※勇者銀さんとお姫様コスプレ (OWee専用ゲーム「どらごんはんたーIII」的な)



  ぱっぱらっぱっぱっぱっぱー!(ファンファーレ)
  『勇者ぎんときは魔王を倒し、とらわれのお姫様を救い出しました』

 喜んだこの国の王様は、約束どおり褒美として姫を勇者に与えました。
 勇者ぎんときは可憐な姫様をたいそう気に入り、姫様も勇敢なぎんときを心から好きになりました。

 そうしてふたりはいつまでも仲睦まじく暮らしましたとさ。
 めでたしめでたし。





 …の、はずでしたが。






 夜空には美しい星が瞬いていました。大きな城の奥深く、王族の中でも限られた者にしか出入りを許されない一画です。ここにはひとりのお姫様とその夫である元勇者が、ひっそりと、しかし何不自由なく暮らしているはずでした。
 けれど今、天蓋付きの寝台にお姫様は寂しい独り寝をしています。彼女を暖かく包むべき人…ぎんときの姿はありません。


 可哀想にこのお姫様は、王家の正式な系図にはすでに名の無い身の上でした。真実はどうあれ、「魔王の手により穢された」と近隣に知れ渡ってしまった以上、二度とそんな姫を公の場には出せません。そこで体よく「褒美」と称し彼女に夫をあてがって、勇者ともども人知れずその一生を終えさせることにしたのです。

 ところが勇者ぎんときには、意外な才能がありました。
 偶然居合わせた夜会の席で、彼は長年の懸案であった隣国との外交問題をあっさり片付けてしまったのです。その滑らかな弁舌と、最終的には武力行使も辞さない強気な交渉術は天性と言ってよいものでした。
 試しに兵を預ければ無双の働きで敵をなんなく殲滅してしまいました。
 勇者としての旅の経験から他国への潜入もお手のもの。彼の調べた情報はどんな密偵の報せより詳しく、信用のおけるものでした。

 外交に戦に諜報に、こうして便利に使われるうち、ぎんときはすっかりこの国にとって、なくてはならない人になっていたのです。





「はぁ…」
 悲しいため息はこれでもういくつ目になるでしょう。姫様は広すぎる寝台の中で赤子のように丸まっていました。今夜もぎんときは遅くまで重臣たちとの会議です。これでもう姫様は一週間も夫の顔を見ていません。
 ふたりでいればこそ、この隠棲もささやかな幸せに満ちていたものを。たったひとりの毎日にこの宮殿はあまりに広過ぎ、寂しさもつのるばかりでした。

 そればかりではありません。
 頭まで蜜に漬けられたようなこれまでの甘い日々の間に、姫様の心と身体はすっかりぎんときの思いのままに染めあげられておりました。
 夜が更けると否も応も無く、身体は彼を求めてやみません。なのにそれを放置されるとは、拷問にも等しい仕打ちです。

 今夜はどうして過ごしましょう。城にお抱えの魔法使いの作った人形で遊びましょうか。それとも甘い夢を見られるお酒を飲んでみましょうか。
 これからの長い時間を思うと姫様は憂鬱になりました。

 せめてもの慰めに枕元では小さなキャンドルが灯されています。時折揺らぐともしびは甘い芳香を漂わせ、姫さまの心と身体をわずかに安らげてくれるのでした。



 ですがいつまで経っても一向に眠りは訪れてくれませんでした。姫様は落ち着きなく、寝返りばかりうっています。そのたび黒髪がふんわり波うち、真っ白な夜着もその裾を花びらのように広げました。
 そのうち絹で包まれた身体はじんじんと鈍く疼きはじめました。姫様は固く閉じたひざを、もぞもぞとこすりあわせました。
 いったいどういうことでしょう。身体を休めるはずの香りが不思議なことに今夜に限って姫様の胸をざわめかせます。「はふ…」と漏れた今度の吐息は、人が耳にすれば頬を赤らめずにいられないほどのなまめかしさでした。
 眠ろうと閉じたまぶたの裏にはぎんときの姿が消えてくれません。大きな、けれどやわらかな手のひらはいつでも姫を撫でてくれました。柔肌を触りつくしてくれました。そして…。

 ぎゅっと身体を丸めた姫様は、愛しい人の名を呼びました。
 その呼び方はまるで市井の娘のするもので、とても王族らしからぬものでしたが、どうしてもそう呼びたいと特別彼に許しをもらった姫様の宝物でした。

