「ただいまぁ」
 風呂から帰ってきたが、浮かれた声とともに戸を開ける。留守番の銀さんがちゃんと居るかどうか、部屋を一周ぐるりと確認した。
 といってもほんの四畳半だ。一目で見渡せない場所はない。足を畳まれ壁に立てかけられたちゃぶ台や、洗い物の済んだ小さな流し。壁にはセーラー服が掛けられ、そして部屋を占領している布団と、その上へ寝っ転がる銀さん。

「わあ、気がきくねえ。もうお布団まで敷いてくれたの?ありがと銀ちゃん」
 真後ろへぽいぽい下駄を蹴るように脱ぐと、部屋へ上がってきたは、濡れ手ぬぐいをぱんぱんと叩いて広げて壁際へ干した。洗濯屋さんの針金ハンガーをかもいに引っかけた即席の物干しだ。隣には超ミニスカートとセットになったセーラー服も揺れている。
「でもいいの?こんな時間からお布団敷いてごろごろしちゃうの?ちょっと早くない?」
 そのわりに、うふふふふ〜と顔はうれしそーに、銀さんの横へ潜り込む。一度頭まで布団へ隠れ、それから銀さんの胸元から子供カンガルーのように顔を出した。聞いているのかいないのか、いまひとつ反応の薄い銀さんにもおかまいなしにひとりごと。「そーだテレビ見ていい?フィギュアスケートやってるの。マオちゃんかわいいんだ。金メダルとれるといいのにな」

「あれ?リモコンない。銀ちゃんどこかやっちゃった?」
 定位置のはずのテレビの下にない。枕元にも転がっていない。
 だが、布団を這いだしうろうろ探すと、目当てのものはすぐ見つかった。何かの拍子に転がったのだろう、リモコンは壁際においやられていた。安いコスプレ衣装とは違う、布地のしっかりしたセーラー服とミニスカートのひと揃いがハンガーに掛けてぶら下げてある下だ。

「あったあったリモコン。マオちゃん見よーっと」
「マオちゃんはどーでもいいんだよォォォ!!」
「ぷぎゃーっっっっ?!」



 世界がぐるんと回転した。どすんと音をたて身体が沈み、気がつくとなぜか天井を眺めている。たった今まで四つん這いでテレビに手を伸ばしていたはずが。
 布団があるのをいいことに、銀さんにきれーな巴投げをくらわされたのだった。
「???」
 受け身も知らないはずのが痛くもなんともなかったから、落ちる瞬間上手に身体を支えてくれたのだろう。いわば「甘やかし投げ」だが、それはそれ。銀さんは血まなこで迫ってきた。
「なにガン無視くれてんだてめぇ!見えてるだろ!?さっきからずーっと見えてますよね!あすこでひらひらしてんのはナニ?ほれ言ってみろ!」
「なあに?てぬぐ…ぷぎゃーっ!!」
 なおもしらばっくれようとしたら、上からめちゃくちゃに顔をまさぐられた。
「ぶぶぶぶぶふふぶっ?!」

 いつの間にやらの腹の上に銀さんが馬乗りになっている。部屋の明かりを背に受けて、黒く陰った顔が恐ろしげ。しかしは逆に居直った風で、ふてくされた顔をぷいとそむけた。
「ふん。がなんでも思い通りになると思ったら大まちがあはははははははははっ?!やっ!いやっ!ずるい!くすぐるのずる…あははははははっあははははっ!あははははげほっ!げほっ!うげほっ!!」
 銀さんの指がわきわきとのわき腹を這い回る。脇を締め必死に防戦するが、銀さんはものともしないのだ。笑いすぎてむせてもやめてくれない。こうなるとただの「くすぐり」がどんな折檻より効果的だ。

 猫撫で声が文字通りを撫でた。見下ろす顔にも、今は甘い笑みが湛えられていてそれが気味悪い。
 そして銀さんはその優しすぎる眼差しで、壁に掛かったセーラー服を指した。
「どうすればいいか良い子のちゃんならわかるよな?アレ手に入れんの結構苦労してんだよ〜?あれな、意外にちゃんとした洋服って置いてある店少ねーのな、どこも着物風のセーラー服か、セーラー風の着物ばっかでよォ」
「う、うぅ…、う…」









