春のお江戸のとある夜更け。
 すっかり温かくなったとはいえ銀さん宅の和室には今もまだこたつが出しっぱなしだ。
 こたつ布団の優しい重さはここ数日の気候にぴったり。電気を点けずくるまっているだけで、やぐらにこもった体温がふたりをじゅうぶんあたためてくれた。
 片や甚平に着古しの浴衣、どちらも気軽な寝間着姿で銀さんとはまったりとおこたに向かい合っていた。首は揃って真横を向いて、視線の先にあるものは瓦屋根のついた小さなテレビ。
 すっかりお馴染みのランキング番組が今年も恒例のイベントに浮つく街を映していた。
 「ホワイトデー目前☆女子がよろこぶプレゼント大特集〜!」


「既視感のある光景だねぇ」
「言うんじゃねえ」
 気の抜けた声でつぶやくを銀さんがびしっと黙らせる。
「かわりばえしねぇ1年が過ごせてなによりじゃねーか。銀さんくらい大人になるとな、そーいうのがかけがえなく思えてくんの」
「やーね。おじいちゃんみたい。オッサン通り越しておじいちゃんよ」
「なんで2回言うの。ねえなんで今おじいちゃんって2回言ったの」
「ねえねえ、にもホワイトデーのお返しなんかちょーだい」
「スルーかよこのやろー」

 こたつの中で臭い足に蹴飛ばされても気にしない。は銀さんへ向き直り、生意気にもからかいまじりに笑った。「お返し」の用意など望むべくもない彼氏を困らせてやれといったところか。
「ねえねえホワイトデーじゃなーい。なんかお返しちょうだいよう。バレンタインチョコたくさんあげたじゃーん」
「アレ全部自分用に買ったヤツじゃねーか!ひとつも銀さんにくれてねぇじゃん!ちょこっとずつかじらせてくれただけじゃん!」
「ほかにも袋いっぱいあげたでしょ」
「沖田クンからの下げ渡し品な!見事に腹ァ下したヤツな!」

 異物混入を警戒して、真選組では基本的に部外者の差し入れは受け取らない。しかしめげない女性ファン達は強引にチョコを送り付け、それを総悟がにくれたのだ。
 決しては食べないようにとくれぐれも念をおしながら。
「ちくしょうひでぇ目に遭った…」
 疲れのにじむその声を聞く限り、真選組の方針は正しかったらしい。
「毒が入ってるかもって言ったのに、銀ちゃん食べちゃうんだもん」
「そもそもふつーは出さないよね?!毒が入ってるかもしれないチョコなんか見せるまでもなく捨てるよね?!大事な大事な彼氏じゃねーの?!」

 あ〜ヤダヤダとおおげさに銀さんは肩をすくめてみせた。
「おめーも言うよーになっちまったよなァ。『銀ちゃんがいっしょにいてくれれば、ほかにはなぁんにもいらないのぉ』なーんて可愛かったちゃんどこ行っちゃったのォ?」
「ヘンなモノマネすんのやめてよ!そんなしゃべりかたしないもんっっ」
「してるしてる。だいたい何よホワイトデーって。ったくどこの誰がこんなくだらねぇ行事を…」
「バレンタインはくだらなくないくせに。もらえる時ばっかイイ顔するのね〜」
「おだまんなさいッ!」
「都合が悪いとすぐパー子ちゃんになるんだから」



 ぷうっとふくれたを見て、銀さんはしかし考えた。むろん銀さんとて可愛い彼女を、喜ばせてやりたいと思わないこともなくもないのだ。(どっちだ)
 ならば今夜はいい機会だから「お返し」とやらをくれてやろう。ぼりぼりくせ毛をかき回しながら眠そうな目が宙を見た。
「ハイハイわかったわかりましたァ〜。なんか返しゃあいいんだろ」
 ただしできれば元手をかけずに。
「チロルとかんまい棒じゃダメよ?ホワイトデーにふさわしい物ね。ちゃんと考えて」
「へぇへぇ、ホワイトデーな。ホワイトホワイト、白、白、白いモン…」

 「ホワイトデー」だから「白」とは短絡的にもほどがある。
 が。
「白ねぇ…」
「うん。白…」
「白かァ…」
「………」
 なぜか銀さんの口はやがて閉じた。どうしたことかほとんど同時にも一緒に黙ってしまう。
 そしてふたりの視線がかちあい、据わった目と目が互いを見つめた。どちらの頬も心なし赤い。
「やだよもう。年頃の娘がなんてコト考えてんだろネ?」
「ぎっ、銀ちゃんこそっ!すぐにそういう方向に話をもってっちゃうんだから!えっち!」


