不謹慎にも「大繁盛」と言いたくなる、商売っ気たっぷりの病院だった。
 スタッフの敬語は「過剰」の一言、ナースも医者も患者を「様」呼びだ。その代わり検査と大量の投薬で、病院の窓口と系列の薬局にがっぽりむしられ帰される。
 医は算術とはよく言ったものだ。

 こんな病院をわざわざ選んだのはだ。銀時はこんな小ぎれいな所より、多少みすぼらしいくらいの方が医者として信用できると思う。貧乏人からは金をとらない赤ひげ先生のようなもので。
 けれど銀時がそう言うと、は生意気に鼻で笑った。
「それもしょせんはいめーじじゃないの。病院がボロいのはヤブでお客さんが来ないだけかもしれないじゃん」
 朝から延々ぶつぶつと隣で文句ばっかり言われて、いい加減も頭に来ていた。
「だからさっきから言ってるでしょ、ここの外科に有名な先生がいるんだって。銀ちゃんは怪我が多いんだから、ふだんからこういうとこをかかりつけにしてればいざというとき安心じゃない」
「治療の前に出血多量で死んじまいそうだけどな」
「またそんなこと言う!」

 は目を吊り上げ怒っているが、銀時が愚痴るのも仕方のないことだ。
 先日ややこしい依頼を受けて、右手に軽い傷を負った。医者へ行くほどの怪我でもなかったからてきとーに薬を塗っておいたのに、に見つかるや問答無用に連れてこられてしまったのだ。
 そうしたら診察まで2時間待ち、血液検査だ検尿だ、レントゲンだとたらい回され、さらに検査の結果が出るのを待たされた上にまた診察。
 だが診察の時間など合わせてもほんの数分だ。
 そのあげく医者は「化膿してますね」
 見りゃわかるわ!
 …結局化膿止めの点滴をするとかで、無駄に豪華な処置室でベッドに寝かされているのだった。

 これが終わればやっと帰れる…とはいえ薬のしたたるペースはうんざりするほどゆっくりだ。これをまだ待たねばならないなんて。
 愚痴りたい気持ちもわかってほしい。


「銀ちゃんが最初っから病院に来てればもっと簡単に済んだんだよう。ちゃんと診てもらわなきゃダメじゃない!」
「医者が診たのなんざ3分じゃねーか。なにが化膿止めだよ。くっだらねぇ!ヒトの身体にはな、ちゃんと治癒能力ってのがそなわってんの。こんなモン完全に点数目当てのいらねー薬だよ」
「先生のことそんな風に言ったら治るものも治らないよっ!先生はとにかく偉いんだからっ!」
「あのなぁ、俺の身体は…」
「『俺の身体は自分が一番わかってる』で済めばお医者さんなんかいらないのよっ!」
「うっ…」
 見事銀時をやりこめて、が鼻息を荒くした。

 一方がムキになるのも、それはそれで仕方のないことだ。例によってややこしい依頼を受けて、銀時は大事な利き手に怪我をした。ところがこの男ときたら、てきとーな手当てしかしないものだから、日が経つうちにどんどんと傷が悪化してしまったのだ。
 当然だ。刀傷がまきろんで治せるか!

 こんな時銀時はを巧妙に遠ざけるから、うっかり気づくのが遅れた。気づいた時にはひじから下が青紫に緑も混ざった異様な色に腫れ上がり、とうとう動かなくなっていた。
 あれを見て医者に走らない者はない。ぴりぴりする気持ちもわかってほしい。



 ぽたり…、ぽたり…と、けれど確かに薬の落ちる間隔は、気が遠くなるほどもどかしかった。これではいつ銀時がぶちぎれて腕の針をむしりとってしまうか。
 ここはとにかく銀時をおとなしくさせるのが先決だ。
 は態度をころりと変えて、今度はだだっ子をあやしにかかった。
「ね?もうちょっと、もうちょっとだけ我慢して銀ちゃん。点滴終わったら帰れるからね?なんでも言うこと聞いたげる。ね、なにがいい?帰りにパフェ食べようか?あ、ほら、テレビあるよ。テレビ見る?『渡る世間』の再放送やってるよ?」
 点滴の間も患者様が退屈しないよう、部屋に4つあるベッドにはそれぞれ小型のテレビが設置されていた。カーテンもぴたりと閉めきってあるので人目も気にせずくつろげる。
 どのみち今日は時間が遅いせいか他に患者の姿もない。ふたりがぎゃーぎゃーうるさくしていられたのもそのためだ。

