に注がれる視線を感じる。上からは銀ちゃん、横からもうふたり。
 でも、だから特別がんばってしまったなんてことはない。生温かく苦い粘液をひといきに飲み干してしまうのも、萎えた銀ちゃんをお口できれいにしてあげるのも、いつだってやっていることだ。
 両手で大切に包み込み、はちゅくちゅく、ちゅくちゅくと、くびれの中まで舐めつくした。苦味の残る先の割れ目は、舌先でそっとかきだすようにした。
 このままずっとしゃぶっていてもいい。
 がそう思っているうちに。
「あれ…?」
「あれ?とか言うな」
 手の中のものはまたすぐに硬さと熱を取り戻してきた。

「お酒飲んだんじゃなかったの?」
 べろんべろんに酔っ払ったときはなおさら、卑猥な趣向を企てる気持ちに身体のほうがついてこなくて、途中で寝てしまうことだってあるのに。
「飲みましたともぉ?真面目なおねーさんもビッチになる、すんげぇ精のつくお酒っ」
 へへへと銀ちゃんは声をあげて笑った。どうもどーぴんぐを決めてるらしい。たるみがちだった表面も、一段と張りを増してきた。
「………」
 そのタイミングでが顔を上げた意味。
 銀ちゃんにはちゃんと通じていた。


「これ欲しい?」
「ほしい」
「ん。おいで」
「でも…」
「いいから、あとは、お前ん中ででっかくして」
 肩をつかんで引き寄せられる。
 にやりと笑われ、またテストだ。
「自分でできるよな?」
「うん、できる」
 こちらもまた満点の回答。頼りなさを残す棒に手を添え、念入りに位置を合わせていると、それだけで媚びた声が漏れた。
「んっ…」

 ゆっくりと体を沈めていく。銀ちゃんを中に迎え入れる。身体を浮かせて落とすのを、注意深く何度も繰り返す。そのうち「状態」は安定して、腰をひねっても抜けなくなった。
 銀ちゃんの胸に手をついて、さんが今していたように、は身体を動かしはじめた。
「んふ、も。も自分でするね…」
 うっかり、失言。ずっと見ていたのがバレたかもしれない。
 …まあいいか。


 銀ちゃんの指がのほっぺたをいとおしげに撫でた。
「みんな見てんぞ」
「うん…」
「うぉ、すげぇ」
 ひくひくと密な間隔で、は中のものを締め付けている。三人分の欲情にねっとりからめとられるようで、それがの肌を粟立てる。
「お前ひとりだけしらふのくせに、なんでいちばん気持ちよくなってんの。頭ん中エロすぎんじゃねーの?」
 銀ちゃんの声に撫でられるだけで、内壁は収縮を繰り返す。すぐにも気の遠くなりそうな、押し寄せる波には逆らおうともしない。これではなにを言われても仕方がないのかもしれない。二度も達してこわばるそこをこじ開けられるのすらきもちいい。

 くい、と銀ちゃんが軽くあごをあげた。求められるまま、は身体を倒し、口づけた。うれしい。精液を飲んだばかりの口にキスしてもらえるなんて。
 ふわふわのくせっ毛ごと抱きかかえ、あむあむと互いの舌をむさぼる。何度か角度を変えるたび、視界の端にちらちらと隣のふたりの姿が見えた。


 たちと同じ格好だった。さんが先生の上にいる。両手がでたらめに顔をまさぐり、やがて先生に目隠しをした。
「見ないで。他の人なんか見ないで」
「子供じゃないか」
「だめ。女です。見てはいや」
 そうして先生も面食らうほど、激しく彼の唇を奪った。