 布団の上に力なく、は着替えて突っ立っていた。
「これでいい…?」
 それ以外の選択肢などなかった。

 どこぞの3年Z組のような、紺色の襟がやや古くさいセーラー服だ。胸元にはためく赤いスカーフも清純な印象を与えるが、スカートの丈だけは非常識に短い。腰から裾まで計っても30センチもないかもしれない。
 以前別の場所で一度だけ同じものを着た時にも思った。せめて厚手のタイツでも履かせてくれればいいものを、靴下はひざまでのハイソックス。ややもすれば中身が丸見えだ。
 腰を引き気味に一生懸命、両手で裾を引っ張るのだが、
 すると
「パンツ見えてんぞ」
「ええっ?!やだ!えええっ?」
 慌てて後ろを引っ張れば、今度は前から見えるという具合。
 しかも無理矢理穿かされたのは、黒いレースのふんだんにあしらわれた黒い下着。「野暮ったい制服を一枚めくれば黒レース」…これにもきっと銀さんはオッサンらしい下衆な意味づけをしているに違いない。
 前後左右のバランスをとるあまり一本足のやじろべーのように、は直立不動の姿勢からぴくりとも動けなくなった。

 その正面にしゃがみこみ、銀さんはいたくご満悦だ。ニヤついた顔はのひざがしらへ埋まらんばかりに接近していた。
「へへへいいねいいね〜。やっぱいいなコレ」
「意味わかんない…」
「いいんだよ小娘にゃわかんねーの!」
 隠しようもなく放り出された太ももに、銀さんはぱつんと顔を埋めた。
「あひゃっ?!」
 そのまますりすり頬ずりされた。おかしな笑い声がふひ、ふひひ、と肌を震わせ伝わってくる。くせっ毛にももの内側をくすぐられては身悶えした。
「うひゃ、やっ、もぉ、やん、やだぁっ」

 身をよじらせればよじらせるほど、うずくまった銀さんも大喜びだ。爪を立てないよう指の腹で、内ももの肉をつかまれた。むにっと深く指が沈む。指が肉に吸いつくようでもあり、太ももが指を吸いつけているようでもあり。
 力を入れてはまた離し、まにまに何度も揉みほぐされた。きめ細かな肌がくせになったようだ。
「くすぐったいよぉ…」
 両足を丸ごと抱きしめられ、の柔らかいもも肉は硬い腕の中でむにゅっと形を変えた。
「うほ、やーらけぇぇ」
「…へんたい。オヤジ。をそーやってオモチャにして」
「ああん?銀さんがおめーをオモチャにして何が悪いよ」
 「キリッ」と書き文字を添えたいくらい。天下になにひとつ恥じるところなく、きっぱり宣言されてしまった。
 やっていることは若い娘の太ももを味わっているだけのくせに。

 それが今更恥ずかしくて、だんだんはおとなしくなった。



「ひぁ…っ」
 次第に銀さんが身を乗り出してくる。両膝をつくとそれまでよりもずっとにすがりつく姿勢になった。頬ずりはスカートの生地を這い上り、やがて腰から腹へいたる。セーラー服の裾をまくればもうすぐ生の肌があらわだ。日頃着ている和服に比べればこんなもの何も着ていないも同然。和装の重装備に馴染んだが落ち着かないのもよくわかる。
 ここでも銀さんのくせっ毛がの腹まわりをくすぐった。くすくすとのどの深い奥で押し殺された声がした。笑いながらもの声音は色気を含んで喘ぎのよう。銀さんの仕打ちがふざけているのか愛撫なのか、いまいちわからずにいるせいだ。
 肋骨のあたりに薄くついた肉を、銀さんはびろんとつまんで伸ばした。これは歴然たる悪ふざけ。
「ばーか…」
 照れくさそうには笑った。

 けれどそのうち、のどかな遊びに見えた行為が徐々に色合いを変えはじめる。
 わき腹をさすり上げていた指が、黒いレースを引っかけていった。ショーツと揃いのブラがずり上がり、丸みのふもとをむちっと潰した。胸のふくらみがいやらしく歪んで強調される。もちろんわざとしているのだ。
 ぎゅうっと手加減なく乱暴に銀さんの指が両乳を絞り、そして初めて、乳首にちゅうっと吸いついた。


 ちゅぱちゅぱ聞こえよがしな音にが口を曲げ、眉をひそめた。
「うぅぅ…なんかやだぁ…。えっちぃ…」
「えっちなことしてるんでーすぷぷぷ…」
「もっ、ももも、もぉっ…!」
 しろくろした目がぱちくりする。おっぱいにしゃぶりつきながらおしゃべりするなんてなんて下品な。
「は…、あ、もう…、銀ちゃんはぁ…もぉぉ…」
 ちゅうちゅう、じゅるるっと、ことさら大きく音をたてすすられ、は困った顔をした。