 そう。銀さんが、にやれる…たっぷりあげられる「白い何か」と言えば。
 そんなあまりにもヒネリのない、下ネタとも言えない下品な連想で通じ合ってしまうとは情けない。




 けれどもそれをきっかけにこたつ周りの空気は不思議な艶を帯びだした。は恥ずかしそうにうつむいて、落ち着きなく指を遊ばせている。その間に銀さんはというと、机の上のリモコンでテレビをぷちんと消してしまった。
 わずかな時間、会話が途切れる。
 代わりにこたつ布団の中では大小よっつの爪先が物言いたげにつつきあっていた。

 小さな爪の愛らしい指に武骨な足がからみつく。長年雑に酷使して、皮のぶあつく硬くなった足。それがのつま先を包み、握り、時にはの指がお返しに銀さんの足の裏をくすぐったり。
「…なに?」
「銀ちゃんこそ」
「俺ァ別に?」
「じゃあも別にぃ?なんでもなぁい」
 罪は相手になすりつけようと各々必死のすまし顔。とはいえ長くは続かない。先にゆるんだのは銀さんだった。こらえきれずにでれっとだらしなく。
「なぁ、おめーさァ」
 銀さんの「白いの」、欲しいんじゃね?

 つられてもにんまり笑った。真っ白な歯をちらりと見せて、お世辞にも上品とは言えない笑みだ。上目遣いの瞳の中には、幼いなりに懸命の「誘惑」らしきものが浮かんでいる。
「『欲しい』って言ったらどーなるの?」
「搾らせてやらなくもねーけどォ?」
 くふっとの喉が鳴ったのは銀さんのその言いぐさが予想を少しも裏切らなかったからだ。
「銀ちゃんの『くれる』ってそんなのばっかり」
「あ?なんか言った?」
「ううん。なんでもなぁい」
 いたずらっぽく笑ったその顔が、おもむろにこたつの向こうへ隠れた。



「うおっ?なになに?えっ?お前なに?」
 銀さんが慌てるのも無理はない。はごろんと這いつくばるとおこたの中へ潜り込んだのだ。5つや6つの子供じゃあるまいし。
 細身とは決して言えない身体は机の脚と天板をごとごと浮かせてにじりよってくる。
 やがて銀さんの足の間からおかっぱ頭が現れた。
「ばあ〜」

「おまえねぇ…」
 「バカなことを」と呆れて笑い、けれど銀さんのその口元はほんのわずかに引きつっていた。
 股ぐらにの顔がある。場所が場所なのに笑みは無邪気で、しかもそれが寝間着越しにとはいえ自分の股間へ頬ずりしたのだ。こもった熱を愉しむように、ふくふくとしたほっぺたがやや硬くなったそれを撫でてゆく。
 その落差はほんの一瞬とはいえ、あの銀さんから声も奪った。
「………」
「ん?銀ちゃんの。しぼっちゃおうね」
「…ああ、うん」


 はじめにがそこへキスをした。それから大きく口を開け、布の上から勃起をくわえた。歯を立てないよう唇でそっと力を加えていくと中のものはみるみる硬さを増し、じんわり滲みだした水分が内と外から布地を湿した。
 銀さんはとても待ちきれなくて自ら腰へ手をかけた。寝間着と下着を脱ごうとするのをも黙って手伝った。もともと限界までゆるく着付け、やっと引っかかっていたような着物だ。脱ぎ捨てるのも簡単だった。
 ぽろりと放り出されたものは早くも立派に大きかった。
 両手でやんわりそれを捧げ持ち、がちろりと先っぽを舐める。
「おぉぉぉぉ…」
 歓声はわざと茶化してふざけて、ただし目は少しも笑えていない。視線はの口元へ釘付けだ。赤い唇からのぞく赤い舌。小さくはみ出させた舌先が棒飴でもしゃぶるかのように、肉の突端を、棹の側面を、裏側を丹念に舐めまわす。そのたび虫の這うような震えが背筋を走るのだ。
 時々大きく口が開いて半分ほどをくわえてくれる。「あむ、あむ」仔猫の寝言のようなくぐもった声を鳴らしながら、銀さん自身を締め付ける。
「おぉ、じょうずじょうず…」
 余裕を装い銀さんはさらっさらの黒髪を撫でてやった。さりげなく頭を押さえつけ、が顔を上げられないよう、きょろきょろ泳ぐ自分の目を見られない為の用心をした。たったこれだけで簡単に気持ちよくなってしまっているなんて、がつけあがるし沽券にかかわる。
 しかしその部分は即物的でやせ我慢などお構いなし。心をよそに血は滾り、今ではの口いっぱいに膨れ上がってしまっていた。
 ふくらんだ頬をつついてやると、あけっぱなしで顎もだるかろうにはうれしそうに目を細めた。