 「真面目なおねーさんもびっちになる…」
 語尾に間違いなく「はーと」のついた、銀ちゃんの言葉が思い出された。どうももう一名、どーぴんぐの疑いがある。

 思ったとおり、銀ちゃんはにやにやと彼女の変貌を眺めている。視線にむりやり割り込んで銀ちゃんと目を合わせると、頬を思いきりつねってやった。
「いで?いで?いででで?」
「だめ、銀ちゃんは、を見てなきゃだめ」
「こらこらはずみで漏れたらどーする。つーかお前も見てんじゃん」
はいいの。銀ちゃんはだめ。のいくとこちゃんと見てて」
 たちまちやにさがるのがイヤラシイ。
「おっ?またイクの。もう終わり?」
「お、終わりじゃないもん。もっといっぱい、何回でもするんだもん…」
 ぷーととがらせたの唇を今度は銀ちゃんがお返しにつまんだ。今にも笑い出しそうな顔だ。
「なんで妬くのかね、いっつもいつも。おめーほど可愛がられてる子はいねーよ?ほらあっち見てみな。ちょこっと挿入してピコピコ振って、てめぇだけイったらハイおしまい、だよ」
「ふざけるな」
 こちらを見もせず、けれど律儀に先生が応えた。


 あちらでは先生がまた主導権を取り戻していて、四つん這いにさせたさんに背後から覆いかぶさっていた。うなじにいくつも赤い痕が散らされてしまっているのを彼女は気づいているだろうか。
 重力のままこぼれる乳房がすくい上げられ、揉みしだかれ、さんも応えて無意識に、お尻を揺らし押しつけていた。何が触れているかは言うまでもない。
「ずいぶん積極的なんだな」
 ほめられているのにどうしてさんはあんないたたまれない顔をするんだろう。

「きゃっ?やっ、な、なに?なんですか…」
 先生がさんを抱いて身体を起こした。小さな子に用を足させるように、ひざに入れた手で身体を持ち上げる。自分はどっかりあぐらをかいて、その中に彼女を座らせた。足は大きく開かせたままだ。
「こうすればもっとよく見えるだろう?」

 どんなに月が明るくとも、日の光ほどは闇を晴らせない。ふたりの姿は影になり、先生の手がその中心でうごめいていることしかわからない。それでも彼女は我を失い、必死で手足をばたつかせた。
「いやっ、やめて、いや、いやっ…」
 せめて足だけ閉じようとしても、先生はそれを許さなかった。
「おねがい、やめて、いや、おねがいです」
「そうかな。指がちぎられそうだよ。そんなに気に入ったのならもっと見てもらうといい」
「いやっ…」
「見たまえ下品な目だ。を見て興奮しているぞ」



「…勝手に人をダシに使うんじゃねーっの。倦怠期か。倦怠期なのかあちらさんは」
 ふくれっつらでひとりごちて、ついでに銀ちゃんはに当たった。
「他人の言葉責めに感じてんじゃねーの淫乱娘!」
「あいっ!痛い!痛い!痛い!ごめっ…」
 浴衣ごしとはいえ乳首をきつく摘まみ潰されて涙が出そう。ところがのその顔はむしろ笑いをこらえている。
 銀ちゃんがに妬いてくれている。


 視界がぐるんと半回転した。つながったまま、今度はが下へ寝かされた。
 それから乱れたの浴衣をきれいに着せなおしてくれる。はじめに着ていたより几帳面に、衿もぴったり奥まで合わせた。
 そして銀ちゃんは鼻息も荒く
「これでヨシ!」
「?」
「銀さんは、を誰にも見せる気ねーし!」

「だからな、これも…」
「ひゃっ?」
 あごを引き、そこをじっくり見られた。
「銀さんだけが見ていいの」



 胸を静かに弾ませていると広げたひざを持ち上げられて、肩につくほど折りたたまれた。今度は銀ちゃんが銀ちゃんのペースで、ゆっくりと抜き差しし始める。曲げた身体を真上から突き落とすように貫かれ、内臓も刺されてしまう気がした。不自由な姿勢は息をするのもやっと、銀ちゃんに何もかも委ねるしかない。
 がしていたのと同じように、銀ちゃんが声を殺し、息を逃がす。眉は苦しげに寄せられて、閉じた目の中で快感を転がすようだった。
「ざーんねん。暗くてがちーとも見えねえ。そこ、今はそれ、どうなってんの?」
 やがてうっすら目が開く。
 ああまたそーやってを試すの。

