌にからみつく。
 とんと軽く肩を押されただけではひっくり返されて、うつ伏せのまま布団の上をごろごろ転げた。
「もうっ!は銀ちゃんのおもちゃじゃないようっ!早く起こしてっ!これほどいて!いいから早くほどきなさぁいっ!」

 けれどその返事は引き締まる帯だ。
「あああああんっ!」
「おお〜う、いい声!なぁお前こーゆうの好きだろ?マジで好きだろ好きだよな?さっきよりもいい声してるもん」
「きらい!きらい!いつも言ってるでしょそんなのきらいっ!」
「うそうそ、口ではそんなコト言っててもぉ〜、ほら」
「いやあぁぁぁぁんっ!」
 さらに食い込む拘束具に、心とはまるでうらはらに媚びた艶な声が漏れてしまう。うっかり銀時を悦ばせたのがは口惜しくてならなかった。

 丸太かなにかにするようにごろんと手荒く裏返される。閉じたひざは苦もなくこじあけられ、銀時が割って入ってきた。薄笑いを浮かべ見下ろす顔がいつにも増して意地悪そうで、の胸は大きく脈打った。もちろん不安に。そう、不安にだ。
 両足を大きく開かせる手も、その奥へうれしそうに伸びてくる手もどうしようもない。それを止めるすべがにはない。されるままになっているしかなかった。


「あれぇ?もうあったけぇ」
「いっ、言わないでよっ…!」
 声はわざとをいたぶるように。見ればわかるものを、ことさら訊かれた。
「もう濡れてんの?」
 そこで遊ぶ指もいたずらだった。もどかしくなる繊細さでそっと形をなぞってゆく。時々不意打ちに、しっとり湿った中心を押した。やがて粘った音がしはじめる。濡れたなにかの貼りつく感触が生温かくて気持ち悪かった。

 なにかおかしいと思ったら、今日はなぜだか邪魔な布が一枚挟まれていたのだった。
「ねぇ銀ちゃん…」
 伏せていた目をは仕方なくわずかに上げた。布越しにあまりさわっては下着が汚れてしまう。ところが指はいつまでも周囲を探るばかりで、一向に布の中へ入ろうとしない。ほんの小さな布きれだ。横でも上でも、どこからでも出入り自由なくせに。
「銀ちゃん、だからぁ…、パンツが汚れちゃうったらぁ…」
 いつの間にかなじる声は甘えきっていた。喘ぐほど激しいものではなく、やんわり性感をかきまわす刺激。ふわふわ夢見ごこちの愛撫には身体をゆだねていた。抑えようとしても明らかに甘い吐息がいくつも漏れた。

「じゃあどうすんの?これ脱がせってこと?」
 言いながらそこをかりかり引っかくものだから、返事はくふっとおかしな声しか出せなかった。背筋を這う悪寒に、は堅く目をつぶってしまう。そうするうちにも銀時の指はあくまで布越しに柔らかく、絶頂へとはつながらない優しい快感を与え続けていた。
 指を離されると腰が追いかけた。その手があまり優しいので図に乗って声はいよいよ子供じみた。
「だめ、それ、やめちゃや…」
「へぇ?イヤ?」
「うん。やだぁ…」
「けどこのまんまじゃパンツべったべたに汚れちまうよ?」
 布をつままれたのがわかった。じわりとぬるい湿り気を感じ、恥ずかしくて慌てて首を振った。
「イヤ?じゃあ脱ぐ?」
 それにも首をふる。
「どっちよ」
「いじわるぅ…」
 指の腹が答えを催促し、硬く凝りかけの芯を押していた。ほんのわずか色合いを変えた刺激に下腹部のさらに奥がかき乱された。