「気持ちよくなってきたんじゃねーの?」
「…べつに。ふつーだよ。ぜんぜんだよ」
 反射的に返したがもちろんうそ。だんだん頭はぽーっとしてきた。ゆっくり身体を前へ屈めてくしゃくしゃのくせ毛を抱きしめてしまう。腕の中ではちゅくちゅくと乳首を吸われ続けていて、規則正しく単純な刺激にただただ胸がどきどきした。
 立っている努力が虚しくなって、やがてはくたくた自分の腰が砕けてしまうのにまかせた。
 大きく広げたひざを立て、まくりあげられたセーラー服はブラと一緒に胸にひっかかっている。あられもない姿に気づきもしない。
 ふと、自分に手があるのを思い出したけれど、がしたのは服を整えることではなく、惚けた顔を覆って隠すことだった。


 軽く撫でられたとしか思えないのに、の身体はこてんと倒された。
 上から覆いかぶさられる。されるがままに唇を受け止め、顎をそらせて舌をからめた。されること何もかもを受け入れ、いやがらなくていいのは楽だ。
 ひりひりしそうに頬を吸われても、吸ったその跡を舐めて慰められても。
「んー…んぷぷ…。お顔べったべたになるぅ」
「うるせーな、ほら、舌出せほら」
 ちろりと出した舌に噛みつかれて、ぴりぴり腰骨がうずいた。

 ほんの少しだけ。だらしなくひざが開いてきたのをめざとく見つけて銀さんが笑った。
「おいおいスカート短ぇんだから。ちゃんと閉じてねーと中まで見えちまうぞ」
「うん…」
 こくこく頭を揺らしはしても、は機械的にうなずいただけ。足はだらりと開きっぱなしだ。
「なに。中見ていーの。見せてくれんの」
 ふらふら泳ぐの目が強引に捉われ視線を合わされた。がぼんやりうなずくと、にやり楽しげに唇をついばまれた。


「おおおおお〜」
 スカートがちらりと持ち上げられて、すーすー外気が入りこむ。同時に股間で歓声がした。
「中蒸してんだけど!むわっとすんだけどー!」
「もぉ…、ばかぁ…」
「パンツ濡れてっけど!どうする?脱ぐか?脱がせてほしい?」
「…ばかみたい」
 まだ穿いてから1時間もしないのに。そんなにすぐに脱がすものをどうしてわざわざ穿かせるんだか。
「それもそーだな。そんじゃ脱がすのやめ」
「ふぇっ…?」

 代わりに思いきり引っ張られた。濡れた布地が股に食い込み、その部分の形が浮き上がった。小ぶりな、けれども厚みのあるひだが縦に二枚。そしてぽっちり膨れた粒と。
 大きく開けた銀さんの口が布ごとすべて包み込んだ。
 くふっと細かくののどが鳴る。外側からは銀さんの唾液で、内側からもあふれる粘液で布地はあっというまにびしょ濡れ。ちゅーっと布を吸われたら、ぽたぽた水分が搾れてしまいそう。
「は…っ、あぁん…、んふっ、んっ…、ん、もぉ…っ…、も、もう、ばかぁ…、銀ちゃんのばかぁ…」
 びくりと大きく腰が跳ねた。身体の中心を貫く感覚、内側へ身が縮むような。
 けれどその感覚をつきつめる間もなく、銀さんは顔を上げてしまった。途中で取り上げられ不満顔のを、今度はうつ伏せに転がした。


 ふたつの身体が密着する。抱きしめられた背中はもちろん、からませた足も、ひざも、腿も。わざわざまくりあげるまでもなく、身体をすりよせあっているうちに制服のスカートは腰までまくれた。力強く押しつけられるもの。熱くて硬い異物感には思わず期待してしまった。
 ごしごしそれをなすりつけるのが銀さんはことのほか気に入ったようだ。熱い吐息が耳にかかった。ふんふん鼻に抜ける声で、首筋がこそばゆくなった。
 下での尻もゆらゆら揺れる。腰をくねらせ、突き上げて銀さんの熱を懸命に煽った。

「ふわ…ぁ、すごぉい…あたってるよう…」
 布団へかたく顔を突っ伏し、それでも足りずに自分の手を噛みしめ、恍惚とする声を押し殺す。
 に応えて銀さんはさらに強くそれをこすりつけてくれた。
 同じく声を低く低く
「なにが当たってんの。ん?言える?」
 乱れた黒髪が小さく動いた。
「銀ちゃんのね…、銀ちゃんのアレが、当たってるの…」
「うん」
 口を布団へつけ内緒話。どうせ誰にも聞こえないからなんでも言える。
「銀ちゃんの、大きいの…、かたぁいの…、はあ…っ、ああんっ、」
「ん…?」
「あたってるよぅ…、のお尻、ぐりぐり…、や…、もう…、…、もう…」
「もう、なに?」
 腰をゆさゆさ突き上げて返事。
「銀さんのちんぽ欲しいってか」
 今度は髪を振るわして返事。
「うら、ちゃんと言え」
 下着とズボンを脱ぎ捨てて、生の一物で撫でられた。