 銀ちゃんは腰を引き気味に溜めて、けれどもそれはを焦らして意地悪をする為じゃない。模範解答するを、たっぷり褒めてくれるつもりだ。
 忠実に、誠実な描写をはこころがけた。
「ん…、ぎんちゃんのが、の…ね、あんっ…、のなか…いーっぱい…かきまわして…ぐちゅぐちゅ…」
「きもちいい?」
「ひゅん、きもちいい…銀ちゃんとするの、だぁいすきぃ…」
 ふぐっ、と低いうめき声が出るくらい、ご褒美の挿入は深かった。



「…どうした。すごいじゃないか」
「だ、だって、あの子が…」


「おい、おねーさんは、おめーの声がエロすぎるってよ」
 ずり上がると銀ちゃんのおかげで、布団はしわだらけになっていた。
「人が見てんのによくもこんだけあんあんよがれるなァってさ。銀さんも思うわ。恥ずかしくねーの?」
「んっ、は、はずかし…」
「うそつけ」
 たてつづけに行き止まりを突かれる。
「ああんっ!うそっ!、へーきっ!いいのっ!はずかしくなんか…」
「へーえ?そう?恥ずかしくねーんだ。へーぇええ?
 あーあ、どうすんの。これもう明日にゃ知れ渡ってるわ。あすこの娘はとんだ淫乱で、人が見ててもへーきでちんぽくわえこむってな。店に押し寄せて来るんじゃね?俺にも見せてって来るんじゃね?」
「はっ…、見せない、やだ、やだ、見せない、見せない」
「見せてんじゃん。ほらっ」
 あごをつかまれ、さんたちを向かされた。
「ゃんっ!銀ちゃんがしろって言った、からぁっ…!銀ちゃんが、しろって言ったら、するのっ」
 細かく刻まれる振動がを次第に追い詰めていく。

「あっ…そこぉっだめっ…そこっ、こすっちゃだめぇ…」
「なんで?なんでダメ?」
「それ、だめ、あ、だめ、だめ、それ、されたら、、いっ…くふっ、いっ、いっちゃうよう…」
「イキゃあいーじゃん」
「だって、だって、銀ちゃん、笑う…が、えっちだって、笑うもん…」
「おう。笑ってやっから、いいからイきな」
「やっ!やだ、やだ、やだっ」
「いいんだよ」

 ころりとそこで声色が変わった。
 ご機嫌とりの猫なで声に、苦もなく籠絡されるバカな
は銀ちゃんと仲良しなんだろ?」
「………うん」


「うん、うんっ、なかよし。いちばん、なかよし…」
「だろぉ?だからなんべんでもイクんだろ?」
「う、うん…」
「仲のイイとこ見せてやんな。ほら、あそこのおねーさんに見せてやって」
「うぅ…」
「な?ほら、ほら、ほらっ!」
「あっ!ああんっ!あんっ!うん、うんっ、うんっ!わ、わかっ、わかったぁっ、見せるっ、見せるっ!」
 息つく間もなく突き上げられる。ぐんと腰が浮き、弓なりに反った。頭はほとんど逆さに返り、枕の向こうが見えるくらい。
 やっぱり違う。指とはまるで。
 むちゃくちゃに銀ちゃんを抱きしめて、背中にぐいぐい爪を立てた。やがて頂点にも気付かないくらい、は遠くへさらわれた。





 うんと伸びをした猫のような、反らせた腰をつかまえられて、は後ろから犯されていた。何度か達して弱ったところを銀ちゃんの好きにされた結果がこれ。
 声はいつしかかれはてて、かすれた息が漏れるばかりだ。まるでお尻をぶつように、銀ちゃんの下腹部が叩きつけられる。そのたびいまにも途切れそうな意識が無理矢理な刺激で起こされた。
 気付けば布団は斜めにずれて、そのうえは身体の半分も敷布からはみだしてしまっている。
 あいだに布団ひとつ分の距離は少なくとも確保されていたはずなのに、見れば思いのほかさんたちは近いところで抱き合っていた。

