反対の手には髪を撫でていてもらうのが好き。
今は腕枕をしているその手がなるべく自由に動けるように、は銀ちゃんにぴったりくっつき、ほとんど肩に頭が乗っかるようにした。
首の下からくぐらされた手が、耳たぶをこちょこちょくすぐってくれる。いつもは大好きな遊びでも、今夜に限っては困ってしまう。は身体の濁った疼きをさっさと散らしてほしいだけなのに。
銀ちゃんを催促するように、片足を立てて腰を浮かせた。こうすれば、布団の中に隠れたままでも裾の中へ手が入りやすい。意外に手慣れている自分をは不思議に感じたけれど、なんのことはない。
普段万事屋へ泊めてもらう時も、時々がまんしきれなくなってこうして慰めあっているのだ。ふすまをへだてた向こうの部屋から、神楽や新八が起きてこないかびくびくしながら。
やがて浴衣の裾が割られる。大きくまくりあげることはせず、手だけが静かにすべり込む。なにかあった時にごまかせるように、着物をなるべく乱さずに済む…これも経験から学んだやり方。
に触れた手も火照っていた。手のひらはわざわざひざのすぐ上から内腿を撫であげるように、をじらして、やっと来てくれた。
くちゅ。
どこにもまだ触れていないのに、確かに小さな水音がした。
くくっと喉で笑われて、遅れて気付いたも真っ赤になる。あふれた蜜が玉と浮くくらい、そこはぬかるんでいるということだ。
触れるか触れないかのきわを、銀ちゃんの指がゆっくり伝った。ずっと後ろ、お尻の下のほうまで。
「おーすげ。こんなとこまで垂れてら」
はごつんと額を押しつけた。だからそんなことはいいんだったら。
ぴたりと、こんどはにもちゃんとわかるだけ、指先は大切な部分を撫でた。開ききった花弁の形をなぞり、二枚の合わさる上端で息づく花芯にとろみをなすった。
たっぷりと濡らされすべりやすくなった種の上で、くるくる細かな円を描かれる。だんだん大きく膨れる粒を面白そうに爪でひっかかれる。
ぐんぐんとはのけぞって、そこを突き出し求めてしまう。
そうじゃないのに。
はやくはやく、はやく済ませてほしいだけなのに。
くんくん、鼻を鳴らしてねだって、やっと銀ちゃんがわかってくれた。
つぷんと銀ちゃんの指が一本、に深々と埋められた。
「はわ…ぁ…」
それだけのことでふわんと体が浮き上がる心地。さわさわ、ふともものずっと先まで、肌をさざなみが走った。
銀ちゃんでいっぱいに広げられる、あれの感覚とは違って、指だけでそこをいじくられるのは、中を散らかされていくようだ。
しのびこんだ指がぐりぐりと内側の壁をこすっている。ときどきの気持ちとは別に、どうしても身体の跳ねてしまう場所がある。
まさにその時、びくん!と思いきり腰が跳ねた。
来た。「そこ」だ。体の内側を乱暴につねり上げられているような。
銀ちゃんのシャツを噛んで声をかみ殺すに、上からぴとりと唇があたった。
「えらいえらい。だよな。聞かれたら恥ずかしいもんな?」
優しく気遣ってくれながら、けれど銀ちゃんはの内側を責めるのもやめない。指の届くもっとも深いところを、手のひらごと叩きつけるように突いた。泡立てられた愛液の、ぐっちゅんぐっちゅん濃い音がした。
「ん…ん、んっ…」
声を殺すのは思っていたよりずっと難しく、苦しかった。唇を噛みしめ、胸につかえた大きな塊を崩しながら吐き出していくのだけれど、そうして吐き出す量よりも、胸に溜まっていく声の方が圧倒的に多いのだ。
「ちょっと強いか?でもほら、おめーこれがいちばん早くイケるみたいだし…」
がくがく頭を振るわせるのがせいいっぱい。
がお願いしてしてもらっているんだから、お礼を言わなくてはいけないのに。
力一杯目をつぶりすぎてまわりの毛細血管が切れそう。ぎりぎりと歯を食いしばり、眉間に深いしわを寄せ、あんまり顔を歪めたを銀ちゃんも不憫に思ったんだろう。心配そうに言わせてしまった。
「なぁ、ムリすんな。ちょっとぐらいなら平気じゃね?」
「はひ…」
はよっぽど情けない顔で銀ちゃんを見上げたのだと思う。
「だいじょうぶだって。あっちもそれどころじゃねえよ」
そうかもしれない。
さんもちょうど先生の意地悪に鳴かされているところだった。
「今の僕たちが誰かに見られているとしたら、…どうする?」
「んっ、ん、…な」
「ふっ…も興奮しているのか、締まるよ」
「や、あ、これっ…は、そ、じゃなくて。…もうすぐ、だから…」
「否定しなくていいよ。悪くない反応だ」