「もう、はっきりしない悪い子にはこうっ」
 笑い混じりに威勢よく言うと、浴衣のすそをまくりあげ銀時の手はの下着へ。
「やっ、バカ、銀ちゃんのバカっ!エッチ!」
「さーてエッチはどっちでしょ、この淫乱娘〜」
 その顔は余裕のニヤケ面。
「あっ、やだ、やだやだ…」
 せいぜい腰をくねらすもののそんなことで逃げられるわけもなく、下着へかかった銀時の手は、なんなくそれをずらしていく。ぴちょびちょに濡れた布切れがゆっくりもったいつけられながら、ひざの上までずり下ろされた。

「なにこれ。あーあ、べったべた。感じてんの?こんなに?これはあの子にぜひ教えてやんねーと。は縛られるとよがります、ってなァ?」
「な、なに、なによう、あのこってなんの話…」
 口をつく疑問符にわずかに遅れ、も思い出していた。そういえばあの時の温泉で、銀時は言っていた。真選組の、沖田総悟に。彼を部屋まで引っ張り込んで。

 『しょーがねぇのパンツくれてやらぁ』
 『穿かせて、脱がして』
 『エロいこと言って濡らすのはアリですかぃ?』



 見る間には青ざめていった。自分の愛液でぺっとり濡れた下着に視線が釘付けにされた。まさかそれ。まさかそれを。
「あ、あげないよねあげないよね、いくらなんでも、そんなの…」
「ああ、しねぇしねぇ。もちろん渡したりしねぇよぉぉ?」
 だが目は笑っている。の抵抗は俄然真剣味を増した。
「やっ!おねがい!お願い!なんでもするから!なんでもしていいから!」
「なんでも?じゃあ」
 ぎゅううううう!
「…………!!!?」
 これ以上締める余地もないほどに強く締め上げられ目が回る。その隙に下着は足から抜かれた。ぴんと一本立てた指が、まるまった布をひっかけてくるくる見せびらかすように回した。
「あらあら、よーく濡れてんなァ?」
「じろじろみないで!やあん!やだあ!銀ちゃんのばかばか!バカバカバカぁ!」
「うるせーなもぉ」
「もっ…?!」
 もごご!?とくぐもった悲鳴とともに、ぱっちり見開かれた目がしろくろ。口封じにと、丸めたパンツが押し込まれたのだ。
「んんんんんっ?!んんんんっ!」
 口いっぱいに詰め込まれた布で息が止まる。息苦しさに涙が滲む。それを見て暗く目を輝かせた銀時がの脇へと手をついた。
 が着るよりかなり適当に着付けた寝間着は、軽く前をはだけるだけでほとんど裸も同然に脱げた。下着をずらし蹴飛ばすと、膨れ上がった股間を隠すものはもうない。

 知り尽くした身体を繋ぐのに手引きするものはなにも要らなかった。するりと流れるような動きで銀時が覆いかぶさってきて、気づいた時には、は奥深くまで犯されていた。



「んふっ?!!」
 喉を自然にこみあがる声。銀時のものは常よりずっと大きく硬く、の中をいっぱいに広げて満たした。
 ゆっくりと、焦らすように腰が前後する。のくぐもった喘ぎ声、それを相槌の代わりにして、銀時は楽しげに語りかけた。
「うそうそ。こんなイイモンやるわけねーだろ?銀さんそんなに信用ねーの?」
「んっ、んぁっ、あっ、あっ、あぁっ…!」
 滲み出した唾液が喉を塞ぎかけたが、口の中の布切れを吐き出すことも叶わない。ふとした拍子に飲み込んだ息で、はげほげほとむせかえった。
「苦しい?」
 首を振り助けを求めると、銀時はやはり嬉しそうにした。
「苦しいのキライ?」
 懸命に首を振る。
「でもココ、締まってんよ?」
 けほけほけほ、塊が喉をせり上がった。胸も喉も詰まり、涙は止まらない。きつく締めつけられたうえに銀時の重みが容赦なくのしかかる。勃起をくわえこまされた身体も裂けそうな苦痛を訴えている。

