<<<

 新八神楽の子供二人は(新八の)実家に預けてきた。電話の線は根っこから抜いたし、玄関の鍵も忘れずにかけた。
 右ヨシ、左ヨシ、あれもヨーシ!
 銀時は風呂上りの濡れた髪をタオルで雑に乾かしながら、部屋の各所を指差し確認した。
 もう一度玄関へ出て、間違いなく錠が下りていることを確認していると、右手にある風呂場からざざーっと大きな水音がした。洗面器で湯を浴びている音だ。それからがしゃんと扉が開き、ふーっと気持ち良さそうな息に続いて、脱衣所で人の動く気配。が風呂から上がったようだ。
 銀時は急いで冷蔵庫からラムネを出して、半分くらいまで一気に飲んだ。別の液体をビンに注ぎ足す、その容量を空けるためと、自分が飲むことでを油断させるため。
 そして懐に隠し持っていた小さな茶色いビンを開け、中身を半分だけ、飲みかけのラムネに注いで混ぜた。

 健康ドリンクよりは少し小さい、液体風邪薬くらいのそのビンは、怪しい古道具屋がサービスにくれたものだ。ビンにぺたりと貼られた小さな紙のラベルには、外国語なのか天人語なのか、銀時には読めない細かい字が印刷されている。
 その内容物とは。
 心も体も人恋しくなる魔法の薬。俗に言うところの「催淫剤」
 薬の効き目は既に銀時が自分の体で実証済みだった。ひとビンまるごと服用したら朝まで体が疼き続けて止まらなかった。
 だからには量を半分に減らして、さらにジュースに薄めて飲ませてみる。さあは、一体どんな顔をして楽しませてくれるだろーか。
 考えるだけで顔が笑った。早く表情を引き締めないと、この顔を見られたら怪しまれる。けれどもにやけ顔がどうしても戻らなくて、銀時は両手で顔を覆って俯いた。
 …それはそれでとても怪しい。




「はー、いいお湯でした、あ、いいなラムネもちょうだい」
 涼しげな白い浴衣を帯は締めずに紐だけで着て、が風呂場からぱたぱた出てくる。銀時が持っている飲み物に気づくとなんの疑いもなく手を出した。ほら来た!銀時は心の中でぐっ、と拳を振り上げた。の行動パターンなら手に取るようにわかる。
 は銀時から両手でビンを受け取った。そのまま捧げ持って、こくこくラムネを流し込む白い喉がまぶしい。
 今日の風呂の湯は少し熱めで、の喉はからからだった。それも銀時の弄した細かい策だ。おかげで舌先に奇妙な苦味を感じた時には、ビンの中は残らず飲み干されていた。

 はなにやら納得の行かない顔で、空き瓶を目の前にかざしてみた。中でからんと転がるビー玉を不思議そうに眺めていた。
「何?」
「なんかヘンな味しなかった?」
「俺は別に?」
「そーかなぁ…」
 さあ来い!ふたたび腹の中で、銀時が握った拳を引き寄せている。自分の経験上薬効はすぐに現れるはず。



 目論見どおり、あまりに劇的な効き目だった。銀時自身面食らうほどの。

 台所から事務所に向かって一歩踏み出したの、2歩目にさしかかるその右足が、くたり、と突然沈み込んだ。
「ええ?っ?!」
 その時ばかりは下心も何もかも忘れて、銀時はに駆け寄った。は両手を床についてなんとか体を支えようとしているけれど、その手も今にも折れそうだ。
 顔は真っ赤に上気して、目は半分も開けられていない。口を薄く開けたままで、はあはあと音をたてて呼吸をしている。
「お、おいおいおいおいどうした?大丈夫か?」
 あれあれあれあれ?自分が飲んだ時ってこんなだっただろうか。
 からは淫猥な空気など一切感じられなくて、ただ苦しそうなその様子に銀時も気が気でない。薬が合わなかったのか?なんかヤバいか?それが心配だったから、自分で試しに飲んでみたのに!
「ん…、んー?んやぁぁぁ?あに…?…なんか、へんら…」
 訴える言葉もろれつが回っていなかった。肩を抱くと浴衣ごしにもわかるほど、体が熱くなっていた。

