「ごめんなさい」と拒否したに、銀ちゃんは据わった目をして言った。
「は?なにが?」
「だから…、ごめんね。…あのぅ…、今アレ…、せいりちゅう…だから…」
「だから?」

 あああ、これはダメな銀ちゃんだ。言葉の通じない銀ちゃん。は暗澹たるきもちになった。
 ときどきこの人はこうなってしまう。が愛しくて愛おしくて、なにがなんでも可愛がってやろうとするあまり、がどうなってもかまわないという本末転倒に陥るのだ。
 単なる発情というのとも違う。に拒まれたからといって外へ発散しに行こうとはしないところからもそれはわかる。一度だけ、どうしようもなく具合が悪くてお金を貸そうか訊ねた時は、本気で怒らせてしまったほど。

 道行く人の陽気なやりとりも筒抜けに聞こえる自分の部屋で、真っ昼間から布団にくるまりはぐずぐずと寝転がっていた。
 銀ちゃんに訴えた通り、月の障りの真っ最中。(の場合はかなり不定期だが) 重たい下腹部に引きずられるように、まぶたは力なく落ちた。


 するとごそごそ、大きな体が布団に潜り込んできた。の丸めた背中側からまるっとを包んでくれる。高めの体温に温められて、ほんの少しだけ身体がほぐれた。
 意外なことにその腕も声も、思っていたよりとても優しい。手のひらはゆっくりお腹を撫でてくれた。
「だいぶ痛ぇの?」
「ううん。もう痛くはないよ」
 痛かったのは昨日まで。
 気がふさいでいたのはさらにその前日まで。
 今はただただ身体が重くて、そして出血がかなりひどい。この時だけはも専用の下着を身につけるのだが、寝間着もその下の布団までもが血まみれになりそうな不安が離れない。
 実際には技術の粋を究めた吸水性ばつぐんのシートと、輪をかけてガードの堅い下着で、多い日も絶対安心なのに。

 さいわい今日はお店も休みの日に当たった。こうして寝ていられるのは助かる。
「あの…はなんにもできないけど、まぐろなんだけど、銀ちゃんがそれでもよかったら…、なんでも好きにしてくれていいよ…」
 銀ちゃんの腕が心地よくて、もちょっとだけ譲歩した。動かすのも物憂い身体だが差し出すくらいのことはできる。どうぞご自由にお使いください。



 ぎゅうっと腕に力がこもった。銀ちゃんがそのつもりになったのだと、ついつい緊張してしまう。自分の言い出したこととはいえ。
「あー。におい濃いな」
 髪の中に鼻面を埋められ、くんかくんかとあからさまに嗅がれた。
 …うぅ。と身体が縮こまる。
「やだ、やめてよう、恥ずかしい…」
 ひどい腹痛腰痛に、くわえて翌日が休みと思って昨日はお風呂に入っていない。髪の毛ばかりか耳の裏側でもふんふん鼻を鳴らされて、いたたまれなくなってくる。昨日はなにもかもどうでもよくて、寝間着も布団と一緒に丸めて押入れに突っ込んであったものを、そのまま着てしまっている。
「待って、着替える…」
 けれど起きあがろうとばたつくを、銀ちゃんは許さず抱えなおした。襟首にべったり顔をうずめ、聞こえよがしに深呼吸した。すうぅぅぅぅぅっ。
「んー、いーニオイ」
「やあだぁ、もぉぉっ」

 身をよじるに銀ちゃんが身体をすりつける。ぐりぐりと特に下半身を強く。
 どういう仕組みか、わずかにそこは熱と硬さを持ち始めていた。
「…へんなの」
「ヘンじゃねーよ」
 やはり挿れられてしまうんだろーかと、次第に存在感を増していくそれがには少し怖かった。
 こういう時にされたことが今まで一度もないわけではないが、最中はともかく、コトを終えた時の後味の悪さがは苦手。
 するならさっさと済ませてもらってあとはこうやって抱いていてほしいな。
 …なーんて勝手を考えた。