「…銀ちゃん」


 細かに震える握りこぶしを、そっと何者かが包みました。
「はいよ」
「きゃああぁぁぁぁぁぁっ?!!」





 飛び上がって驚く姫様のそばには、いつから居たのかぎんときが腰掛け、ふんふん鼻を鳴らしています。
「なになに?なにこの卑猥な匂い」
「な、なんでも…っ、それに卑猥な香りではありませんっ」
 あわてふためき姫様がでたらめに羽根枕を振り回します。重く澱んでいた閨の空気は、あっというまに散らされました。
 けれどぎんときは意地悪くそこへ食いつき離れません。
「えぇ〜?だって今お姫様ムラムラしてたでしょ〜?このお香のせいじゃなかったらなに?姫様勝手に発情してんの?」
「は、はつじょ…?」
「聞いたよ?最近いろんな遊び試してるらしいねぇ?北の塔にさ、片目の魔法使いがいるじゃん。あのヤローが教えてくれるんだけどォ、えらくキモチイイおもちゃがあるって?どれどれ、そんなにキモチイイの?もう俺要らない?お役御免?」
「ば…ばかっ!ばかぁっ!もう、知りませんっ!」
 口をつくのは下品な言葉ばかり。せっかく久しぶりに会えたというのにムードもデリカシーもないこの男に、姫様はとうとう怒ってしまいました。
 それというのも元はといえば、ぎんときがをほったらかしにしたせいではありませんか。子供のように唇をとがらせ、ぷいと向こうを向いてしまいます。
 憎らしいことにぎんときはへらへら半分笑いながら、そのくちびるに噛みつきました。
「怒んないの」
 ちゅー。

 許してなどやるものですか。ぷいとまた顔を逸らしてやると、ぎんときの顔は苦笑に変わり、逃げる頬を追って口づけをしました。まだ逃げようとする姫様を、羽交い絞めにしてしまいます。
「はい、つーかまえた」
 ごろごろ、ふたりがベッドを転げます。さいわい何回転しようとも、落ちる心配はありません。
 やがて大人しくなった姫様へおわびのキスがたっぷり降りますが、姫様はふくれっつらです。

「知らない。ばかばか。銀ちゃんのばか。急に来たって知りません」
「まぁまぁ冷たいコト言わない。時間がちょっと空いたからさぁ、しばらくお姫さんの顔見てないしぃ?このへんも…」
 …と、下腹をもやもやさすってみせながら
「溜まってきたから抜きに来た」

 ぎんときは笑顔もにこにこさわやかに、悪びれもせず言いました。
「お姫様にお願いしてもいい?」


 今では日陰の身とはいえ、世が世なら一国の王妃にもなれた姫様に、売女の真似をしろとぎんときは言うのです。なんと無礼なことでしょう。
 けれどたちまち姫様の目はとろんとして、それを侮辱とも思わないようでした。
 姫様はベッドを下りるとぎんときの足元へひれふしました。
「ごしゅじんさま」

 額が床へつくほどの深いお辞儀をしてみせると、ぎんときのブーツをぎこちなく脱がせはじめます。
 慣れない手つきも当たり前です。姫様はご自分のドレスさえ自分で脱ぎ着することはないのです。



 そして姫様が身体を起こすと、その目の前にぎんときが自分自身を放り出しました。
 むっと濃い匂いが鼻をつきます。部屋に漂う香より野生的で、胸のいっぱいになる匂いです。中心ばかりをわずかに硬くしたそれを、姫様は両手で握りしめ、ゆっくりとしごきはじめました。

 ですがぎんときは姫様のやりようがあまり気に入らないようでした。一生懸命つとめる姫様へかけられる声は冷ややかです。
「いでででちがうちがう。もう、ヘタクソ」
「あっ、ご、ごめんなさい…ひさしぶりだったから…」
「あ?なに?それご無沙汰ってコト?遠まわしに俺文句言われてる?」
「いえ!いえっ!そんな…あの…、そんなこと…」

 姫様は次に舌でぺろぺろ、肉色の先を舐めてみました。それでもぎんときは良い顔をしません。
「いや、もういいや。あんま良くねーし」
「ご、ごめんなさい…わたし、なんにもできなくて…」


 姫様は悲しくなってしまいました。いまや国の要ともなろうとしているぎんときにくらべて、自分のなんと愚かしいことでしょう。大切な彼を悦ばせることもできないなんて。
「ほんっとなんにもできねぇ子だなァ」
「がんばりますから…もう少しだけ…」
 姫様は目に涙のにじむほど、のどの奥まで飲み込みました。
「ん、ぐ…、けほっ、こ、これ…いかがですか?」
「んーぜんぜん」
「じゃあ…あの…あのっ、これは…」
 じゅぼじゅぼ唾液をこぼしながら、それをくわえたままの頭を激しく前後させました。
「ダメダメぴくりともこねーわ」


 でも、ぎんときの言うのはうそばっかりです。姫様の小さな口には余るほど、いまでは赤黒い肉の棒がぱんぱんに腫れあがっています。その口元もニヤけているのに、悲しみにくれる姫様は気付きません。
「まったくお姫さんはぶきっちょだねぇ。まともにできることってなにがあんの?」
「あ…あの…それは…」

