銀時の普段着ているシャツを、素肌の上に一枚だけ。自分の部屋の、自分の布団の上だというのに、おかしな格好をさせられたせいかは居心地悪そうだ。黒シャツの中でひざを抱えて窮屈な三角座りをしている。
 布地へ顔をすりつけてしきりに鼻を鳴らすに、銀時がそばで苦笑した。
「ちゃんと洗ってあるっつーの」
「でも銀ちゃんのにおいするもん」
 それがイヤと言うわけではないけど。
 一方銀時は寝間着代わりの甚平姿。といってもこちらも素っ裸に上着を羽織っただけ。すぐにも裸に戻れる態勢だ。紐も結ばず前ははだけて、恥ずかしげもなくさらされた身体をうっかり直視してが赤くなった。


 夜更けといえど人の気配は絶えることのないかぶき町。電気を残らず消した部屋が薄明るいのもいつもどおり。それなのには今夜に限ってどうにもきょときょと落ち着きなく、そのうえなぜか不服そうに、揃えたひざへあごを乗せ、ぷーとくちびるをとがらせていた。

「よっこいしょっと」
 その正面へ手をついて、銀時がぐっと顔を近づける。細められた目は優しくて、けれども奥ではほくそ笑んでいて、いかにもくだらないことを企んでいそうな匂いがした。
「さーてそんじゃァ始めよか」
「なによう。そんなあらたまっちゃってさー…」
 ぷいとふくれっつらを背け、はまとわりつくような熱っぽいその視線から逃げた。
 が、逃げてうろうろ泳いだ末に、結局銀時を見てしまう。

 赤茶けた瞳にきまり悪そうな自分の顔が映り込んでいた。
 つまり銀ちゃんが、の顔だけを、じーっと見つめてくれている。
「………」
 胸をきゅーんと詰まらせたを、笑いながら銀時が口を開いた。
「はい、じゃあ最初の質問でーす」

「…うん」
 小さなため息ひとつとともに、はあきらめて頷いた。


 訊ねるのは銀時、答えるのは
 何を思ったか今夜はいろいろに質問してみたいらしい。

「お前はアレ?銀さんのコトがほんとーに好き?」



「そ、それ?それが最初のしつもんなのっ?それってシメのしつもんなんじゃないの?」
「だーっておめー、良くなってきたら何訊いたってどーせ『うん』しか言わねーじゃん。いいからはい、今の質問のお答えは?」
「えぇぇぇぇ…」

 そうは言っても、そうしてそれを言葉に出せばの顔は勝手にほころんだ。
「…うん。好き」
 銀時も満足げににやり。それ以外の回答などありえないのがわかっていても。

 の隣へにじりよる。肩を抱き寄せ、頬へ口づけた。
 ちゅっと音をさせついばんだあと、ふたつめの質問だ。
「じゃあ銀さんに、ちゅーされんのは好き?」
「大好き」


 銀時の手と、その手がくれるふわふわとした心地よさとにはあっけなく陥落した。胸元から忍び込んできた手にこしょこしょわきの下をくすぐられ、たちまち無邪気に笑い出す。
「うふっ、くふっ、ふふふふっ、あははははっ?!ちょ、やだやだぁ」
 声はあどけなく、けれどほのかに女らしい媚びもにじませ身をよじった。銀時によくわかるように銀時の行為を悦んでみせるのも、少しイヤらしい計算だ。
 それでも息が切れるほど笑って、やがて身体もよーくほぐれた。そこを狙いすましたかのようにぷくぷくの頬へキスをされる。口をつけるだけでは足りず、なめらかな唇がほっぺたの肉をやんわり噛んでいった。


 手のひらは次第に位置を変え、柔らかな丸みの上をすべっていく。していることは同じなのに、くすぐる場所が乳房になっただけで身を硬くしたのが伝わったらしい。
 銀時に訊かれた。
「なに。これはイヤ?」
「ううん」
「だよな、先っぽ勃ってきた。気持ちイイんだ?」
「しっ、知らない…」
 答える声は消え入りそうだった。
 がなろうとしてなったわけじゃない。

 けれど銀時の言う通り、胸のてっぺんにはぽつんと二箇所小さな出っ張りができていて、シャツの表面を突っ張らせている。服の中でそこを押されると、鋭い痺れがぴりぴりと下腹部のその先まで走り抜けた。
「次は?どうする?どうしてほしい?」
 吐息で耳をくすぐりながら甘くささやかれてもは困る。
 そこで銀時が質問を変えた。
「んー、じゃあな。銀さんは、この次どうしたがってると思う?」