 しかし銀時はテレビより、それが置かれている棚が気になるようだった。入院患者の部屋にあるのと同じもので、日用品を収納できる引き出しがいくつか付いている。
「そん中何が入ってんの?」
「は?なんにも入ってるわけないじゃん」
「いいから開けてみな。引き出し見つけたら開けてみるのが勇者ってもんだろ」
「イミわかんない」
「いいから!」

 呆れて肩をすくめながらも、は言われた通りにした。
 そして引き出しを開けるなり。
「………」
「なにが入ってた?」
「え?あぁ…うん…まぁ…」
 何もなかったことにしたいがとても誤魔化せそうにない。なんてよく利く鼻だろう。使う者のないその引き出しは、備品の収納に使われていたらしい。

 中にはクリーニングのされた白衣が数着しまわれていた。ナースの制服と、医者の羽織るものと。

 が黙って戦利品を見せれば、銀時がにぃぃっと歯を剥いて笑う。それだけでもうこの男が何を言いたいのかわかってしまった。
 も「なんでもする」と言った手前。





 カーテンが確かに閉めきられているのを、はもう一度よく確かめた。こんな格好でいるのを見られたら二度とここには顔を出せない。「かかりつけ」どころではなくなってしまう。
 銀時の無言の圧力に負けて、はこの病院のナース服を着せられていた。

 さすが新しい病院はスタッフの制服もハイカラだ。胸元を着物のように合わせる和洋折衷タイプではなく、襟のまーるいワンピース。襟と袖口にあしらわれた紺のラインが清潔な印象を与えている。
 ちゃっかりナースキャップも見つけて、頭にそれもちょこんと乗せた。
 たまに着せられる「ぷれい用」のナース服とは違って裾もおとなし目のひざ下5センチ。今日は洋装用の下着など穿いていない…つまりこの下はノーパンなので、丈の長いのはせめてもだった。

「おおお!似合う似合う、いいじゃねーの」
 銀時は動かない右手の代わりに太ももをぱちぱち叩いて拍手した。
 さっそく看護婦さんのに横っちょのボタンを押させると、ぐぐぐとベッドの上半分がせり上がる。ソファのようになったベッドにもたれ、銀時はご満悦だった。
 喜んでもらえたのなら何より。



「ほれ、なんかナースらしいこと言ってみな」
「えっ?」
 いきなり難しいことを言われてうーんとは悩んでしまう。
 が、はっと名案が頭に浮かんだ。は背を反らし両手を腰に、えらそーに銀時を見下ろした。

「坂田さん!まだ点滴の最中ですよ!ちゃんと安静にしてなきゃだめです!」
「却下」
「なによう!」
 しかしすげなく一蹴された。

「医者に向かってそんなえらそーな看護婦がいるか!」
「は?なんでこの状況で銀ちゃんがお医者さんなのよ。点滴されてるじゃん、寝かされてるじゃん!」
 しかし銀時は片手一本で器用に白衣を羽織ってみせた。
「うるせぇ。患者だけど医者なんだよ。親の経営する病院に患者として入院してる、院長の息子で自身も医者の坂田銀時先生だ」
「めんどくさっ!なにそのめんどくさい設定!」
 しかも次から次にぺらぺらと。
「そーだな。おめーは田舎から出て来たばっかの新人ナースってとこか」
「い、いいい田舎者って言うなァ!」
「家が貧乏で、幼い弟妹と病気の父親のために仕送りしなきゃならねぇと。さあさあ、そんな新人ナースは院長の息子の坂田先生にどーいう態度で接するよ?役になりきって考えろマヤ」
「こんなつきかげせんせいはイヤです」


 のふくれっ面にはかまわず、はい!とふたたび太ももが叩かれる。演技開始のキューが出た。
 やむなくもやり直した。ドアから入ってきたていで、何もない空中にノックの真似ごと。だが「こんこん」と口で言うのは芝居というよりコントのようだった。

「さ、坂田せんせい。困ります。安静にしていただかないとぉ…」
「ふん、看護婦風情が院長の息子に偉そうにぬかすんじゃねぇクソが。どうしても安静にして欲しけりゃ、そこでストリップでもしてみせるんだな」
「どこの暴君だァ!!」
 「しょーとこんと・病院」ひとまず中断。