 もう事を終えて今ではまったり。端を整えた寝具の中に気だるい身体を横たえている。互いに触れあうのも口づけるのも、じゃれあうようなのどかさだ。ただ、時々の嬌態にはひそかな視線が送られていた。
 とっさに我が身をかえりみてみると髪はぼさぼさ、顔はくしゃくしゃ。開きっぱなしの口からはよだれがだらだら布団を濡らしている。いくらなんでも恥ずかしくなって顔を突っ伏したはいいが、すぐさま銀ちゃんに髪を引っ張られた。
「隠すの禁止」
「はっ…、か、はっ…はひっ…!」
 のつま先がせわしなく、絶頂の近さを訴えるようにぶちぶち畳を引っかいていた。





    の知らないその後ろでは、3本指の立った手を銀時が自慢げに振ってみせている。
    伊東もには知れないように、こっそりそれを盗み見た。
    勝ち誇った目に伊東のこめかみが、ぴくぴく癇症に引きつって、いよいよ銀時の鼻もふくらむ。
    が、やがて伊東の仏頂面は意味ありげな笑みにとってかわられた。





「えっ?そんな…」
「僕がするのは許さないだろう?」
「あ、あたりまえです」
「そこの男も許すまい」
「でも…」
「ほんのいたずらだよ」

 口を開けたままの惚けた顔で、は機械的に声のするほうを見た。先生もあんな顔をするのか。自分たちしかルールを知らない謎のゲームにムキになる男子。
 きっとさんは妙に子供じみたその顔が可愛くて仕方なかったのだ。いたずらとやらの共犯の誘いに案外かんたんにうなずいた。

 おずおずとそばへやってくる。ためらいがちな手が伸びる。
 さんはの無防備に伸びきったわき腹をつんっ、とつついた。
「んひゃっ?!!」
「ぅおっっっ?!!」

 その不意打ちがとどめになった。
「ああっ!やっ!やっ!あっ、ああっ、あっ…!」
 もうあと一歩の線上で綱渡りをしていたの背筋を、一直線に電流が射抜いた。身体はびくびく派手にえびぞり、布団に落ちてもまだ数度のたうった。
 お尻の上に熱い液体がぼたぼたぼたっとこぼされる。銀ちゃんまでがはずみで強制終了させられてしまったようだ。本人としては不本意きわまりないだろう結末。もう少し遊んでいたそうだったのに。
 未練たらしくに抱きつき、くうぅぅぅぅぅ…と甘える声の情けないこと。


 先生は肩を震わせていた。きょとんとするさんを抱き寄せて、頭から布団をかぶってしまう。
 やがてこんもり山になった布団から、くぐもった声がくすくすくすくす…。もれ聞こえるのは、含み笑い。
 現実味に欠ける光景だった。だってあの真面目な先生とさんが?


 そうか、これは夢。夢ということか。
 それはとってもいい考えだ。












 屯所からはやや距離があるが、今ではこれも通い慣れた道。「繁華街」には少し足りない、けれども十分派手な夜の街をはなじみの銭湯へ向かっていた。
 珍しいことにまだ宵の口。予定より早く仕事から解放されるなど滅多にないことだ。時間が違えば見慣れた通りもどこか常とは違って見えて、初めて目にする小間物屋などをついつい冷やかし、そぞろ歩く。
 そんなの背を幼い声が呼び止めた。
「あはっ、こんばんわあ!」

 足を止めると見知った顔が。白い浴衣のだった。
 手にしているのは見慣れた巾着袋ではなく、大きなサイズのビニールトート。しかしそれもうさぎ柄とは徹底している。
 下駄をからから追いついて、歩調を合わせ隣に並ぶと、の持つ支度に気づいた。
「もしかして今からお風呂ですか?わあ、きぐう。わたしもですよう」
「あ、ええ、あの、じゃあ、ご、ご一緒に…」
 どうにか返事はしたものの、とても視線など合わせられずには慌てて目をそらした。心臓はどきどき飛び跳ねるようで、顔が火照るのも止められない。
 は不審に思っただろうか。


