この街で堅気な時間に寝ようとすれば、窓の向こうの明るさにも表通りの騒音にも慣れてしまうより仕方ない。その日もまだまだ賑やかな中を仲良くお風呂へ行って戻って、自分以外はみんな遊んでる…少しだけそれがうらやましいような、反対にたのもしいような、そんな気持ちになりながらはおとなしくふとんを敷いた。
「はあい。消すよう?」
「おー」
髪をよく乾かしてからになるから、寝床へはいつも出遅れる。は電気のひもを引っぱり、そろそろひんやりしだした身体を銀さんのそばへすべりこませた。
ひと足先にくるまっていた銀さんのおかげで中はぬくぬく。おさまりの良いポジションをもぞもぞ動いて模索して、無事銀さんの懐へ子ねずみのように丸まると、厚い胸板へ顔をうずめた。
ぽふっ。
「おやすみなさーい」
「はいよ、おやすみ〜」
腕の中にあるちいちゃな身体を銀さんもぎゅうっと抱きしめる。力をいれるとやわらかい肉がむにむにつぶれて心地良い。ちょうど尻たぶを包むようだった手のひらをわきわきうごめかし、思う存分撫でまくり揉みまくり。
べつにイヤらしい気持ちではない。そこにあるからにはしてしまうだけのこと。
そうするうちにがひょこっと顔をあげた。
「する?」
「おめーは?」
「うーん。はどっちでもいいかな。銀ちゃん決めて」
「そーだなぁ…」
銀さんは軽く寝返りをうった。せっかくのきめた寝相がごろんとずれてだいなしだ。ふにゃーと抗議の声がする。けれど今度は銀さんがもぞもぞ姿勢を整える番。自分のいちばんやりやすい姿勢、すなわち片手を腕まくらにして横向きにを抱っこしなおした。
ちゅっちゅと頭のてっぺんから、おでこに、そしてほっぺたに、口づけするというよりも唇でを撫でてゆく感じ。えらと耳たぶの境い目あたりを吸ったりなめたりくすぐるとがうひゃうひゃ肩をすくめた。
「やめてやめてそれくすぐったい、ふひひ」
艶っぽい声は出てこないものの、されどごきげんは悪くなさそうだ。髪とお肌をさわってみるに、毛並みもなかなか。元気そう。
明日の予定とも相談して、銀さんは考えた。じゃあやっとくか。
それでふたたびさらに寝返り。仰向けになって手足をのばすとの頭をぐいと押した。
「ほいほい、じゃあ銀さんのおったてて」
「あいよ」
「………」
いくらなんでもその言い草は。自分を棚に上げて銀さんは思った。
おふとんの中は今やむわっと蒸すくらい。は真っ暗闇をもぐって銀さんの股間にうずくまった。甚平さんに指をかけると、ちゃんと銀さんも腰を浮かせてずり下ろすのを手伝ってくれる。
が、いくらもずらさないうちにイヤイヤと身をよじられてしまった。
「待って待ってストップ、脱ぐと寒いわ」
「えー?」
「待て待て…よいしょっと」
自分で自分の下着をごそごそ。最低限だけずらした上からそれをぽろんと引っ張り出した。
「これでよろしく」
「もーしんじらんない。おーちゃくなんだからぁ…」
あきれ半分あきらめ半分、それでもは顔を出したものをぱくりと口いっぱいにふくんだ。ぐんにゃりいもむしのよーな銀さんの根元をつまんでちゃちゃっとしごいて、だんだん元気になるにつれ剥きだしになった先っぽをぴたぴた舌で舐めてやる。
「てめーこそテキトーなフェラしやがって…」
「はむむむむ…」
「わーっ!スンマセンスンマセンうそうそうそですっ!」
やんわり歯先を当てられただけでタマがひゅっとなる銀さんだった。
それでというわけでもないけれど、銀さんは早々にを抱き上げた。
「はい挿れて」
「え〜?まだたってないよー?銀ちゃんちゃんとして」
「どこに向かって言ってんだコラ」
「あたっ」
おかっぱ頭をぺちんとはたくとその手がごしごし自分を勃たせた。もどかしいの口と手と違って、かろうじて使える硬さならすぐだ。そのかわり風情も何もないけれど。
「ん」
あごで短く促せばが銀さんの上を這ってくる。ふとんがはがれて寒くないよう、頭からかぶってよいしょよいしょと。オバケの仮装のようなナリで。
「ねえねえ今ね、『あるでんて』ってあたまにうかんだ」
「中に芯の残るゆで加減てか。それは銀さんのちんこのことかオイ」
「………」
「聞いてねーし」
実際屹立しているとはまだ言いがたい銀さんを、の指が上向きに支え、てっぺんに割れ目を撫でさせた。敏感な場所がにされるがまま、熱いとろみにまぶされる。
天井の木目を数えながら銀さんは感慨深くなった。
「うーん。考えてみたらすげーことしてんのな」
「ん、もう…、まじめにしてるんだから、銀ちゃんふざけないでよう…」
「へえへえ」
そして頭の先だけが、つぷりとに飲み込まれた。
すべって逸れてしまわないように、ゆっくり、ゆっくり、が身体を沈めていく。