 首をかしげてが答えた。
「もみもみしたい…?」
「ぶー。ハズレ」
「じゃあ舐めたいんだ。そうでしょ?」
「どっちから?」
 はたぷんと豊かな胸に自分の小さな手をあてた。
「銀ちゃんて、いつもこっちから、こっちばっかり舐めるんだよ」
「え。そーなの?」
 本人も無意識のうちだったらしい。
「まァしかしもっともっちゃーもっともだな。人には利き手ってモンがあるからな」
「真面目な顔してなにバカ言ってんの?」

 冷ややかな声にんぐぐとたじろぎ、だがすぐ銀時は、それからも、顔を見合わせくすくす笑った。
 笑いが引くと笑みがかわされ、そして銀時の次の質問。
「どうしてほしい?」
「…いっぱい舐めて」
 銀色のくせっ毛が揺れた。こっくりと。



 シャツのファスナーを全開に。露わになった胸の谷間へ銀時がぽよんと顔を埋めた。まずはふもとにちゅうっと吸いつき、それからちゅ、ちゅ、と唇が、丘をゆっくり這い登っていく。
 硬く勃ち上がった桃色の粒をちゅるっと口に含まれた瞬間、がぶるると身体を震わせた。
「んん…っ」
 眉根の寄った困った顔が自分の胸に伏せた銀髪を見下ろす。くしゃくしゃの髪が動くたび、胸から繋がっているかのように身体の違う部分が疼いた。

 たまらず後ろへ手をつくと、くたりと傾いたの身体に銀時がすかさずのしかかってきた。
「あ…、銀ちゃん…あん、」
「んー…」
 乳首を口に含んだまま、うれしそうに頭がぐりぐり揺れた。ちゅぱちゅぱ舌鼓を打ちながらしつこくしゃぶり続ける口は、いつまでも飽きるということを知らない。
「はぁ…、も、もういいよう…もういい…」
 もちろんの頼みなど聞かれないのはいつものことだ。それどころかいっそう音を立てて吸われた。
「きゃんっ…、はふっ、んんっもぉっ…」

 次は反対のふくらみを。やっと離してもらえたのは、どちらの丸みもべたべたのよだれまみれにされたあとだった。
 濡れた突起を今度はこりこりと2本の指でつまみ、つぶしながら、銀時も目のふちを赤くして訊いた。
「今どうなってる?」
「どきどきしてきた…」


 の答えは問いにそぐわなかったようだ。ふんと鼻先で笑われてしまった。
「そんな可愛らしいコトを、この俺が訊いてると思うわけ?」
「お、おもわない…、いえ、思いません…」
 なぜか敬語だ。
「だろ?はい、やりなおし。どうなってる?」

 はしばらくためらってから、正直に状況を告白した。
「熱くて…、湿って…、なんかきもちわるい…」
「気持ち悪い?」
「その…、おしりのほうまで濡れちゃって、べたべた…」
「あぁん?」
 すぐにはわからず怪訝そうに、銀時がの尻を浮かせた。するとそれまで座っていた場所にべったり大きな染みがある。
「おおぉぉぉっ」

 弾む声には小さくなった。そんな恥じらいなど当然銀時はおかまいなし、閉じられていたのひざを無理矢理割った。
 ぱかっと。
「………んっ」
 奥を探るような視線に炙られ、はぁはぁの息が荒くなる。背後についていた両手も銀時に取り上げられてしまった。
「足持ってみな、自分で。できる?」
「………」
 黙ってうなずき、はひざの下へ手を入れた。ついつい閉じてしまいたがる脚を自分自身で開いてみせる。薄暗がりだからこそできる、とてつもなく恥ずかしい格好だ。


 足の間へ銀時がやってきた。いまさら珍しくもないだろうに、興味津々の浮かれた目は、その場所をじっくりのぞき込んだ。
「おおおすげ!ホントだ。漏らしたの?なに?おもらししたの?」
「ば、ばば、ばかっ、違うよっ、おしっこじゃないようっ」
「えー?だってだらだら漏れてんじゃん、布団にでっかい地図描いてんじゃん」
 言われなくてもわかることを、ことさら下品に言って聞かせるのが憎い。
「じゃーなに?のアソコからまだまだ出てくるこれなに?ん?」
「だから、それは…」
「ん?」

 じーっと目の中を見つめられただけ。だがこれもひとつの問いには違いない。
 問いには必ず答えるのが今日の趣向のはずなのだが。
「…そ、それは…アレ…」
「アレじゃわかんね」
「それは、の…」
 ごくりと唾を飲むと同時に、下の口もひくりと息をした。その拍子にたっぷり吐き出された汁が陰部を伝い尻を伝い、布団にまた大きなしみを作った。

「あーあーあーあー」
「や…っ、やだあぁぁっ、違う、違うの、これは、違うからぁ」
「しょーがねぇなもォ」
 これ以上なく愉しげに、銀時の指がいきなり2本も、のだらしない口に栓をした。
「は、ひっ…ぃんっっ…?!」