 銀時は、急いでを和室の布団に運んでやった。枕元について手を握ったまま側にいる。
「大丈夫か?なんかしてほしいことあるか?水?水飲む?」
 そうは言ってもが心細そうに銀時の寝間着をつかんでいるので、水を汲みにも動けなかった。真っ赤なの頬を撫で、汗で貼りついた髪をかきあげてやる。
 を不安にさせないためにあくまで平気な顔をしていたけれど、内心額を畳にすりつけて赦しを乞いたい気分だった。頭の中はぐるぐると渦巻く後悔で収拾がつかない。うわわわわわ、どうしようか、毒じゃないハズだったけれど、銀さん自分で試しちゃみたけど、自分みたいな頑丈な造りの人間と、ふつーのの身体とを一緒に考えるのが土台間違っていたかもしれない!



 幸いの容態は、次第に落ち着きを見せてきた。
 袖を引っ張られて、銀時が下を見ると、はとろんとした目で何かを言いたそうにしてやめた。
 すぐに枕に伏せてしまった、その顔が気のせいか艶っぽくて、後悔でいっぱいの銀時の心に微かに違和感と期待がさした。あれ?

「え、…えーと、どっか、苦しくねぇ?このへん、とか大丈夫か?」
 半信半疑での背中をさすってやった。ゆっくり、ゆーっくり上下に手のひらを動かすと、時々がぴくりと動き、寝間着をつかむ指がわなないた。
「あ、あのねぇ…」
 口調もしっかりと回復してきた。顔が赤く、体が熱っぽいのは変わりないが、は布団の中の足を、じりっとこすりあわせているようだ。
「…?」
 心配から安心へ。困惑からわくわくへ。ぷちん、とカーテンの紐が切れて、舞台に緞帳が下りたように、瞬時に銀時の心の中が別の色一色に塗り替えられた。



 親切ごかして銀時は、の隣にすべりこんだ。
「よしよし、一緒に寝てやろーな」
 布団の中で必要以上に体をに添わせてみたら、触れた部分がびくん、と震えた。思ったとおりだ。薬が効いてる。
 向き合って横になり、の両頬を手のひらで包んでやる。よーく観察したくて面を上げさせると、は自分でも自分の体の変調にとまどっているようだった。
 イタズラ半分に手のひらをあごまで滑らせる。は泣きそうな顔をして、左右に首を振って銀時の手から逃げた。
「なにくすぐったい?これ?」
 銀時はとぼけての髪の毛を撫でてやった。肩を抱いて額にちゅっ、と子供にするように口づける。
「銀さんしばらく居てやるから。心配しなくていいから、おやすみー」
 腕の中でが、もどかしくてたまらない顔をしている。「ちーがーうー!」と銀時をつかんで揺さぶりたいに違いない。でもなにも言えない。遠まわしにアピールするのが精一杯だ。
「あのね、あのね、銀ちゃん……なんかヘンなの…」
「ん?」
 は銀時の手をとって、自分の胸の上に置いた。浴衣の合わせ目から中へ差し入れようとしたが、それには銀時が抗った。
「こらこら、お前具合悪いんだろ?」
「ち、違うの…ぉ」
「もー、何がしたいの?お前」
 目のふちはさらに赤く息は荒い。胸に押し付けていた銀時の手を、今度は頬ずりし始めた。の我慢も限界らしい。銀時は次が待ちきれない。早く正直に白状しないかと思う。
 踏み切れないの背中を少しだけ押してやろうと思った。
「なに?」
 手を伸ばして、のひざの裏から太ももを、さわっと撫であげてやった。
 その瞬間だった。
「ぃっ……!」
 が銀時にしがみついて声を殺した。のつま先から頭のてっぺんを、一瞬で震えが通り過ぎ、背中が弓なりに反り返った。
「…っ、んんんっ!や、やだぁっ……っっ!」

