白木の下駄を高らかに鳴らし、日課の銭湯から帰ってくるは見るからに浮き足だっていた。
 足にも増して頭はふわふわ。もちろん江戸っ子ごのみの熱い湯にのぼせたというわけではない。
 ではなくて、これから帰る自分の部屋に、何が待っているのか楽しみで楽しみで。


 今日銀時は、の営むだんご屋へ店じまい近くにやってきた。いつもするように一番奥まった隅の席で、座るやら寝そべるやらどっちつかずにだらだら。ただしこれには用心棒という大義名分がちゃんとある。
 そうして閉店時間を迎え、銀時がだらしなくくつろぐ場所を店から奥の部屋へ変えているうちに、はせっせと後片付け。椅子にだらりから畳にごろりと銀時が姿勢を変えているうちに食事の支度を整えて、ふたり差し向かいの夕食をとった。
 すると食事を終えたとたん、不自然に追い出されてしまったのだ。
 「あぁもういいから。後かたづけなら俺がやっとくから。おめーはさっさと風呂でも行ってきな」
 その気になれば上手に嘘をつくことなどわけもないはずの銀時だから、そのわざとらしさはつまりに察しろということだ。何がしかの期待をしておけということだ。
 おそらくがいない間に「なにか」の準備をしてくれるのだ。

 プレゼントを用意してくれるのかな。それとも食後のデザートにお菓子でも作ってくれてるのかな。
 想像の羽根をひろげている間にもう家の前。街灯の明かりも控えめな路地裏へ入り勝手口へ回り、は木戸を開けた。
「ただいまぁ!」



「おかえり」
 一目見ただけで何もかも把握できてしまう四畳半だ。予想よりずいぶん声が険しい…そうが思った時にはもう、部屋の真ん中に鎮座するモノに目は釘付けにされていた。

 の視線を捉えて離さないのは、真面目くさった顔をして正座で迎えてくれた銀時だ。
 ただし着物も下着もすべて脱ぎ捨て、代わりにたくましい全身を真っ赤なリボンがぐるぐる覆っている。
 ひざから、腰から、胸から、腕。そして首の後ろでリボンはふんわりちょうちょ結びにされていた。
「…あー、なんだ。今日はホワイトデーってヤツなんだろ」
 ごほんと声を整えて銀時の言ったひとことが、を素通りしたのも無理はない。

 『プレゼントはワタシ♪』
 いや、『オレ♪』か。

 これは想像もしていなかったぁぁ…!







 本能的に後ずさる足を、銀時は見逃さず機先を制した。
「おい逃げんなよ?逃げたらこのカッコで街中追い掛け回してやるからな!」
「ごめんなさい!」
 一瞬で逃走をあきらめる。けれど壁際へ背中を張りつけ…つまり少しでも距離を取ろうとするが銀時はえらく不服そうだった。
「なにその態度っ?!いつもおめーにゃ世話になってるからだな、銀さんなりに精一杯のプレゼントやるって言ってんのに!なにこの仕打ち!」
 全裸にリボンだけをまとったむくつけき男が、へずりずりとにじり寄ってくる。
「きぃぃぃやあぁぁぁぁ!お願い食べないでぇぇ!」
「食うか!」
 自分で巻くには限界もあったのだろう、よく見ればリボンはあるところではたるみ、ゆるみ、ねじれてぐちゃぐちゃ。手抜きをされたミイラのようなもので、銀時を完璧に包みきってはいない。
 ところどころのぞく白い素肌は、本来淫靡な光景であるはずだ。
 扇情的なリボンからのぞくのが女性の身体であったなら。
「は?!銀さんはうれしーよ?おめーがこんなカッコで待ってて『プレゼントはワ・タ・シ』なんて言ってくれたら銀さんもうビンビンだよ!?」
「そ、それはそうかもしれないけど…」
 だとしたら、男の肉体そのものにそういう意味での価値などないのだ。
「んだとコラ!」



 けれど冷静になってみれば、気持ちはうれしくなくもなかった。少なくともに何かくれようという銀時の気持ちは本物だ。その思いがこんな馬鹿げた形に結実する、それすら可愛く見えるのは、の目がくらんでいるからだろうか。
 そのうち異様な姿にも慣れて、は銀時のそばへ腰を下ろした。
「でもねー」
 浮かぶのはなぜか苦笑い。
「なに、文句あんの。銀さんのカラダが不満だっつーの?」
「そうじゃないけど」
 こんな時間にその格好。とくればプレゼントと言われても、使い道は限られてくる。結局が銀時においしくいただかれるだけじゃないのか。それではどちらがプレゼントかわからない。
 銀時自身をプレゼントとするなら、例えば日の高いうちに外でデートをしてくれるなり、いくらでもやり方があるだろうに。そうすればも自慢の彼氏を見せびらかして歩けたのに。