 けれど同時に銀時の声は、繰り返し繰り返しささやいていた。
「あー、かわいい。。おめーかわいいわマジかわいい。あぁもう銀さんどーすりゃいいの」
「はっ…は、はあっ、ああんっ、ああっ…」
 その声はまるで呪文のように、の耳から頭の中を、胸をじわじわ侵していった。「かわいい」「かわいい」そのくせ口ではそう言いながら、縛めが弛めば嬉々として締めなおす。がそのたび顔をしかめるのを銀時はまたまた悦んだ。


 やがて腰の動きが速まると感じる苦痛には拍車がかかった。銀時の息も荒くなり、時折ふざける演技を忘れて真剣な目がを見た。涙を溜めて見つめ返すとまた内側で窮屈に膨れ、誤魔化すように銀時はを突き上げるのだった。
 呆れて、少し可笑しくもある。この男ときたら心の底からの泣き顔が大好きらしい。
「はぁ…、イク…。もう出そう…出してい?」
 ひときわ強く抱きすくめられ、動かせるのは開いた足だけ。返事の代わりにはそれを銀時の腰へからませた。夢中でを貪りながらも、その大胆さを銀時がからかう。
「なに…、ホントは、痛いの好きだって…?」
 ごつんと片足を背中へ落としてやった。このバカ。きらいきらい。痛いのなんか絶対に好きじゃない。


 ただ、「痛いの」以外はそうでもなかった。
 誰にもしない酷いことをにだけは思う存分してくれる、その気持ちは不思議なほど愛おしい。試されるのも嫌いじゃない。無理に無理やり応えさせられるのも。

 こうして身体の自由を奪われるのも思っていたほど悪くはないかも。はひたすら気持ちよくされているだけでいいなんて。
 立て続けに激しく腰を突き上げ、力尽きた銀時を受け止めながら、宙へ浮かされたような頭ではとりとめもなく思った。








 下着はつまみだされていた。口の中から出る時に、でろんとよだれが糸をひいていった。
「あー…」
 身体中を嫌な汗で濡らし、はやっとありついた新鮮な空気に必死の深呼吸を繰り返す。ぜぇぜぇと上下する肩を銀時が撫でてくれるのは機嫌をとっているつもりかもしれない。
「悪ぃ悪ぃ。次はおめーの言う通りふつーに…」

 しかしそこで銀時の声は途切れた。その目にふと、ぐるりと布団に曲線を描く自分の帯が見えたらしい。それを手にとり銀時は、まじまじ眺め続けていた。いつまでもいつまでもじーっと。

「ど…、どしたの…?」
 まだまだ苦しい息の下から、はかすれた声で訊ねた。
 なんだか不穏な気配だった。今は両腕がぐるぐると拘束されているだけだが、もしも縛るものがもう一本あれば。
 銀時は握った帯から目も離さずにつぶやいた。
「旅館で使うこの手の帯ってさァ、ホントこーいうことすんのに向いてるよなァ…」
「もしもし…?」
「ほら、幅があんだろ?だから相当強く締めても痛くはねぇってのがミソな」
「あの…」
「縄と違って跡もあんまつかねーしぃ」
「銀ちゃんんんんん?!」


「ちょ、ちょ、ちょ、なに?なに、なにすんの…銀ちゃんっ…ちょっとぉぉ?」
 銀時がいそいそ何かを始めた。今度はの片ひざを曲げさせ、もう一本の帯を巻きつけた。余った端を背中へ回し、もぞもぞどこかを何度かくぐらせ、反対側のひざへと通し…。
「わわっ?なにこれっ、ちょ…?」
 真っ赤になればいいのやら、真っ青になればいいのやら、あまりのことには声も出ない。

 二本の帯を駆使してついに仕上がったのは、M字に折った足をぱっくり開いたとんでもなくエロ本的な眺め。
 いやいやこれは。いくらなんでもこの格好は。愕然と訴える目に目を合わせ、銀時はひょこっと手をあげた。
「ま、次の次はふつーにしてやっから」
「…………」

 青ざめることにした顔に、一度は引いた涙があふれた。
 けれども結局の泣き顔は、銀時を喜ばせただけだ。






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