 数日前、外泊先ではおかしな夢を見た。
 彼女と銀時との行為を隣に見ながら抱かれる夢。
 …なんて破廉恥な。
 翌朝起きても部屋にはもちろん伊東としかいなかった。

 まさか隣を歩く女がそんなはしたない妄想を繰り広げているとは夢にも思うまい。首をかしげるのまなざしが清らかすぎてには痛い。
 その宿を薦めてくれたのがで、食事どきには銀時にまで遭遇したから、おおかたそれが頭の中で安易に結びついたのだろう。
さんもあそこのお風呂屋さんだったんですねぇ」
「えっ?え、ええ」
 の声には我に返った。

「あ、あの、さんはいつもこの時間に?」
「はい?」
「お風呂で会うのは、初めてだから…」
「ああ、最近はわたし万事屋さんでお風呂を借りることが多いから…かな?
 嫁入り前の娘なのに、男の一人暮らしする家でお風呂に入ってくなんて外聞が悪いって、昔は厳しかったんですけど、最近は神楽ちゃんもいるからぐだぐだで…あはは」
「まあ」
 少し話せば気持ちもほぐれる。こわばっていた顔もゆるみ、やっと自然に笑えたところでの手提げがぶるると震えた。


 に断り確認すると、やはり伊東からのメールを報せる音だった。
 冷やかされるかと身構えたが、は知らぬ顔で歩いている。ほっと安心したような逆に拍子抜けしたような。
 ふたつの気持ちをないまぜにしつつひとまず携帯をしまおうとして、はふとその中に謎の発信履歴を見つけた。
「?」

 結果として、この多機能な精密機械は伊東との専用通信機だ。それ以外の番号が履歴に残る理由がない。
 何の気なしにリダイアルすると、ほとんど同時にの携帯が鳴りだした。
「あはははー、すごいタイミングですねえ」
 はじめはそうして愉快そうに携帯を手にしただったが、しばらくすると眉をひそめ、やがて不自然な笑顔を浮かべてだらだら汗を流し始めた。

 の携帯には誰も出ない。の携帯の音は止まない。も電話に出ようとはせず、虚ろに笑うだけだった。
「あはははっ!あはっ!あはははは…。へんなの?な、なにこれ。なんなんでしょうねー?」



 さらにばったり。山崎退が、の行く手に飛び出してきた。まるで彼女がここをこの時間に通るのを待っていたかのように。
「や、やあちゃんこれからお風呂?よかったら送っていこうか。夜道は危な…」
 だが、どういうことか山崎も、の隣にを見るなり愕然と言葉を失った。

 地味な顔面の地味な肌が、見る間に赤く染まっていく。桃色桜色なんていうほのかな色では止まらない。カラー印刷に使われる三原色、マゼンタ百パーセントの赤。
「や、ややや、やあ、ちゃんも、ふたり、おそろっ、お、おそろいで…」
 同じく真紅の液体が鼻の穴からつつーっと垂れた。
 と、思うまもなく
「ぶぶーっ!」

 虚空へ豪快に血しぶきが舞った。


「ど、どうしたの?大丈夫ですか?山崎さん!」
 慌てて駆け寄ろうとしただが、強い力に止められた。振り向くとが恐ろしい顔での手首をつかんでいる。
 その顔色は山崎にも負けない真っ赤っ赤。
「あの…、さん…?」
 おだんご屋さんの呼び込みで日頃鍛えたよく通る声が、ふたつみっつは向こうの町までとどろきわたる音で叫んだ。

「この…へんたいっっっ!!」

「のぞき魔っ!でばがめっ!えろすとーかーっ!!」
「へっ、へんたいって、ちが、俺はただ、攘夷志士の会合を…」
「いやああああっ!こっち来ないでっ!これ以上見んなぁぁぁぁっ!銀ちゃん!銀ちゃん助けてぇぇぇぇぇぇぇっ!!」



「………?」
 ひとりおいてけぼりのは、わけもわからず立ち尽くしていたが。
 やがて本当にどこからともなく銀時が来たのは驚きだった。





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 かんさつ日記 おしまい