 しばらくするとは顔を上げ、唾液に濡れた表面が外気に触れてすーっと冷える。温かかった口の中にまだ包まれていたかったけれど、したたるよだれを舐めてくれたのが名残を惜しむかのようで、それはそれで悪くはなかった。
 しかもくるりと丸い目で見上げ、の言うことが小憎らしくも
「あのね、へたくそじゃない?ちゃんとできてる?」
「………バカじゃねーの」

 こみ上がる衝動を抑えるのがやっとだ。絞り出される声はかすれていた。
 自分の握っているそれを、一体なんだと思っているのか。あっという間に、たわいなく、皮も裂けそうに膨れているモノは。唾と混ざった先触れの汁で醜くぬめっているモノは。
 今や銀さんの頭には、飲まそかかけよか中に出そうか、その3択しかないというのに。
「見てわかんねえ?こんなにでっかくなってんのに?」
「ん、でも、に気ーつかって、きもちいふりしてるんだったら…」
「んーな器用なコト男はできねーよっ」
「はぷっっっ!?」

 腹立ち紛れに見せかけての頭を押さえつけてやった。ふたたび口へ包ませて中のぬくもりにほっとする。はじめ目をぱちくりしていたもすぐに自分から頭を振りだした。
「んっ、んぐ、んっ…」
「おめーこそどうなの。銀さんひとりで気持ちよくなっちまってんだけど?」
 返事をさすため手をゆるめるとが恍惚とした顔をあげた。なぜだか首をふりながら。
「?」
「ううん…きもちいい…」
 愛おしそうに何度もなんども棹のあちこちへ口付けて、
「銀ちゃんの、なめてるだけで、きもちよくなってきちゃった…。でもね」

 そして物欲しそうな目は、せつなく見上げたのだった。
「もっときもちよくなりたいよう…」


 潤んだ視線をまともにくらってぐっと息が詰まる。銀さんあやうし。不意打ちにぴくぴく脈打ってしまう。
 考えるより身体が先にさっきの答えを決めていた。
「よし、中な!」
「きゃっ?!えっ?えっ?えっ??」





 をつかんで引きずり出すと銀さんはこたつを足で押しのけた。斜めにゆがんだ机の脇に、人ひとりがやっと横になれる場所が空く。ぺらんぺらんの敷き物でも畳へ直接寝るよりましだ。
 寝かせたの足の間へ銀さんは身体を割り込ませた。
 あらわにはだけた白い足に唾を飲みながら手のひらを這わす。も大人しくされるがまま。ひざを持ち上げられぱっくりと大きく足を開かされるのを、緊張した目で見つめている。
 つけっぱなしの明かりの下に付け根のさらに奥がさらされた。中心に湧いた透明な露はすりあわす足に塗りのばされて、ももの内側まで光らせていた。

「あ〜あホントだ。よーく濡れてら。さすがちゃん、こんなにきもちよくなっちゃってたの〜?」
 ここぞと銀さんの声色がねちねちとなぶるものになる。自分のしつけたこの身体に内心はいたくご満悦なのだ。そのくせ精一杯身をよじらせ、この期におよんで羞じらうのもいい。
「あ、あんまり見ちゃやだ…」
「なーに言ってんの」
 どーせすぐ手のひら返すことになるのに。

 割れ目にそって撫であげると硬く腫れあがる粒を見つけた。優しくつついてやっただけでびくりと腰が浮き、悲鳴があがる。
「ひゃんっ!だ、だめ、今はそこ、つんてしちゃだめっ…」
 ふだんは小さくさやに隠れた芯が真っ赤に勃起している。銀さんのものとまるで同じ。
 いつにも増して太く反り返った凶暴そうな容貌は、とうに見慣れているはずのにも不安な顔をさせるほど。
「なんか今日の、あの、それ、…おっきくない?」
「おめーがこんなにしたんだろ」
「はいんないかも…」
「ぷっ、ぱーか。んなわけねえだろっ」
 思わず吹き出し、そしてひといきに太い楔を打ち込んでやった。