「…え?」
 銀時の胸にぎゅうっと顔を押し付けて、は何度も大きく震え続けた。うなじから背筋にかけて数秒おきに痙攣している。
 震えが静まるとはぐったり力なく、体を投げ出してしまった。

「え…?」
 えぇぇぇぇぇっ?!今のまさか、もしかしてイっちまった?とか?マジでか!じらしてじらしてもっと楽しむはずだったのに!失敗した。なにこれすげー加減が難しい。めちゃくちゃ段取りがんばったのにこれで終い?
 ある意味非情、というよりむしろ人間の屑と言った方がいいような銀時だったが、でも心配はいらなかった。
 一度達してしまったは、自分でも歯止めが利かなくなった。
「銀ちゃん…、お願い……したいの…、すごく、お、おかしーの…」
 それまでどうしても言えなかった一言を搾り出す。わずかに残っていた理性が欲情に負けて、は潤んだ瞳で銀時を見上げた。
「……しよ?」
 薄く開いた口、軽く汗ばんだ頬、ぽーっと熱に浮かされたような瞳がとろりと銀時を見据えていた。銀時はその顔だけで勃起しそうだ。いやいや、まだまだ。お隣に住む屁怒絽さんの顔を思い描いて、昂ぶりそうな自分を抑えた。
「おいおい…」
 が唇をあわせてきた。銀時の口内をしゃぶりつくそうとするような濃厚さだった。唾液が糸をひくほどにお互いの中を潤わせて、口唇が離れた。
「イヤ?」
「いや、別にイヤじゃねーけど…」
がぜんぶするから…ね?…ね?だったら、いいよね…?」
 は掛け布団をはいで銀時の股間にひざまずいた。もはや恥じらいもなにも感じられない、いたって事務的な手つきで下着ごと銀時の寝間着を脱がした。
 そしてぱっくん、と。朗らかな擬音が似合いそうな躊躇のなさで、は銀時の男性器にしゃぶりつく。
「ふあ…っ?」
 銀時の喉から思わず声が漏れた。の指で棹のところを包まれて、いつもよりこれも熱い、濡れた口が銀時のものを真ん中まで含んでいる。腰のあたりにぞわりと原始的な快感が走り、股間に熱が澱みはじめた。
 の舌が口の中でちろちろと細かく動く。きつく吸い込みながら顔を上下する。その間も細い指が休むことなく根元の部分を締めつけてまた弛める。どれも単調な動きだったが、ひとつひとつは力強く、同じところをそれぞれ延々と責め続ける。抵抗も気を逸らす暇もなく、股間の肉は膨れ上がった。
…?お、おい、それ…っ」
 どこで覚えてきたのかと訊きそうになってやめた。間違いなく自分が教えたことだ。



「もう…いれちゃう、ね?いーよね?」
 片方の肘を布団につき、上半身を少し起こして、銀時はじっとを見ていた。すごい眺めだと息をのみながら。
 は浴衣のすそだけをはだけてせわしなく銀時の上にまたがった。真上を向いてそそり立った肉棒に手を添えて、自分の中心にぴったりとあわせる。銀時の位置からも、が反対の指で自分のひだをひろげるところがはっきりと見えた。
 はそのまま待ちきれないように性急に腰を沈めていく。ぬちゅっと大きな、男を受け入れる音がした。
「すっ…げ…」
 やけどしそうに熱い壁が、ぎっちりと膨張を包み込んだ。その中は蜜で一杯に満たされていて、分け入った銀時自身の体積だけ、たっぷりの粘液が口から外へあふれ出た。
「んゆっ…んっ、んっ………んっっっ…」
 挿入されただけでもう、の背骨を貫くように頭頂部にまで電流が走った。
 がくりと前へうなだれる。銀時の上着を力いっぱい握りしめて、はしばらく動けずにいる。
「だ、だいじょーぶか?」
「…だめ…」
 は薄く目を開け、銀時を上目遣いに見た。欲情を通り越して泣き出しそうな顔だった。
「ぜんぜん…足りないよう…」
 その顔に胸を衝かれて思わず銀時の腰が浮いた。
「んぁっ…!」
 たった一度突き上げられただけで、は激しく喉をのけぞらせた。全身が予想以上に敏感にされているようだった。
「…や、…やだぁ…なにこれぇ…」