 匂いを嗅ぐのに満足すると、銀ちゃんは次に舌と唇でを味わいはじめた。
 耳たぶにちゅるるんとしゃぶりつき、よだれまみれにしたかと思うとはむはむ軽く歯をたてる。吹きかかる鼻息がくすぐったい。このまま食べられてしまいそうで、自然とは笑ってしまっていた。

 くすくすと鈴の転がる声に銀ちゃんの声も笑いを含む。
「これイヤじゃねぇ?」
「イヤじゃないよ」
「あっそ」
 どこか晴れ晴れとうれしそうなのは、これでようやく心おきなくで遊べるということだろうか。
 寝間着の襟を引っ張ると、広くむき出しにしたうなじに、大口を開けてかぷりと食いついた。ちゅくちゅく舌鼓を打つなんてお行儀が悪いとは思った。本当の食事の時はしないのに。
そんなにおいしい?」
「ん。んめぇ」
 じゅるる。


 「でも…」と銀ちゃんは身体を起こした。
「…?」
 なにを考えついたのか、を残して布団を出ていく。なにぶん手狭な家なもので、足下はもうすぐに台所だ。隅に置かれた冷蔵庫がなにやら開け閉めされている。
 すぐに銀ちゃんは戻ってきて、ふたたびの背後にもぐった。




「ひやっ?!」
 びくんと身体がすくみあがる。冷たーいものがとろーりと、の首筋にひとしずく落ちた。
 ひやっとしたのはほんの一瞬、すぐさま銀ちゃんがくらいつき、ちゅうちゅうぺろぺろ音をたてて舐める。なにかの冷たさとの温度差で、銀ちゃんの舌がとてもとても温かく感じられた。
「な、なぁに???」
「んめぇ」
「?」
 じゅるっとよだれをすする音。
「ん。こっち向け」
 次はごろんと仰向けに引っくり返される。
「な、なにやってんの?なにすんの?」
 その時やっとにも見えた。銀ちゃんは手に赤いチューブを持っている。
 牛さんのイラストが描かれた…

「寒かねぇよな?」
「う…うん…?」
 くるまっていた布団を剥がれる。のちょうど腰を銀ちゃんがまたいだ。とっさにどきりとしたものの、自分の重みはしっかりと自分で支えてくれていて、は少しも重くない苦しくない。
 だがそのことにほっとしたのも束の間だった。

「うひ…っ?!ちょ、それっ…」
 の目のすぐ上で、チューブが握りしめられる。針で開けたような小さな穴から、乳白色のこってりと濃厚なものがひねりだされて真珠のような玉になった。
 反射的に固く閉じたまぶたへさっきと同じ感覚が。
 重くて冷たい半固形がの眉間にとろーりと落ちた。

 生温かく濡れた生き物のようなのが、追いかけてきてまぶたを這う。
 銀ちゃんの舌だ。先端がぺろぺろに落ちたしずくをすくっている。
 同時にふわりと、甘ったるい匂いが鼻をついた。

 わかった。
「…練乳?」
 銀ちゃんたら、に練乳で味つけしてる。



「ぎ、銀ちゃん…、あんまり…、それ、あんまり…」
「あぁん?」
 名残惜しそうに唇が離れた。
「そんな甘いの、たくさん舐めると虫歯になっちゃうよ…」
「そっちかよ!」

 なぜかげらげら笑われて、わずかながらにあった遠慮もそれを境に消えてなくなった。
「あーんしてみ」
「ん?」
 言われるまま大きく口を開けると、中ににゅるにゅる練乳を搾られた。
「そのままそのまま…、飲み込むんじゃねーよ?」
「あが…」

 とても「キス」とは言えそうにない。開きっぱなしの口に「食いつかれた」。舌の上のくぼみに溜まっていた練乳を美味しそうな顔をしてすすられた。
「ぷは!」
 気に入ったのか、もう一度。
 さらに二度三度。
「むねやけしない?」
「ぜんぜん?」
 銀ちゃんは得意げにを見下ろした。のよだれで練乳の原液がほどよく薄まっているのだそーだ。