「どんな病院よ?!王様と奴隷か!ハーレムか!」
「えええ〜?医者のどら息子なんてどーせこんなモンだよ。立場カサに着て看護婦に手ェつけまくってんだって」
「本物の息子さんに怒られるわよ!だいたい自分もお医者さんって設定なんだから、もうちょっと知性がないとおかしいでしょ!それじゃーいつもの銀ちゃんと全然変わんないじゃない!」
「………ん?」
 それって。

「もういい!『安静』のくだりはパス!次行ってみよう次!」
 と、はいろいろ省略して別のシーンを演じ始めた。



「失礼します坂田先生、お熱を測らせていただきます」
「おっ?」
 は枕元に手をつくと、そっと額に額を寄せて、やがてぴたりとくっつけた。
「うふ、よかった。熱はないみたいですね」
 たちまち大人しくなった銀時をの勝ち誇った目が見下ろしている。よーするにこうでしょ?こういうことでしょ?ちょろいちょろい。

 今度は銀時の左手を取った。だがその指先はひんやり冷たい。思わず「ひやっ?」と声が出たほど。
 もちろん、はだからといって正解を見失いはしなかった。
 ひとつずつ順にぷちぷちと、銀時に見せつけるように白衣のボタンを外していく。
 はだけた胸に、冷えきっていたその手をおしいただき、谷間に挟むように温めた。
「いかがです、あったかいですか?体が冷えてしまった時は、こうして人肌であっためるのがいいんですよ」


 やがての肌と同じ温度に温まった指先が動いた。白衣のもっと奥へ入り込み、手のひらにたゆんときれーにおさまる胸のふくらみを揉みしだく。
「あん…い、いけません、先生、わたしそんなつもりじゃ…」
「けどさァ、ヒマを持て余してんだよねェ」
「でも、でも点滴中は安静にしていていただかないと…。先生にもしものことがあったら、院長の奥様に叱られてしまいます。ただでさえ…」
 はっとわざとらしく口をつぐんで思わせぶりな演技をつける。銀時がすかさず拾ってくれた。
「かわいそーに。もしかしていじめられてんの?」
「い、いいえ。そういうわけじゃ…でも…わたし、ドジだから、いつも怒られてばっかりで…」
「守ってやろーか?」
「さ、坂田せんせい?」
「その代わり…」
 愉しげな瞳がを見つめ、白衣の中では指の腹が、やわやわしていた胸の先端を硬くなるまで弄っていた。

「ふぁ…せんせぇ…」
「まだ妹さん小さいんだろ?お父さんの手術も近いってなァ?今クビになったら困るんじゃないの?新人ナースのひとりくらい、俺がどうにでもしてやれるんだけどなァ?」
 ちらちらを窺いながら、乳首で遊ぶ手は止まらない。爪でほんの軽く引っかいてやると身体がその手を包むように竦んだ。
「もぉ…銀ちゃんたらぁ…」
「院長の息子の坂田センセ!」
「ばか…」

 少しだけ顎を反らせると、「先生」はキスをしてくれた。ずっと仏頂面だったのを忘れたように顔はニヤケていて、それだけはもほっとした。
「…まあいいか」
 点滴も3分の1ほど減ってる。





「こ、こうですか…?坂田せんせ」
「そうそう、ああ、いいね。いい眺め」
 白衣に包まれた尻が、手を出せば届きそうな目の前にある。銀時のちょうど腹の上をが向こう向きにまたいでいた。
 長い裾のおかげで中は見えないが、両ひじをついた四つん這いの姿勢は丸みを強調するように突き出し、肉感的な太ももとともに銀時に迫ってくるようだ。
「は、恥ずかしい…です…」
「そうだろうなァ。現役ナースがでかいケツふりふりしてんだもんなァ」
「えっちなこと言うのやめてください…」
「あれぇ?そんなえらそーに言っていいの〜?」
「っ…!」
 ひざの裏側を撫でてやると、思った以上にが震えた。
 ストッキングまでは調達できなくて、の裸足のつま先が引きつりながらシーツにシワを寄せている。
「汗かいてら」
「だって…坂田先生が…」
「ん?」
「坂田先生が、いやらしい目で見るからですぅ…」
「いやらしい目で見られると、君はこんなコトになっちゃうわけ?」
「う、それやだ銀ちゃん、君て呼ぶのナシ」
 まるで知らない人に呼ばれた気になる。

 なのに銀時は聞く耳持たず、その上するりとスカートの中へ手をしのばせた。
「きゃあんっ!」
「あららぁ?これは汗かな?汗ですか君?」
「だからぁっ、君やめ…ちょ、やだ、やだぁもぉっ」
 手は股の内を上へすべり、しっとりどころかもっともっと、とろりと濡れた場所を探り当てる。
 ぷつりと中に指が埋まった。左手を使うぎこちなさが、不思議にを刺激した。