 ひとつだけ、ぎんときがいつも姫様を必ず誉めてくれることがありました。
 何度となく教わり、やっと覚えた言葉です。「恥ずかしくとも目を見て言うこと」、それも重々、しつこいほど言い含められています。
 姫様はベッドへ仰向けに転がると、お顔を真っ赤にしながらも言いつけどおりにぎんときの目を見て、
はなんにもできないので…、せめて銀ちゃんの、ご自由にお使いくださいませ…」
 自分で抱えた両ひざをぱっくり開いてみせました。



 むぐぐと奇妙な呻きをもらし、ぎんときは横を向いてしまいました。姫様が訝しげに訊ねても、隠した顔を見せてくれません。
 言うまでもなく本当ははじめから、姫様の手に触れられるだけで、その唇を寄せられるだけで、興奮のあまり死にそうになっていたのです。
「あの…?」
「んググ。あ。イヤ。うん。なんでもないよなんでも」
 下腹部へかぶさったシャツの裾は、うんと持ち上げられていました。


「もっと開く」
「は、はい、どうぞ…」
 理由は違えどどちらの声も、低く押し殺されています。
 姫様みずから開かせた秘所へ、よくできましたと褒めるようにぎんときは己を埋めていきます。互いの肉が混じりあった瞬間はふたりとも悦びに震えました。
「おぉぉ…」
 と思わずぎんときからは熱い息がたれながしになりました。壁はきゅううとぎんときに吸いつき、奥へ誘うように蠢いています。少しでも動けば果ててしまいそうで身じろぎ一つできませんでした。
 姫様は声を出すことも忘れ、自分を貫くぎんときを全身で味わっていらっしゃいます。利発なお顔も今は呆けて、知恵の足りない子供のようです。そんなにも欲しがっていたのかと、不憫で、可笑しく、それからぎんときはなおさら愛おしく思いました。


 やがて身体も快感に馴染み、少しずつ動かせるようになりました。すると姫様の緊張も解けて、艶めいたあえぎが漏れはじめます。
 ぎんときは懸命に気を逸らし、男の沽券というものを守らねばなりませんでした。


「姫様、女王様にならねぇ?」
「は…?あっ、ああ…、なに…?」
「ちゃんと聞け。まじめな話してんのっ」
 奥を突くと姫様がきゃんきゃん鳴きました。これではいくらまじめな話もまともに聞けるわけがありません。
「それがさ、あちこち顔出してたらさ、俺王様になれそうな感じになってきてぇ、お姫様さえその気ならどうかなーって」

 …つまり国盗りのお話のようです。いつのまにやらこの国をまんまと手中におさめていたとは。


 姫様はぽかんと口を開け、けれどまもなく興味もなさそうに手足をぎんときにからませました。
「いらない」
「あ、やっぱり?」
「そんなことよりもっといっぱいして」
 一国の支配を「そんなこと」呼ばわりです。
 そのとき姫の熱い内部がひときわ狭く縮みあがりました。「おっとと」あやうくぎんときは漏らしてしまうところでした。


 こうなると姫様は誰よりもわがままなお姫様でした。ぎんときの送る規則正しい動きに身をゆだね、身体の求めること以外には何ひとつ口にしなくなりました。
「もっと、もっと、いや、いや、そこ、もっと、もっと、やめ、ちゃ、やっ、」
「女王様になるよりも銀さんとセックスしてるほうがいい?」
「うん、うん、これ、もっと、もっと、もっと、もっと、」
「これ?」
「うん、うん、うん、」
「じゃ俺ももう仕事やめっかなー」
「うん、うん、も、やめて…」


 「ずっとこれだけしていましょう」

 苦しい息の下、お姫様は言いました。



 ぎんときは身体をべったりと伏せ、力いっぱい姫様を抱きしめてやりました。ぷるぷるの唇が腫れてしまうほど思いきり吸ってやりました。
 腰の動きは小刻みに早まり、下から必死にしがみつく姫様の声も高ぶります。
「あ…っ、も、もっ、もっとぉ」
「もっと?もっと欲しい?銀さんが?」
「うん、うん、銀ちゃん、銀ちゃんっ、だいすき!」


 ふたりは時を同じくして、同じ頂点を見て果てました。

 そのうえ何を望むことがあるでしょう。
 そしてふたたび彼らの仕事は、お城の奥のこの部屋の中で、仲良くすることだけになりました。









 あらためまして
 めでたしめでたし。









リクエストありがとうございました!
P子様から「いつぞやのパラレル企画でのお姫様ヒロインちゃんの続き」でした。
「あの姫様が粗野で素敵な勇者によって、どんな風に閨での姿を変えられてしまったのか…」 こんなことに。