「寒くねぇ?」
「うん…」
 今度は気遣わしげに訊かれた。がうなずくと兵児帯のゆるい結び目がしゅるしゅるほどかれる。脱がしはしない。寝間着とその下の肌着が、簡単に前だけはだけられた。
 白くたよりない、たゆたゆした腹を銀ちゃんの手がさらりと撫でた。

 そこへとろとろと遠慮なく、たっぷりの練乳が搾られる。
「あひっ…」
 腹部に広がる冷たさに、縮みあがったがうかつに動けない。身体をひねれば練乳がこぼれて寝間着も布団も汚してしまう。
「は…、はやく…、銀ちゃん、早く、舐めちゃって…!」
 震えながら言うをにやにや見下ろし、もったいつけた銀ちゃんが腹の練乳に口をつけた。ぺろぺろ、ちゅるるとへそのくぼみに垂れたぶんまで、舌先を差し入れ舐めとった。

 でもまだ終わらない。それどころか味をしめられた。
 ぺろりと舌なめずりすると、銀ちゃんはチューブを握りしめ、乳房のふもとから胃の上を通り、臍のまわり、そして下腹部をさらに下って、淡い毛が覆った丘の上まで。
 の身体のほぼ半分にわたってぐるぐる白い線を描いた。
「は…、もうっ…、ばか…ばかぁ…っ、なにすんのよう…んひゃっ!」
 線に沿って舌でなぞりつくされる。くすぐったくて、むずがゆくて、そして少しだけぞくぞくした。
「もう、やだ、それ、もう…」
「なんでもしてイイつったじゃん」
「でもぉ…」

 銀ちゃんはへらへら笑いながら、とうとう着物を脱ぎだした。中の黒いシャツ一枚を残し、ズボンと一緒に下着も脱ぎ捨てた。
「や、なんでなんで…?」
 の目がくぎづけにされる。銀ちゃんがすっかり股間を逞しく大きくしていた。
「はぁァ?おめーがかわいいからにきまってんだろーが何言ってんのォ?」
 そう言いながら両手は思いきりチューブを搾りきっている。にゅるるるるるるるる…!とおそらく最後の一滴まで。ぺたんこになった練乳のいれものを銀ちゃんはぽいと放り捨てた。
 のお腹にはたっぷりとした練乳の溜め池ができた。


 白く濁ったその水面を、勃起がぬちっとかきまぜていく。
「ヒャハハなんだこれ!なにこの感触!?おもしれぇ!」
 声は浮かれて甲高い。ヤケを起こしたような馬鹿笑い。実際銀ちゃんのそれは、こんな状況にもかかわらず隆々とそそりたっていて、自分でも笑うしかないのかもしれない。
 こんなことができてしまう、こんなことが気持ちいい自分を。

 ゆっくりと、の腹を肉塊が前後しはじめた。練乳を竿にからませるように、すくうように、そして、に塗り広げていくように。
 赤い肉棒に白い糸をひく粘液と、銀ちゃんの沸騰しきった瞳を、は交互に見つめていた。そのの目もとろんとだらしなく濁っている。
 銀ちゃんのきもちよさそーな顔を眺めるのはの快感だ。
「は…っ、はっ、はっ、はっ…」
 なすりつけているだけなのに、銀ちゃんの息は次第に荒ぶった。


 けれどもその手が下着にかかると、その時だけはも慌てて銀ちゃんに全力であらがった。
「だっ、だめだめ、待って!脱ぐならが自分で脱ぐから、あ、あっち!あっち向いてて!」
「違うって、挿れねぇって、ちょっとだけ、あそここするだけだって…」
 猫撫で声でなだめられるがてんで的外れ。が言うのはそんなことじゃない。
「違うの、ちがうの、それ見ちゃだめっ、だめぇっ…!」
 邪魔をする手を簡単に払われ、ずるりと下着がずりおろされる。あまりのことにはもう目を開けていることもできなかった。