「ううん。でも、うれしいよ。銀ちゃんがホワイトデーのお礼なんて俗なことしてくれるんだもん。ほんとは今すっごく恥ずかしいでしょ〜?」
 イタズラっぽく笑ってみせると銀時の顔がしかめられた。
「おめーは何様だ」
様」
「お?そーいうプレイがご所望ってか?」
「ほら、すぐそっちに持っていくぅ」
 くすくす笑いあう声に、似合わないくしゃみの音が混じった。ひどく可愛らしく小さく「くちゅんっ!」
「いけない。早くなんか羽織りなよ。その格好じゃまだ寒いでしょ。銀ちゃんが風邪ひいちゃったらやだ」
 慌てて薄着の腕をさすり、それからは銀時の頬をいとおしげに撫でた。
「ありがと銀ちゃん。うれしい」
 はにかみながらも素直な礼に銀時の顔もやにさがり、部屋はほんわか優しく暖かな空気に満ちた。
「とりあえずリボン解いてくれるか」
「うん」
 銀時がぺこりとこうべを垂れた。その頭を抱きしめるようにはうなじへ手を回し、ちょうちょ結びをほどきはじめた。



「あれ?」
 ところがこれが思うようにいかない。見た目よりずっと凝った結い方がしてあったのか、普通のちょうちょ結びのように、端を引いてもほどけなかった。
「ん?なにこれどうなってんの?」
「ちょ、違うってお前そこじゃねぇって」
「待って待って手が届かない…」
「ぶきっちょだなもぉぉ」
 銀時が焦れて手を出した。しかしそのせいでリボンの一端がの毛先にからまってしまった。
「やん、やだ!」
「あーもぉお前何やってんの」
「痛い痛い痛い!待って動かないで髪ひっつれて…」
「ちょっと貸してみ」
「あん、だめ!そしたら反対側が…」

 銀時の巻いていたリボンは長い一本ではなくて、かなり適当に何本もを巻きつけてあったらしい。どれか一本が弛んでも、それが別の一本を引っ張り銀時の身体に食い込んでしまう…という具合にそれぞれは複雑に干渉しあっている。
「いででででで!それ違う待て待て!」
「ご、ごめ…あっ!わかったちょっとまって」
 大きくたるんだリボンの隙間には片手をくぐらせた。その向こうになんとかほぐせそうな糸口を見つけたからだったのだが。
 似たようなことを銀時も考えたのだろう。身体の方を動かして、もつれた紐をほどこうと。
 しかし比較的自由のきく足をの向こうへ伸ばしたはいいが、そのとき伸びたリボンの一本が今度はの足をからめとってしまった。
「いたたた!そっちひっぱっちゃだめぇ!」

 髪は今にもむしられそう。足にもリボンが食い込んで痛む。少しでも痛みを和らげようと、引っ張られるまま銀時へ抱きつく。
 そうするうちにこじれたリボンはますます固く結わえられていく。
「おぉっ?!」
「うわわわわっ?!」
 大きな力に引きずられ、は畳にぼてーん!と転げた。銀時がバランスを崩したせいで、まで巻き添えをくらったのだ。

 いつのまにやら、手も足もどこも動かせなくなっている。
 赤いリボンはと銀時を、まとめてぐるぐる巻きにしていた。
「なんでこーなるのぉぉぉぉっ?!」





「お、落ち着け!おちつけ!こんな時こそ冷静に…」
「やあぁんっ!」
 ところが銀時が腰をひねると、同時にの喉からは言いようのない声がほとばしった。
「おまっ!バカ、ヘンな声出すんじゃねーよ!」
「だめっ!だめだめだめっ!動いちゃだめっ!どこさわってんのぉぉっ?!」
「はァ?」

 ふたりの身体は正面からぴたりと抱き合うよう、二重三重にリボンでくくりつけられている。中でもとりわけ銀時の右手は、の身体に触れた状態で念入りに固定されていた
 その位置というのがちょうどの下半身。精密に言うなら足の付け根。
 ほどくつもりが逆に何本ものリボンに巻き取られ、の着物も下穿きもはしたなく着崩れてしまっている。銀時の手ははだけた裾から股間へ入り込み、それを挟みつけた上からの足は縛られているのだった。
 気づいた銀時も青ざめ、やがて赤らんだ。
 その指先はの秘所、中指がちょうどそれを隠すように、縦割れにぴたりと添わされていた。