「うんっ、うんっ、ちょーだい。ね、、ちゃんといいこにしたでしょ?銀ちゃんの言うこときいて、へんな服着たでしょ?だから…」
「ヘンな服っておめー」
「ヘンな服だもん…、すーすーしてへんなの。パンツもヘン。こんなちっちゃいの、ぜんぜん、かくせてないし…」
 くすくす愉快そうに笑うと、銀さんはその頼りない下着に手をのばした。が歓喜に震えたのがわかる。

 しかし脱がさない。腰の部分を引っ張り、伸ばして、布と肌の隙間から勃起を突っ込んだ。
「んひっ?!ちょ、なに?なに…?」
 尻の谷間を熱が擦った。自ら分泌した先走りと、を後ろからこすりあげるうち塗り広げられた潤滑液で、次第にスムーズに肉棒は上下した。徐々にずれ落ちてはいるものの、いまのところ窮屈な布の中で。
「あ…、ちょ、もぉぉ…っ、ヘン、こんなの、ヘンだよぅっ…」
 大きな口が開いてしまう。はあはあ息が漏れてしまう。
「あ…っ、は、はやくぅ…、もう、もうっ、いじわるぅ…、ちゃんとして…っ」
 腰をそらせて銀さんの先端を捕まえようとしてしまう。

「ね、ねぇ、もう、いっぱい遊んだでしょ」
「さーどうだかなー」
 けれど「んぐぐ」と仔犬のうなるような音に、銀さんはあっさりじらすのをやめた。
「はいはい遊んだ遊んだ、怒んねーの。しょーがねぇなもぉ…」
 うそうそ。自分もそろそろ我慢がきかなくなってきただけだ。ほんの少しだけ下着をずらしての入り口に先端をあてがった。

 そのまま、ゆっくり、銀さんは中へ入ってきた。
 ずぶりと根っこまで、静かに埋める。
 交わった部分をしっかり見ながら、一度腰を引き、また深く挿れた。

 ゆっくり、ゆっくり、肉が前後する。えぐられるたびがのけぞるが、声はない。敷布をじっと握りしめるだけだ。
「味わってんの?」
 うなずく代わりに握りこぶしが顔を隠した。


 の背を銀さんの身体が覆った。小さな身体を抱きすくめた手はがむしゃらにをなでまわした。つぶれた乳房と、腹の上と、わき腹に下腹もめちゃくちゃに。
 身体ごとつかみ、引き寄せて、何度も腰をうちつけた。
「くはっ…!」
 こらえきれずに声がほとばしる。一度堰を切ると止まらなかった。
「いっ、いい、いっ、んっ、んはっ…、いい、いいよぉっ…!」
 逆に銀さんは耳元で、ぎりぎり聞こえるようにささやく。
「いい?」
「うんっ!んっ、んっ、いいっ…!」
「イクか」
「うん、うん…!い、いく、いくいく、いっちゃう…っ、いっていい?いい?」
「いーよ、ほら、イケっ」
「ああああんっ!」
 最奥を突かれ背が反りかえる。
 恥ずかしいほどの声を垂れ流しに、は頂点へ達し、落ちた。


 同時に銀さんのものが抜け出た。絶頂に痺れきっていたは、熱いしぶきを表面に感じた。
「は…?あ…、なに…?」
 中でよかったのに、わざわざ外へ。
 気だるく下半身が離されて、ぐったりとした重みに襲われた。自分も満足した銀さんがを下敷きにつぶれてしまったのだ。
 けれどその手は丁寧に、に下着を穿かせなおしている。

「う…」
 生温かく濡れた布が気持ち悪い。
 いや、濡れているなんてものじゃない。布地にわざわざぬるい粘液を溜めたような、それをなすりつけられたような…
「これ、もしかして…」
「………」
「ぱんつの中に出しちゃった?」


 ぎゅうぅっ!と激しく抱きしめられて愛情たっぷり頬ずりされた。見えないけれども満面の笑みが想像できてしまいそうだった。
「…た、楽しいの?」
 それも全身でうなずかれた。
「そうなんだ…」
 ならいいけれど。



 おもちゃにはよくわかんない。