「自分で、好きなだけ動いてみ?」
「…うん」
 銀時にまたがり腰を夢中で動かしながら、は眉間に皺をよせた苦しそうな顔をしている。銀時には見慣れた、のよがっている時の顔だ。
 たて続けに達したせいで、なんとか銀時と言葉をかわせるまでには身体の中も鎮まった。
「キモチいい?」
「うん…、すごい、いい…」
「どーしちまったんだよ」
「わかん、ない…っ」
 はやや前屈みに自分の身体をこすりつけるように、恥ずかしい場所の恥ずかしい一部分を銀時にぐいぐいこすりつけるように動いていた。
「クリこすってんの?」
「うん…っ」
「へぇ、そこが、キモチいいんだ?」
「うん…っ、ここ…、好き…」
 快感に導かれるままに、じっくりと自分の身体を探っている。眉根の皺が深くなり、腰の動きが早まった。自分の腰が動きそうになるのを銀時は懸命にこらえていた。抑えきれずに時々腰が浮き上がると、貫かれたがそのたびに甲高く悲鳴をあげた。
「イキそう?」
 は黙ってうなずいた。腰も早く、そして声も高くなる。
「うん…、また、…あ、あっまたっ、…あ、あっああっあっ、だめっ、またっ…」
 びくびくと止まらずに震えながら、はそんな自分が情けないのか銀時の上で顔を覆った。



 けれどもここにきてようやく、の頭も少しはまともに働きはじめた。肩で息をしながらは、恨みがましく銀時を見下ろした。
「…銀ちゃん、なんか、したんでしょ…」
 これ以上なくわざとらしく、銀時は視線を横へ逸らした。
「はぁぁ?なんのことぉぉぉ?」
「ウソっ!前に持ってたヘンなくすり…ひゃうんっ!!」
 銀時は今度は遠慮なく、下からがんがん腰を突き上げた。満足しきっていない身体がたやすく刺激にのみこまれていく。
「何だって?」
「やっ、や、や、やっ、だめ、だめぇっまたっ、」
「んん?」
「だめっ!だめっ!だ、あっ、あ、あ、あ、ああっ、いんっ」
 大きく後ろにのけぞって、はまたしても絶頂を迎えさせられた。それ以上身体を支えていられなくて、振り子のように前へ倒れこみ銀時の上にべったりと伏した。力の抜けた身体の中で、銀時をくわえこんだ内部だけがきつく中のものを締め上げている。
「おしまい?」
 返事はない。聞かなくてもおしまいでないことくらいすぐにわかる。
 けれども銀時は気づかぬ顔で、をごろんと転がして、自分が上になるように姿勢を変えた。銀時の性器が抜ける瞬間、から悲鳴じみた泣き声が上がる。
「やだあっ!!」
「んん?あんだけイっといてまだ欲しいんかぁ?」
 にやにや笑う銀時を、布団に転がされたは怯えた目で見上げている。肩を震わせて、ちぎれそうなくらいにこくこくこくこくと首を振った。
「ね、お願い…まだぁ…」
「どーしよっかなー」
「やあん!いじわる言わないで、お願いおねがい、おねがいっ!」
 んー、じゃあ…と銀時はの足首をつかみ、両足をがばっと開かせた。
「やっ…」
「おー、いい眺め」
 たった今まで貪欲に銀時をくわえこんでいた部分が、赤い口を開けていた。穴の奥からは白濁したの愛液がとろとろと溢れている。
 その中へゆっくりと、銀時は腰をすすめた。自分自身がの入り口を侵す瞬間を余さずその眼に焼きつけながら、先端だけを挿れて止めた。自分との交わっている様に眼が奪われる。赤く腫れあがったの唇に肉棒の先だけが包まれている。
 こらえきれず、細かく前後に腰を揺すると銀時以上にが乱れた。
「きゃ、ふっ、ああああん、やだぁ、やだあ、」
 はもうなりふり構っていなかった。大きな声で銀時を求めた。誤解したふりで意地悪く焦らされないように、ストレートに。
「いじわる、しないで、お願い、ちゃんと、挿れてっ、今日だけは、ホント、だめっ…」
 目の焦点が次第に狂う。銀時はさらに先端だけを、ゆっくり挿れてはすぐに抜いて、の体を焦らしに焦らした。
「なに?これじゃ、満足できない?」
「できない、できないっ、っ、もっと、銀ちゃんの、奥まで挿れて、欲しいようっ」