 刺し挿れられた指は乱暴に、中からとろみをかき出した。鍵のように曲げた先端が、ついでのように通路の天井を引っ掻いていく。
「はっあ、だめ、だめ、そこ、だめぇ…っ」 
「なぁ、何考えてんの?だめってわりにびしょびしょなんだけど」
「…は、…あ、あんっ…」
「ほら、答えんの。何考えてんの?」
 まともな考えがあるわけがない。頭のほとんどを占めている単純な言葉を出すのがやっとだ。
「きもちいい、とか、きもちいいとか…」
「んなこた言われなくてもわかるよ。指きっついもん。食いちぎられそうだもん」
 銀時の指を奥へ奥へと飲み込もうとしているもの。


 なのにあっさり2本とも抜かれた。
「やあぁぁぁっ?!銀ちゃんん?!」
 物足りないもっとちょうだいと、あられもなく全身で訴えるに、銀時は笑いをこらえられない。
「指もっと?」
 おかっぱ頭も今はぼさぼさ。髪を振り乱して首が振られる。
「それともぺろぺろしてやろーか?」
 勝るとも劣らぬ勢いで、やはり激しく頭が振れた。
「なによどっち?ちゃんと答えねーとしてやんないよ。は指と舌、どっちしてほしいの」
「うぅぅぅぅ…」


 そろそろ朦朧としだした頭では疑心暗鬼にかられていた。どちらかひとつを答えれば、それ「しか」してもらえなくなりそう。銀時の好みそうな意地悪だ。
 いつまでも答えられずにいると、中心の粒をつつかれ急かされた。
「やっん!だめ、それ、だめっ…」
「はい時間切れ。さあどっち?」
 小さくても真っ赤に勃起した芯が、なおもなぶられ続けている。

「んっ、ん、んんっ…うう…じゅ、順番…」
「は?」
「じゅんばんに、どっちも、どっちもして」
「ぷははっ!」
「わっ、笑っちゃイヤ!正直にこたえたんだよ、だから、だから銀ちゃん、ね?」

 天パを引き寄せ足で挟みつける。銀時はいまだ笑い混じりだ。
「待て待てこらこら、窒息しちまう」
「しらない、ばかっ…!ねー早く、早く、」
「わかったわかった。はい、いいこいいこ」

 大きな身体が股間に陣取った。銀時を捕まえ閉じた脚が、わしづかまれ、さらにひろげられ、中心を濡れた舌が這った。
「くふんっ…!」
 ぺろりと舌の全面を使い、銀時はまずはその場所のすべてをあまさず舐めあげた。
 そして花弁を口に含む。ぽってり厚みのあるそれは、粘液にまみれて表面がどろどろ。元のかたちが蕩けて崩れて熟しすぎた果物のようだった。

 じゅるっ。
「んっ…もっとぉ…」
 じゅるじゅる。
「や、やめちゃだめ」
 銀時のさせる水音とで立派に会話が成り立つのが不思議。


 いつしかはまた手を付いて、銀時がやりやすいように、身体を反らせ腰を浮かしていた。ときどき自分のはしたなさに自分自身でくらくらした。
「う…、だめ?こんなのだめ?銀ちゃん…」
「質問すんのは銀さんな」
 舐めやすいよう差し出されたそこへ、遠慮なく銀時がしゃぶりつく。
「ぁん」
「うめ」
 中から中から際限なくあふれる蜜をすすりあげた。ずるずる吸って口に溜めたものをごくりと飲み込み喉を潤した。を気持ちよくしてやるより、自分が味わうのが先だ。
 けれど自分は愉しむくせに、には没頭するのを許さない。
「ん…、ん、ふっ…、は…、はぁっ…、はぁんっ…」
「お前は?」
「んあ…?」
「なぁどんな感じ?今どんな感じ?」
「あー…」

 ぽかんと天井へ向けられて、開きっぱなしの口からはよだれの垂れたしまりのない顔を、強引にこちらへ引きずり戻す。
「呆けてんじゃないよ、ほら、答えんの」
「ふぁ」
「なぁどんな感じ?説明してみ」
「あー…、うん…、んーとぉ……」
 おざなりに相槌を返しただけでふたたびとろんとしようとするので、これでもかと激しく責め立ててやった。
「ひぁっ!あっ、ああっ、あん、う、ううう、うんっ、あっ、いっ…あ、あそこ、あそこ、じんじんするようっ…!」
「ほかは?」
「いっぱい、いっぱい、とろとろ…出てるの、出てるのわかるの、あっ…今も…」
 言った通りにどろりととろみの濃い液がこぼれた。舐めてやるのも追いつかなくて銀時の唇はの味で濡れた。