「んっ…ん…」
「さあこれは?ここから垂れてるとろとろしたのは?」
「あ、汗です。汗ですせんせぇ…」
「なになに?これが汗だって?本気で言ってるならナースとしてモンダイだよ?そんな基本も知らない子はうちの病院には要らないなァ?」
「そ、そんな…、先生、お話が違いますぅ…」
「しょーがない。基礎からお勉強しなおしてもらおうか」
「きゃっ?!」

 不意に股間が涼しくなった。スカートが腰までまくりあげられ、とろけたそこを露わにされていた。
「ああこりゃ大変なことになってるな」
「ちょっと、ぎ…」
「ん?」
「さ、坂田せんせい、人が来たら…」
「まだ当分はだいじょーぶだよ」
 点滴は半分も残っている。


「さあそれじゃあ復習してみようか。ここはなんて言うの?」
 人差し指がの縦割れを何度も上下になぞってみせた。
「なななな、い、いきなり、ヘンなこと言わさないでバカっ!」
「はー?ちげーよ何考えてんの。そーいうエロイ俗語じゃなくて、かしこまった呼び方があんだろが」
「ど、どういうの?」
「なに、知らねーの?」
 銀時の目にそこをさらしながら、向こうではきょとんとしていた。

「はァ?しょーがねぇな今どきの若いモンは。百科事典で調べたことねーの?銀さん…じゃねえ、せんせーの若い頃は赤ペンで線引いて勉強したもんよ。ほら」
「んやんっ!」
 割れ目をふっくら包むふくらみを、人差し指がぷくっとつついた。
「はい、この部分が大陰唇です」
「はぁ…」
「りぴーとあふたみー!」
「えええっ?も言うの?」
「お勉強だって言ってんだろ」
「…だ、だいいんしん…」
 顔から火が出そう。ぎゅっと目をつぶってどうにかしのいだ。

「で、この内側のびらびらを小陰唇と言いまーす」
「………」
「………」
「しょーいんしんですね…せんせー…」
 よし、と大きくうなずく気配がした。

 銀時の指は一度中心で潤滑液をたっぷりからめて、とろみのついた指先がひだの形を前へなぞった。中心で硬くなっている小さな粒までたどりつくと、その上でくるくる円を描いた。
「あ…う…っ、んふっ…も、もう…っ、ばかぁ…」
「はい、ここの名前は君も言えますねー?」
「クリトリスですぅせんせぇ…」
「そのとーり。陰核とも言います。他におマメとか、サネとか肉芽とか…」
「ばかっ、ばかぁ…っ、それぜったいに医学用語じゃないでしょぉっ…!」
 太い指がそこを、押して、はじいた。硬く膨れていく様を愉しそうにじっと見つめられた。
「も…、そこ、やめてやめて、もうっ…」
「おっと、そろそろ膣口がぱっくり開いて…って聞いてる?」
「んっ、聞いて、聞いてる…からぁ」
「うそつけ」
 その通り、のかぼそいその声は銀時の言葉をおうむ返しにしただけだ。



 ベッドについたひじはとうに崩れ、顔は銀時の股間に埋まっていた。
 精一杯の大きな口を開け、は布ごと中のものをくわえてやった。
 銀時の腰がぎょっと引けたがいい気味だ。
 こんなところでをいじるから。
「こらこらナニをおっぱじめんの」
「だって銀ちゃんずるいよぉ、にばっか恥ずかしいことさせてぇ」
 半ば泣き声で責めながら、ぺろんとズボンを下ろしてやった。下着も一緒に引きずり下ろし、こぼれ出てきた銀時のそれを両手で優しく包んで舐めた。

 手の中のものはすぐ硬くなった。挿入を試みてもどうにかなりそうな程度には。を眺めてその気になっていたに違いない。
 肩越しに銀時の顔を見て、はうっとりと、そしてにやりとした。
「せんせぇ、これはわたしも知ってますぅ、挿れちゃえば中で大きくなるんですよね?」