「…ちょ、ちょっと待てよ?すぐ手ぇどけてやっから…」
「…っ?!っ!っ!!!だめだめだめだめっ!あぁんっ!いやあぁんっ!」
 懸命にもがいてくれるのだが、他はともかく右手の拘束は固い。動くのは指の関節ばかり。がむしゃらに動いた中指は、をただこすりあげただけだ。控えめに隠れていた襞をわざわざ探り当てた上、その上端に息づく花芯をいたずらにいじりまわしただけ。
 それを理解して銀時が止まった。は既に目を回し硬直している。ほんのわずかな身じろぎひとつで、最も敏感な場所を刺激してしまうことになる。

 しかしその緊張がかえって身体を震わせた。
「やっ…」
 同じく動くまいと意識するあまり、銀時の指がかすかに引きつり、蕾がやんわりつつかれる。はっと息を止め、漏れかけた声をは押し殺した。こんな状況だというのに、そこからじわじわ麻酔のようにひろがる痺れはどうしようもない。
 考えないよう努めてみても、身体中の感覚はそこへ集中してしまう。
 大きく息を吸って吐いて、どうにか自分を落ち着かせても、解決にはとても遠いのだった。


「えーと…。このままではにっちもさっちもいきませんので動いてもよろしいでしょうかお嬢様…」
 銀時の言うことは正しい。その通り、いつまでもこうしているわけにはいかない。
 身体を楽に、なるべく全身の力を抜いて、笑顔さえつくろいはうなずいた。
「あ、あはは…いいよいいよ、もっとてきとーに、ぐいってさわっちゃって。やさしくされたら、逆にへんなかんじに意識しちゃうかも…」
「そ、そう?そーだよな、絆創膏剥がす時も一気にいった方が痛くねぇもんなっ」
 たとえが的確なのかどうか。

 なのに健気な覚悟もむなしく、上へ下へ身体を串刺しにしたのは、なんていかがわしい衝撃だったろう。
「ふぁんっ!」
 反射的に身をよじらせる、その動きがさらなる快感を呼んでしまう。
「うっ、んぅぅぅ…」
 今度は声を耐えたの額に、銀時が口づけ褒めてくれた。
「えらいえらい。そうそう、ちょっとだけそうやって我慢な?どっかほぐせねぇか見てみるから」
 そうして銀時は思いきり顔を反らした。するとどこかのリボンが引っ攣れ、の腰が銀時へなすりつけられた。

「………っ!っ、………っ!っ!」
 どれほど入り口をなぞられても、はひたすら口をぱくぱくさせ声の出るのだけは我慢した。からんだ紐をほどくだけなのに、いちいち喘いでしまうなんてオカシイ。
 だが殊勝に思っていられたのもそれまでだ。
「あ、ひっ…?!」

 緊張と、それ以外のものでも。すっかり潤みきっていたそこへ、銀時の指は第一関節までわずかに挿入されてしまっていた。
「ぎ…っ、銀ちゃんっ…、銀ちゃんっ、あっ、あ、あのっ、あのね…っ」
「わ、わりぃ!すぐ抜く…」
 とはいうものの努力の甲斐もなく、かろうじて途中まで抜けた中指は、リボンのいずれかに邪魔をされ、ふたたび深く、次は根元までへ埋まった。
「……?!あっ?や…っ、あっ、なに…っ?」
「あれっ…?ちょ、ちょ、これ、どうなって…」
 浅く深く、指は何度も出ては入る。ちゅぷちゅぷといよいよ粘った水音がたつ。あわてふためいた銀時が無茶な試行錯誤をするので、それにあわせて指の角度、こすれる場所も慌ただしく変わった。
 あたりどころが悪かったと言うのか、それとも良かったと言えばいいのか。
「はっ…、あ、ああっ…、それっ、そ、そこっ、だめ、だめっ、ふ…う、うううううぁんっ!」
 天井を執拗に責められた。かと思えば鍵状に指が曲げられた。知らずに腰が浮き上がり、なのにはそれを抑えることもままならない。