「あーあ、恥ずかし。恥ずかしーの」
「恥ずかしいよう…。こんなの、こんなの知られたら、外歩けないよう…」
「全くだ。男にアソコ舐められてびしょびしょにしてるだなんてなァ?」
「おかしい?やっぱり、どっかおかしい…?」
「ああ、だーいぶオカシイわお前」

 けれど言われてしょんぼりと顔を覆ってしまうひまもなかった。
「きゃぅんっ!?!」
 腰がびょこん!と跳ね上がる。
 銀時の指がひと息に、を深々と突き刺していた。


「おら、もっとオカシイ格好してみせな」
「やっ、ああんっ、でも、へんっ、そんなの、おかしーからぁっ…!」
「いーんだよ、おめーはオカシイの。それでいーの」
 うつぶせにをひっくり返し、高々と尻を突き出させる。手のひらごと白い尻へ叩きつけるように、銀時の指は奥を穿った。
 じゅぷじゅぷ、そしてびたびたとをぶつ音がする。飛沫が銀時の手首まで濡らす。壊しそうなほど激しく指が出し挿れされる。
「やっ!あぃっ!いっ!ひんっ!あっ!あああんっ!」
 自分の嬌声に気がついたのかが枕で口をふさぐが、声を殺すのを銀時は許さない。空いた手がすぐさま髪を引っ張った。
「ああああんっ!や、聞こえちゃう、聞こえちゃうもん、やめてぇっ…」
「今さらお前何言ってんの」


「どう?」
「きもちい、き、きもちいいの」
「誰に気持ちよくしてもらってんの?」
「んふっ、銀、銀ちゃん、銀ちゃん、銀ちゃん、」
「あーあ。そんなにケツ振ってもう」
「ちが、揺れちゃうの…っ、ん、んんっ、」
 中をかき回され痙攣し、奥を引っかかれては背がのけぞる。自分の身体の反応はほとんど意思と切り離されている。

「なぁどうよ?ほんとはイヤなんじゃねーの?こんなコトさせられんのヤなんじゃねーの?」
「ん、んんっ、ううんっ…」
 無茶苦茶に髪を振り乱しながら、の頭は初めて横に振れた。
「さ、させられて、じゃないもん…」
 ぶるぶるとより一層激しく。
が、してるの…。が、好きで、されたくて、それで、銀ちゃんに、してもらってるのぉ…っ」



 2本の指の抜けた場所から、かき回されて白濁した粘っこいものが糸をひいた。
 布団へ潰れた気だるい身体を、はかろうじて残った力でどうにか仰向けにひっくり返した。ぐったり投げ出された身体の中で、目だけが切なく輝いて銀時を待ちわびている。
 銀時自身も硬くそそり立ち、の中へ包まれたがっていた。足の間へ性急に割り込むと、銀時はとろけた入り口に笠の張った勃起の先端を添えた。
 それだけではうっとりとして、早く早くと目で誘う。

 いまではぱっくり半開きになった口に、怒張がみりみりとねじこまれた。
 強ばり、閉じようとするひざを、もどかしそうに身体でこじ開け、銀時は一気に奥を貫いた。
「ん…うっ…」
 低いうめき声も、それも銀時のもの。の声はない。
 はただくーっと喉を反らして音もなく息を吐くばかりだ。


 ふと銀時は思い出した。少しは焦らしてやるはずだったのに、うっかり質問するのを忘れた。
「まいっかァ…」
 身体ごとの上へ倒れて力いっぱい抱きしめてやる。
 人のことはさんざ焦らして遊ぶくせに、自分が差し迫るととたんにこうだ。




「はぁっ!ああんっ、あ、あ、ぎ、ぎん、銀ちゃ…んんっ」
 薄暗く狭い部屋の真ん中で筋張った尻が揺れていた。前後する腰にの足が必死でからみついていた。みしみし畳が軋むたび、の甲高い声が鳴いた。
 我を失っているのはだけじゃない。銀時ともあろうものが口をきくのも忘れて、自分を包む粘膜と圧迫感をひたすら味わっている。

 互いに唾液をだらだらこぼした慎みのないキスをした。
 両腕で、両足で、そして内側で銀時を強く抱きしめてが訊いた。
「ね、銀ちゃんは?銀ちゃんはきもちいい?これ好き?」
「質問すんのは、銀さんな」
「じゃあ、きいて…、いいよ、、なんだって、答えるようっ…」
「ばーかおめぇ…」
 いまさら何を聞いたって、「うん」としか答えられないくせに。


 それがわかっているくせに。
 逆に今ならどんないかがわしい淫語も言わせ放題だろうに。
 何かをあらためて訊こうとすれば、これを訊かずにはいられないのだった。

「なァお前はさぁ、銀さんのこと…」





好き好き大好きでFA