 必死に自分を求める声で、銀時は思いがけなく満足してしまった。なんてだらしない。
 イヤらしい言葉を言わせるとか、道具で責めてみるとか、こんな時でないとできないことがたくさんあるだろうに。自分はまだまだ修行が足りない。
 もっとも今のではどんな単語も平気で言いそうだし。ああいうのは嫌がるのを言わせるのがいいんだし。

 ぐいっ、との望みどおり、奥まで深く挿入してやった。悦ぶの声はもうかすれている。
「…ん、ひっ、…ひ、ひぁっ、あっ、…あ、はっ」
 きゅううっとの胎内が銀時を逃すまいと収縮した。指でしたのと同じように、繰り返し繰り返し、締めつけては弛む。は断続的に痙攣して、ずっと細かくイキ続けているのがわかった。
「あぁっ、あっ、あっ、ぎ、銀ちゃ…んっ、」
 通路が次第に狭まって銀時をさらに締め付けた。何度も強引に絶頂においやられたその部分は、もう麻痺していてもおかしくないのに、いまだに隙間なく吸い付いてきて、このまま絞りつくされてしまいそうだった。
 両手をまわしてきたに銀時は応えて体を倒し、正面からしっかりと抱きしめてやった。小さな背中を抱きすくめて、腰だけを深く浅く前後させる。
「まだイキそう?」
 答えは待たずに唇を奪った。
「…ん、んんんんっん、んっん、んむっ……!」
 くぐもった声の間隔は次第に短く迫ってきて、銀時の首に回した手は指先までぴんとこわばった。が自分でも腰を突き上げて、最後の一線を越えようとしている。
 それまでで一番強く大きな波が足元からをさらいに来た。は夢中で銀時の口に喰らいついた。中の舌を銀時はきつく吸い込んで噛みついて、から声を取り上げた。
「んー……………んんんっ!!」
 のつま先が、足の指が引きつって、突っ張った手足が何度も何度も身体を浮かせる。口を塞がれるまでもなく、声など出せずにの頭は真っ白に溶けた。










「…ひどい」
 汗だくになった布団の中で、やっとのことではそれだけつぶやいた。表情には少しだけ怒りが見える。「少しだけ」というのは疲れ果てているからで、体力があればもっと怒ってやりたいのだ。
「けど気持ちよかったろぉ?」
 銀時にささやかれても反論する声も出ない。
 よくなかったとは言わないけれど、今はとにかく疲れて苦しい。ずっと睡魔に襲われている。まぶたがとても重たくて、とろりとゆっくり下がってくる。意識が黒く途切れて戻ってしているうちに、太い腕がを抱きしめてくれた。
 分厚い胸板と両腕にはおとなしく体を預けた。一眠りして元気になったら怒ってやろう。いや、それはどうだか。体力が回復する頃には、きっと怒りなんて忘れてしまっている。
 そんなことだからはいつでも銀時にいいように遊ばれてしまうのだ。


 眠りの中に墜落する直前、不吉な独り言が聞こえた。
「まぁ、クスリはまだあと半分あるし」


「こ…………」
 こらぁぁぁぁぁ!と声にする余力も本当になかった。






−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−