 生理中の下着を見られてしまった。大事な場所を間近に見られるよりにはずっと恥ずかしい。股間に貼りついた生理用品はたっぷりの経血を吸い込んで、しかもある程度時間をおかれて暗い鉄の色に変色している。たとえ銀ちゃんでも、自分以外の人目にさらしていいものじゃない。
「やっ…!だめだめ…、そんなの、見ちゃだめぇっ…!」
「あぁ違う違う、わりぃのは銀さんだから、な?おめーはなんも気にすんな」
「いやっ、いやっ…」
 銀ちゃんは何もわかっていない。
 しかもその瞬間、どろりと熱いものがあそこをくぐり抜けた。排出された血の固まりが、受けとめるものが何もないためにどろどろと布団に赤黒く染みた。
「ああんっ!やだやだやだ…っ」
「よしよし、あとでぜんぶきれーにしてやっから」
 あやすように言うが銀ちゃんだってうわのそら。
「挿れねぇ挿れねぇ、ちょこっとこするだけ」
 どこかで聞いたようなことを。


 もはや練乳まみれになったの腹が撫でまわされた。手のひらにべったり練乳をすくい、粘つく白濁がの足、太ももの内へ塗りたくられる。べとべとの手がのひざにも、寝間着にも布団にもお構いなしにふれた。
 どろんこ遊びをしているうちにふっきれた子供のようだった。
「やだぁ、もう、ああ、もう…っ」
 どこもかしこもべったべた。もう目が回る。どうしよう。

 そして銀ちゃんはの太ももを、ぴったり閉じさせ、持ち上げた。
「もっと足閉じんの」
「こう…?」
「力入れて」
 浮かせた尻に熱を押し当てる。が固く閉じた足の付け根、べたつく太ももと太ももの間に、硬く勃起した銀ちゃんのものがぬりゅ、と分け入った。
「ん…ん、んっ…」
 塗りつけた練乳のとろみを借りて、隙間にねじり込むような。
 けれど銀ちゃんはその体勢で、かまわず腰を前後させはじめた。ぬちぬち、べとべと、粘ついた音がした。

 挿入こそされていないものの、もどきどきと胸が詰まる。銀ちゃんのアレはの表面を繰り返し繰り返し激しくこすりあげた。襞とその上端に膨れた粒が銀ちゃんと一緒にべたついていく。
「だいじょーぶだよ、あとで、きれーに、洗ってやっから…」
「うん、うん、ぜったいね…、ぜったいだよぉ…?」

 の揃えたひざを抱きしめ、銀ちゃんの目が苦しげに閉じられる。ぐいぐい腰を突くたびに、互いの分泌液が混ざるのとは違う種類の重たい音がした。
 いつしか練乳は肌に塗り込められ、すっかり乾いてしまっている。身体をねじればめりめりと、肌と肌の剥がれる感触がした。





「あ…、あっ…、銀ちゃんもう、それ…」
 気がつくとの両足はもう自由だった。力なく投げ出された足の間で、銀ちゃんが自分のものをしごいている。心配になるほど乱暴な手つきで、はちきれそうに膨らんだ棒を握ったその手が上下していた。
 眉間にだんだんしわが寄り、しわが深くなり、歯を食いしばる。銀ちゃんの表情が険しくなるのをは下からぼんやり見ていた。
 身体を繋げた時よりは声も反応も抑えられたものだ。ただ呼吸だけが次第に細かく刻まれ、最後の瞬間には止まった。
「………っ!」

 ぼたぼたぼたっと、今度は熱いしずくがいくつもの内ももへしたたった。
 すぐさま銀ちゃんの手のひらがそれをでたらめに塗り広げる。太ももも、下腹部も股間もむちゃくちゃにまさぐられる。
 やがてその手が、の目の前にかざされた。
「ん…、ほら、見てみな」
「うん…」
 肉の厚い、それでいてなめらかな銀ちゃんの手のひら、それが今きれーな薄桃色のとろみにまみれきっている。

 それでおしまいならよかったのに。



 直後に聞こえたひとことで、は顔から火を噴いた。
「…いちご練乳になってら」
「ばかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」









リクエストありがとうございました!
K様から「生理の時にされちゃうお話」と「生クリーム(蜂蜜?練乳?)ぷれい」でした。
練乳…もとい、いちご練乳ぷれいをお送りいたしました。