「…んふ、いれたらすぐにおっきくなるから、さいしょはくにゃくにゃでもいいんだよぉ…ねっ…?」
「そーいうこと」
根元まで深く埋まるころには、銀さんもの内側をやや窮屈に思うほどにはしっかり膨れ上がっている。熱々の蜜に芯まで浸かって思わず腹の底からうなった。
「はあぁぁぁ〜…」
「………」
一番風呂のおじさんみたいと思ったけれどは黙っていた。いくらなんでもそれを言ったら。
それにそろそろ無駄口をきく余裕もなくて。
「んっ…」
とっさにこぼれてしまった声に銀さんがほっと目を見張った。一緒に下もびくんと脈打つ。きっと内側で感じたのだろう、なにか言いたそうにが見てくる。
「るせえ」
「んきゃっ!?」
恥ずかしいことを言われる前に腰をつきあげ黙らせてやった。
「ん…、んっ…、ん、ん…っ」
とはいえこれはもうのほうがすっかり夢中のパターンだ。声はきれぎれ遠慮がちでも身体は一心不乱によじれて、中の銀さんをむさぼっている。
ちなみに、自分が気持ちよくなることしか考えていない。それというのも夜の銀さんはついつい甘やかしがちなので。
ひたすら自分勝手によがるを眺めるのもオツなもんなのだ。
(こいつオナる時はこんな顔してんだな)
すこし苦しそうに眉を寄せ、目は銀さんを向いているけれど遠くを見ているようでもある。
そうだ忘れてた。思いたって胸をわしづかんだらにうっとおしそうにされた。
「もうイク?」
「ん…」
「ははっ、もう?はえーなァ」
笑いはしても、でも止めはしない。自分のちんぽでこんなカンタンにとろとろにされてしまう女が、ちょっとかわいくないわけがない。
「んっ、ん、んんっ…」
「ん?ここ?これか」
「はぁ、あ、あぁ…はわっ…ぁぁ…」
くいしばっていた唇がだらしなくほどけてゆくのが合図。銀さんの寝間着をつかんだ指にぎゅうと力がこもっていく。
その指がぐいとひきつった。
「…っ!」
びくりと大きく。それからびく、びく、短く震えて、そしての肩はかくんと落ちた。
よしよし。これでおつとめは完了。銀さんは胸の上でくったりと手をつきあえぐを転がした。ふとんへごろんと投げ出され、力なくのびたその両足を無造作にぱっくり開かせる。たった今まで銀さんの入っていたところが、まだその太さにこじ開けられたままだ。
「はいよっこいしょ、おじゃましますよっと」
「ふふっ…、なにそれぇ…」
腰を引き寄せまたつながる。ぽっかりと空いてしまったすきまを元どおり埋めてほっとした。
「よっ…」
そして銀さんは調子良く腰を前後にきざみだした。
こちらもをそっちのけ。自分ひとりが気持ち良いように。すこしまぶしそうに見上げるのとろんとした目が愛くるしくて、シングルプレイ同然の作業もはかどるというものだった。
「ふわ、あっ…あっ…銀ちゃん…」
「ん、もーちょっと…、もすこしかかる…」
「いいよう…銀ちゃんの、すきなよーに、つかって…」
「へっ…」
ガキがわかったよーな口を。
けれどそこから確実に銀さんの動きが早まったのをはちゃーんと感じていた。
銀さんの身体は次第に前のめり、ついにはべったり腹ばいになった。を下敷きに寝ているようで、腰だけはくいくい上下している。
くしゃくしゃ頭をも抱きしめあやすようになでなでしてやった。よしよしきもちよさそーでよかったね。
の腕の中で銀さんの身体は順調にこわばっていく。乱暴に腰を突き上げられて何度も息が止まりそうになった。力いっぱい銀さんを抱きしめ返して必死にこらえる。
「うっ…!!」
「んっ…!いっ、た…っ」
がっつんっ!とひときわ奥深く。壊れてしまうかと思うほど激しく中の中を突かれた。奥に当たってもまだその奥を何度も何度もえぐられて、の気が遠くなりかけたころ。
やっと銀さんはおとなしくなった。
力の抜けた重たい身体がずるずるとにかぶさってくる。胸をつぶされて今度こそ本当に息もさせてもらえない。
が、
「「ぷはっ…!」」
と夢中で息を吸ったら、それが銀さんとぴったり同時。
たったそれだけが妙におかしくて、顔を見合わせけたけた笑った。
やがて呼吸も鎮まった頃、上下に重なりあっていたふたりはごろんと左右になった。ちょっとだけずり下ろしていた寝間着を銀さんはそそくさ元に戻して、のはだけてしまったすそもきれいにととのえ直ししてくれる。
ぽんとお尻を叩いてハイできあがり。ふたたびがもぞもぞと懐の中へおさまって、銀さんはそれを抱きしめた。
ぎゅう。
「おやすみなさーい」
「はいよ、おやすみ〜」
わずかに揺れる声のほかは何もなかったかのような。
明るいネオンと騒音の中でふたりは仲良く眠りについた。
「あーすっきりした」
「いわなくていいの」