頭の中がまたしても彼女の声に占領される。ためいきのようにゆるやかな喘ぎは、確実に階段を上っている。あれでは確かにの声なんか聞こえまい。
もういいかな、と箍もゆるみそう。
銀ちゃんだってそう言ってる。に浮く汗を吸いながら。
「すげぇつらそうよ」
「うん…」
とてもつらい。
中で暴れるあなたの指が。
「もういいんじゃね。どーせ聞こえねえ。力抜きな、ほら」
「はー…っ、はー…っ」
でもね、でもね、
「思いきって声出しちまえ。な?苦しいだろ」
「やめ…やめて…。出ちゃう…。声、出ちゃう…」
そしておそらく、はその瞬間蕩けてしまう。
「きもちいい」以外はなにもなく、「きもちいい」がなににも勝るダメなになる。
ぎしぎし伝わる振動と、リズムを合わせる女の声、男の声、銀ちゃんの声がぐるぐる渦巻き、ただでさえ足りないの理性を奪っていった。
いつのまにかさんの声が途切れていた。いや、そうじゃない。人の耳には聞こえない、周波数の高い高い音に変わったのだ。
その声はの耳ではなく、肌を激しく震わせていたもの。
自分もあんなふうに喘ぎたい。いやらしい、すてきな、女性の声で。
声なき声に引きずられ、ぎりぎり形を取りそうなほど、の吐く息は荒ぶっていく。
「…っ、は…、あっ、ああっ…、」
それでもなんとか崖っぷちで踏みとどまれそうだったのに。
それをあっさり突き落としてくれたのは銀ちゃんだ。
のけぞった喉に、かぷぅっと優しく歯が立てられた。
「!!?」
ぞくぞくぞくっと腰骨に走る悪寒。よじれる身体。力いっぱい突っ張るつま先。
突然の真っ白な絶頂に、が抗えるはずもなかった。
「…ゃんっっ!!」
やだ。なにこれ。つぶれた猫の鳴き声みたい。
なんであのひとみたく鳴けないんだろう。
霞む視界の中心で愛しい顔も歪んでいた。苦痛にも等しい快感の頂点をふたりはほとんど同時に迎えた。
力尽きたの身体が落ちる。その背に同じく落ちた腕は、そのままでいいとを許してくれるようで。
ほんの少しの間だけ、その気持ちに甘えていいことにする。
は伊東の胸の上に、ぐったりと身を横たえた。
汗ばんだ胸に頬を寄せ、心地よくまどろむにまかせる。かろうじてまぶたは開いていたが、焦点は揺れて定まらない。の目はただぼんやりと、そこに在るものを映していた。
曇りがちだった夜の空はすっかり晴れているようで、もう月明かりを遮るものはない。照明のないこの部屋も澄んだ光で昼のようだった。
青い明かりに映えるのは、たちからは離れた場所で、こんもりと丸くふくらむ布団。
現実味に欠ける光景だった。伊東との愛し合う寝間に、ふたり以外の誰かがいるなんて。
掛け布団を深く引き上げて、顔はほとんど見えなかったが間違いない。それは万事屋坂田銀時と、という名の娘だった。
長い間半信半疑でいただが、やはりふたりは恋人ではなかったのだと思った。
頭をまるごと抱え込まれては銀時の胸板で窒息させられそうにしている。はしゃいで寝ようとしない子供が力づくで寝かしつけられているよう。布団と、銀時の身体のおかげでの出す声はくぐもっている。
たった今聞こえた音はそれか。
にーにーと猫の甘えるような。
子守歌でも聞かせるように、銀時も彼女にささやいていた。とても穏やかな声だった。のこれまで聞いたこともない。
仲の良い兄と妹か、パパと娘か、親猫仔猫。ふたりの姿にはほっこり和まされた。
「にゃん…、うにゃん…うにゃ、うにゃ…」
「ゃん…、あ…っは…やぁん…」
けれど仔猫の鳴き声はだんだんと色を変えてくる。せつなさを増し、切実に訴え、時おりヒトの言葉が混じった。
「だめ、銀ちゃん…そこ、だめ…、、またぁ…」
なんだろう?これではまるで。
上掛けは蹴られて少しずつずれる。今では肩まで明らかになり、すると銀時らの交わす言葉は、にもはっきり、のこらず聞こえた。
「だめじゃねーだろ」
「だめ、だめ、だって、もう…」
「そーだな。さっきいっぺんイったばっかだよな」
「んゅっ…」
「はーずかし。そんですぐまた次イっちゃうわけ。うわーちゃんたらはーずかし〜」
「だ、だって、銀ちゃんが、抜いてくれない、からぁ…」
「吸いついて抜けないんですぅ〜」
「んんっ、んにゃ、んにゃんっだめ、ああっ、だめっ、、もうっ…あっ、ああっ…!」
ぽふっ、と布団の山が跳ねた。
本当に、仲の良いパパとお嬢さん
…で、あるわけがない。
は目覚めた。
(ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!)