「んんっ!」
 が眉を寄せ、歯をくいしばる。かすかにうめき、喉をそらせる。けれど入り口近くの抵抗も、ほんの少し強引に押しただけでいとも簡単に破れてしまった。
 潤滑油には不自由しない。あとはぬるりと飲み込まれていく。
 こわばっていたの身体からゆっくり力が抜けていった。
「あ…、はぁ…、銀ちゃん…、銀ちゃんの…」
「そ。銀さんの、でっけーのが、おめーのまんこみりみり広げてるよ」
「うん…」
「痛ぇ?」
 弱々しく首が振られる。そうだろうとも。
 ふと思いついて一度引き抜くと、押し広げられた花びらの奥に銀さんの太さをした穴が真っ黒く口を開けていた。
「はっ…」
「ほーら。ちゃーんと入るだろ?」
「うん…」
「おめーのアソコはもうそんな風にできちまってんの」
 もう一度の中へと埋まる。壁が狭まり締めつけてくる。とはとても思えない力だ。本人だって知りもしないはず。握りつぶされてしまいそうな強さに銀さんも表情を歪ませた。
「ちょ、待て、力抜いて、ちょっとだけ」
 答えは今度も首を振るだけ。ただしさっきよりも強く早く「いやいや」。銀さんを離すまいとして必死に首根っこへしがみつく。
「銀ちゃん、銀ちゃん…」
「ばか、焦んなって…。銀さん逃げやしねーから」
「んん…っ」
 逃げはしないが逃げるように、銀さんは軽く腰を引き、深呼吸して息を整え、報復気分で強く突いてやった。しぶいた粘液が音をたてる。
 ぐちゅっ。
「んあっ、あんっ、あんっ、やだ、やだ、いかないで、もっとぉ」
 また逃げようとする腰にが下から足をからませる。ぽかぽかかかとが叩いて抗議する。
「いて、いてて、お前なにすんの」

 とは言いながら、でもニタついて、
 そして銀さんはの望みどおり、根元までずっぷり挿入ってやった。
「んんんんんっ!!」


 行き止まりまで深く深く身体を繋げていったん止まる。こっそり息を逃がしつつ、盗み見てみるとが夢中で銀さんの肌に顔をすりよせている。一見甘えているようで違う。下僕にうなずくのに近い。
 よしよし。姫は満足じゃ。褒めてつかわす。
 えらそーに。
「はっ、あっ、ああっ、あっ、んんっ、いい、いいよう…っ、これ、好き…、、これ、すごい好き…」
「なにが」
「おくまで、いれて、もっといれるの」
「ああ」
 そういうことかと銀さんは笑った。限界まで挿れ、引かずにまだ押す。限りなく奥を突かれるような…にはそんな感覚なのか。
「は…っ、あそこ、くるしい、きつきつ…」
「苦しい?じゃ抜くかァ」
「やだやだやだやだっ!」
「うぉ、ば、ばかっ、てめ…」

 軽い気持ちで口先ばかりの意地悪なんかするんじゃなかった。付け根からぐりゅぐりゅ搾りあげられてしまう。
 とっさに身を引こうとするのを許さず唇にかぶりつかれた。激しく中を舐めまわされ、たまったよだれをすすられた。
「ん、んふ、ちょうだい、白いのも、とうめいなのも、ぜんぶぜんぶ…。銀ちゃんから出るもの、みーんなの、なんだからぁっ…」
「………」

 銀さんは一瞬声を失った。
 返す言葉もなく、ただ目が回った。


「あああくっそ!もう出す!出すからなっ!」
「んぐんんっ?!」
 を抱きしめ抱き潰す。無意識にもがくいたいけな身体が銀さんにさらに火をつけた。の弱い場所はよく知ってる。細かく刻むように腰を振り、そこだけ激しく責めたててやる。
「ひゃんっ、ああっ、あっ、あっ、ああんっ、そっ、それ、だめ、だめだめだめ、、イっ、イっちゃ…」
「ほっらイケ!ほらっ!ほらっ!」
「ああっ!あああああああんっ!」

 腕の中のがびくびくと跳ねる。その瞬間の強烈な締めつけに今度は銀さんも逆らわなかった。
「うは、出てる出てる、出る出る出る…」
 とろとろとだらしなくキレも悪く、銀さんはの身体の中へ白いのを延々吐き出した。射精というよりおもらしのよう。こらえていたのをようやく出せて身も心も蕩けきっていく。さぞかし情けない顔だっただろう。
 溜まったものをそそぎきると同時に頭もからっぽになった。







 「はーっ、はーっ、はーっ…」と肩で息して、ぐったり力の抜けたの上へ銀さんもまた崩れ落ちた。しなびてしまった肉の棒はそれまでの猛々しさが嘘のよう。あえなくから追い出される。
 泡立つ精液と一緒にどろり。
「こらぁ…せっかくのお返しこぼすんじゃねぇ」
「おかえし…?」 
 の目もしばらく宙をさまよい、やっととらえた銀さんの顔をやはりぼんやり見ているばかり。放心状態というやつだ。
 そのうち目の焦点はさだまり、だんだんと我に返ってゆく。
 言われてみればことのおこりは。
「あぁ…。そっかぁ…」
 思い出した。そうだ。そうだった。
 それなら返事は。
「えーと………ありがとう?」


 首をかしげてつぶやいてからふつふつとおかしさがこみあげて、同じく正気に戻った銀さんと、声を揃えては笑った。
「銀ちゃんホワイトデーなんてやっぱりどーでもいいんでしょ」
「おめーもな」