 もうどうなってもいいどうでもいいと、とうとう理性も良識も手放しかけた時だった。
「あっとれたっ!」
「………え?」
 突然は我に返らされた。



 見れば銀時の左肩から先がようやく自由を取り戻していた。に触れた右手は依然そのままだが、身体の半分が解放されて動きの幅もひろがった。
「よしよし、もうちょっとでとれるかんな。こっちの手で…こう…」
 あらためてどこかの結び目を解きにかかるのだが、すると動かせない右手の方はそれまでよりもずっと強く、に押し付けられることになった。
「んぃっ…!?」
 勃起しかけのクリトリスが、ぐにぐにと容赦なくつぶされている。
 銀時がなだめてくれる声で、は懸命に気を逸らした。
「あちゃー恥ずかしいだろ。ごめんな?もうちょっとだけかんべんな?」
「ん…んんんんあっ…!」
 うなずいた瞬間を狙い済ましたように、芯をこすりながら中を侵された。
「今こっちほどけそうだから、もうちょっと、な?」
「う、うん…、う、うううっ、うっ」
「あれー?なんだこれ。ちょっと待てよ?なんかからまって…」
 案じる声とはうらはらに、銀時の指はを執拗にひっかいていく。いつしか皮が剥かれ種もむきだしに。さいわい潤滑液にまみれて痛みがないのがせめてもだが、指はぬるぬると粒の上を滑った。
「ん……っ、あ…あん…っ」
 もともと離れられずにいるのをさらにしがみつくような気持ち。なりふり構わずは銀時にすがりついた。「感じてはダメ」とか、「それが無理ならせめて平気な顔でいよう」とか、思慮も分別も快感の前に無力だ。

 ぞわりと腰のうぶ毛が逆立った。総毛だった身体を電流が走った。
 もうだめ。
…っ、もう…っ」
 ごめんなさい。

 昂ぶる波に身をまかせかけた時。またしても。
「おぉーっ!やっと抜けたぁ!」

 またしてもは突き落とされた。







 ひとり畳へ転がされ、はぽかんと声もない。やがて天井で占められた視界に、部屋の明かりで逆光になった銀時の顔が映りこむ。自分だけ縄抜けを果たした銀時は、それまでと一緒にしていたテンパり具合が嘘のように、顔をきたならしくニヤケさせていた。
「っひっひ〜。よしよし、いいねぇそのカッコ」
 腕組みまでして、を満足げに見下ろす瞳。状況がつかめずが目をまたたいた。

 自分の姿を顧みれば、ほどけるどころかリボンはむしろ前より密に巻かれている。両腕は背中へまとめられ、手首の先までほぼ隙間もなくぐるぐる巻き。反対に腰から膝までは要所要所を縛っただけで素肌の露出率が高い。
「やっぱそーだな。おめーの言う通りだわ。そーいうカッコは男がしてもしょーがねーのな」
「ぎ…、銀ちゃん、まさか…、まさかさいしょっから…!」
 に浮いた脂汗の一滴が、ぽたりと畳にしみを作った。
「やっぱりがいただかれちゃうんじゃないっ!」
 またこの男に騙された!



「んーなことよりお前もうヤバイんじゃないの?」
「うひっ!?」
「ほーら」
 何気なく頬を触られただけで、確かには異様なほど震えた。
「銀ちゃんっ…!ちょっ?!あっ、やんっなにっ?!」
 から伸びたリボンの端を銀時がくいと軽く引く。するとまるで操り人形のように、身体は銀時の思うままころんと裏返されてしまった。忍びに習った糸使いの応用だが、そんなことはの知るよしもない。
 足はぴたりと閉じたまま。しかし尻を高く上げさせられて、広く空いたリボンの隙間から陰部の様子は丸見えだ。
 ひくつく女性器に息がふれるほど、間近に銀時が観察していた。
「あーあ、こんなにやーらかくして」
「ちょ…っやっ!見ないでっ、ちょっ…いやいやっ!い、やぁっ……ぁっ…んふぅっ…」
 抵抗が尻すぼみに消えたのは、ふたたび指が挿し入れられたからだ。
 を知り尽くした手が中を弄ぶ。そうでなくともすぐそこへ頂点の見えかけていた身体だ。たちまち声は力を失くした。突っ伏した頭を振り乱し、鼻にかかった鳴き声で甘えた。