 きまり悪そうにしていたのはわずかな間。銀時の目もやがていたずらっぽく笑った。
「やってみれば?」



 位置を合わせるのは簡単だった。銀時に背を向けたまま、やんわりと勃つ肉棒に自ら貫かれにいく。侵されるというより迎える気持ちで、ゆっくり腰を真下へ落とし、根元まで完璧に飲み込んだ。
「は…っ、ふわ…ぁぁぁ…」
 背中を向けていて良かった。半勃ちの銀時を挿れただけで、身体にぴりぴり電気が走り、とても見せられない顔になった。
 ベッドが軋むと困るので動かない。けれどそのぶん丁寧に、自分の内で徐々に膨れていく熱い感触をは味わった。

 よっ、と身体を起こした銀時が背後からを抱きしめる。耳のそばに熱い息がかかった。
「あっ、う、んっ…せんせぇ…」
「よーしよーし。よくできました」
「ほんとに、これで…?」
「ああもちろん」
「ついでにお給料も上げてくださぁい…」
「可愛い顔して悪い子だな君」
「う…」
「お。締まった」

 きらいな呼び名で緊張したはずみに、ぎゅうっと銀時を締めつけたのだ。
「お前ほんとイヤなことされんの好きな」
 そうしてささやかれるだけでもの身体は縮みあがる。
「あとこれも。耳のそばで喋られんのもか」
「それは…銀ちゃんの声だからよう…」
「…あっそ」
 いつしか銀時はの中が窮屈で仕方なくなっていたが、それはばかりが理由ではない。



 それまで遮断されていたロビーの喧噪が不意に聞こえてきた。おぼろげなアナウンスと人のざわめき。
 部屋の扉を誰かが開けたのだ。
「坂田様〜」

 はっとふたりして息を飲む。カーテンの向こうに係の看護婦さんが来ていた。
「坂田様〜?点滴のほうは大丈夫ですか?」
 けれどの中の銀時はそれを聞いても萎えもしない。もそれまでよりむしろ激しく銀時自身に吸いついている。
 上の口に指が突っ込まれた。銀時の意図をありがたく、がかぷうと噛みしめる。
 同じくらいのに下の口は銀時を絞り上げていた。

 不意の乱入者はこつこつと足音を立て近づいてくる。通路はさらにぎゅうぎゅう狭まった。
 そして腰骨がぞくぞくと、どうしようもない快感に襲われる。絶えず激しい震えが走り、声をこらえるのがつらくてならない。はぎりぎりと歯を食いしばった。
 努力の甲斐あって息も漏らさず、ただお互いに交わる部分がぴくぴく脈打ち鼓動を伝え合う。声を出すまいと禁じるほど、身体は敏感にそれを感じた。

 一度だけ、は思わず腰をよじって大きくベッドを軋ませた。
 大丈夫、一度だけなら大丈夫、銀ちゃんが寝返りうったってベッドは軋むもん。大丈夫。
 しかし。
「坂田さまぁ?」
「ひ………っ!」
 声がまた一歩近づいて、そしてその瞬間の腰を…背筋を、頭のてっぺんを、鈍く重たい痺れが突き抜けた。

 大きく身体が仰け反って、またもや派手にベッドが軋む。だがそれもぎしっ!と一度きり。続く小さな痙攣は必死で身体の内に留めた。
「…っ、っ、…ん、ん、んんっ…!」
 声だけは殺すその代わり、絶頂が身体を暴れ狂う。


 その波がやがて鎮まるのに合わせ、はゆっくり力尽きた。





 銀時のとろけそうな声が、耳のそばで誰かに返事をしていた。とは逆にその声の中に喘ぎを紛らせ消しているのだ。
「あ〜、すんまーせーん、もうちょっとかかりそうですけど〜」
「そうですか。終わりそうになったらお手元のボタンで呼んでくださいね」
「はぁい、ろーもぉ」
 ろれつの回らないそれは、知らない者には体調の悪さゆえとしか聞こえないのだろう。特に怪しむ風もなく、看護婦さんは出て行った。


「イっちゃった…」
 よだれまみれの指を吐き出すとくっきり歯型もついている。
「ごめん…」
「おめーのアソコずーっとぴくぴくしてんだもの」
 指の痛みなど銀時も頭にない。目のふちをうっすら赤くして、のほっぺたにしゃぶりついた。
「横にヒトが来て興奮した?」

 くったり力が抜けてしまってが返せたのはひとことだけだ。
 達したばかりで甘くつやめいた…
「坂田せんせぇ…」


 けれどぷれいを忘れなかったに、銀時はちゅーっとご褒美をくれた。









リクエストありがとうございました!
M様から「2人揃って医者とナースプレイ 裏な感じで…」のほうを書かせていただきました!
お医者さんのイメージがふわふわしている銀さんでした。