 しかし昇りつめる寸前ではまたもや突き放された。


「はぁい深呼吸〜。落ち着いて落ち着いて。吸ってー?吐いてー?ひーふーひーふー」
「あああぁっ!もぉぉっ!やだっ!もぉっ!もぉいやあっ、自分でするっ、からっ、もういいっしらないっ!」
「あらまそんなつれないこと言う?」
 尻の割れ目にあてられた熱。脅えたようにが止まった。
「これいらねぇの?ん?銀さん知ってんよ〜?はクリいじられるより指突っ込まれるより、こっちのぶっといのが好きだろ?」
 真後ろで見えはしないのに、愉悦に歪む目が分かって憎い。
 けれどその先に来る快感を思っただけでは竦みあがった。
「だろー?そうだろォ?そう思って銀さんがプレゼントしてやろうっつーのにもうおめーときたらさァ」
 言いながらもをほじくってくちゅくちゅ音をさせるのは、銀時自身の先端だ。
 が頭まで溺れそうになると、ぎりぎりのところでやめて潮を引かせる。
 それを何度も、何度も、何度も繰り返され、もどかしさで気が狂いそうになった。行為どころか部位そのものを「プレゼント」だなんてうそぶいてくれる、下品さを怒る余裕もなかった。
「ばかぁっ…!ばかぁ…っ!」
 その声すらなんなく奪われてしまう。銀時は腕を撫でたに過ぎない。なのにの背には快感が突き抜け、もはや身体のどこをさわられてもそれで達してしまう気がした。
「おっとと、あぶね」
 銀時もそれはとくと承知。あえて快活に揉みほぐし、に凝った快楽を散らせてしまう。
 そしてまた一から愛撫が始まった。今度は柔らかくふくよかな尻をびしょびしょに濡れるまで舐められた。
 しかしやはり絶頂は許してもらえない。


 軽く身を引きのそこをじっくり眺めていた銀時が興味深げにつぶやいた。
「おい、すんげぇ濃いのたれてきたぞ」
 そうだろうとも。にもわかる。熟して溶けて腐る寸前の肉だ。は一心にそこを見せつけた。腰を揺らして欲しがる様を卑猥とはもう感じなかった。
「もぉ、もぉいいでしょぉ?ちょーだい銀ちゃんのぉ…。プレゼントちょーだいよぉ…」
 涙を流して媚びる自分も情けないとは思わなかった。

「ほしい?」
 重みに身体がつぶされる。の上へ銀時が寝そべっていた。
 揶揄から嘲笑から睦言へ。耳元で自在にトーンを変える声。
「銀さんからのプレゼントうれしい?」
 意味を咀嚼もせずは即うなずいた。


 満足そうに笑ったのだろう。わずかな「間」の後、ついに、ようやく、の中へ銀時が来てくれた。
「あああぁぁぁぁっ…!」
 動かない体を指先まで突っ張り、はすぐさま絶頂へ達した。
 銀時も相当意地を張っていたのか、灼けつくような肉の棒はのそこを破らんばかりに広げる。
「あぅっ!あっ!あぁっ!あぁぁっ!」
 大きく開きっぱなしの口から嬌声は延々垂れ流し。びくん!と激しく身を仰け反らせ、は立て続けの二度目を迎える。
 力尽きた身体は投げ出され、唇の端からだらだらとよだれがしたたるのもそのまま。
 だがようやく手に入れた銀時のものだけは身体がどうしても離そうとしなかった。

「おめー嫌がるけど銀さんはけっこう好きなんだよなァ。でっけぇケツが当たってさァ」
 離れて見れば、うつぶせに重なり寝そべっているだけ…ふざけているだけと見えなくもない姿勢で、秘かにそこは繋がっている。ゆさゆさと全体を揺らすように、銀時はゆっくり埋め込んだ肉を前後させた。
 聞こえているのかいないのか、が頭をがくがくと振り、また果てた。もう声もなく。



「う…、うれしっ…」
 やっとのことで搾り出されたのはまぎれもない歓喜だ。
「へへっ、銀さんのバズーカ砲がそんなにうれしいって?」
「ば、か…っ……違…あぁぁぁ…っ!」
 まただ。四度目。

 一度衝かれれば一度達する、度を越したのよがりようにも引くでなく銀時は愉しそうだった。
「おいおい何べんイク気」
「だって…うれし…も…っ、あぁっ!…銀、ちゃんに…銀ちゃんに…ぃっ、いぃっ、あっ、あっ、あぁっ、もぉっ…!」

 「銀ちゃんにいっぱい遊んでもらえて」
 せめてそれだけを言い終えるくらい、動かず待ってくれればいいものを。


 白状すると、お日様の下でデートするのと、街で銀時を見せびらかすのと、同じくらいは家の中も好きだ。
 家の中部屋の中布団の中。
 そしての中で、こうして遊んでもらえるのが好き。をおもちゃに遊んでくれるのが好き。
 ましてやこんな手の込んだ遊び。
「これ…、ぜんぶ、まとめて…プレゼントね?」



 息も絶え絶え、肩越しに振り返った顔は、造りのあどけなさも霞ませる妖艶な色気を湛えていて、思わず胸を衝かれるほど。

 だが銀時も男の、大人の、プライドを賭けて、笑ってみせた。
「ちゃんとわかってんじゃねーの」
 にやりと。