とっさに身体を起こしかけたが動かない。伊東の腕は今でははっきり、を胸の上に押さえつけていた。
はっと目をやると身体の下で端正な顔が微笑んでいる。彼らしからぬ悪ガキめいた表情に、酒と伊東に酔わされた頭もからくりを察した。
伊東と銀時は下の料理屋で無茶な飲み勝負をしていたはず。伊東の杯に注がれた怪しい酒を代わりに飲みほし、は知らぬ間に眠ってしまったのだったが。
おそらくはそのあと彼らの間で話がついたのだろう。ここに銀時の居ることそのものが伊東も示し合わせている証拠。
悪ふざけにもほどがある。
「せんせい」
「今は名前を呼ぶ約束だろう?」
「呼びません」
声に精一杯の抗議をこめる。けれど伊東は笑ってしまって取り合わなかった。
「安心していい。あちらにも君を見る余裕はなかったようだ。僕としては見せてやりたかったがね」
「ひどい…鴨太郎さん」
「裸を見るなどお互い様だと言ったのは君だろう?」
それは銭湯の女湯の話。そして今見ているのは「裸」ではない。しかし反論しようにも、伊東の拘束は揺るぎなく、それをふりほどく力はにない。
可哀想に、最初からそのつもりで呼ばれたことを、あの子は知っているんだろうか。
「はぁっ…、はっ…、はっ…、はっ…」
は大きく喉を反らせ、全身で荒く息をしていた。うっかり聞こえたあれが本当なら、立て続けに達して力尽きたのだろう。白い浴衣の胸がいつまでも上下している。
「どうして君まで見ているんだ」
笑い含みに揶揄する声は、それまで聞こえた誰のものよりも、暗い部屋の中によく響いた。これを境に偽装は無用と、宣言でもするようだった。
声を聞いたがこちらを向いて、潤んだ瞳と視線が交わった。
さんと、ばっちり目と目が合ってしまった。
とはいえすでに「きもちいい」以外はどうでもいい頭になっていて、悩むほどの知恵も回らない。はとりあえずにっこり笑った。「こんばんわあ」と挨拶をする図々しさはさすがにない。
それでもさんを絶句させるには十分だったようだ。
…まあいいか。
気を取り直し、うにゃーと奇声をあげながらは銀ちゃんに抱きついた。
収縮する中を楽しむようにずっと埋められていた指が、ようやくから抜けていく。ぬめりを帯びすぎ溶けたような指を、は握って表面をぬぐった。証拠隠滅ではないけれど、銀ちゃんはきっとこれを舐めて意地悪を言うと思ったから。
良くしてもらったお返しにも下の方へ手をのばす。服の上から包んでみると、そこはさっきよりもずっと硬かった。
「ねえ、これ。これは、がいくのを見たからだよね?」
どれだけぶりかで心おきなく声を出せたのがすがすがしい。
「ねー銀ちゃんも。銀ちゃんも」
は銀ちゃんにたくさん触れたい。こんなもどかしい布越しではなく。今頃体温で蒸れているはずの、生身のそこを、もっと、直接。
銀ちゃんは少し困った顔で肩をすくめてみせたけれど、が布団へずるずると潜るのを止めようとはしなかった。
ぴんと屋根を張るズボンをゆるめ、下穿きごといっぺんにずりおろした。ひざのあたりでからまった服は銀ちゃんが自分で蹴飛ばしてくれて、身軽になった股の間ではぱっくんとそれをくわえた。
「そこ暑くねぇ?」
「む…あふい」
口に入れたまま答えると、頭の上が急に明るく、それから涼しく、息が楽になる。重たい布団ははがされていた。
でも、これでなにもかも丸見えだ。むくむくと持ち上がるたくましいものを舐めているのも見えるだろうか。
うれしそうに目を細めぺろぺろと、先っぽから漏れるがまん汁というのをすすっているのが見えるだろうか。
尽くす姿を見られるぶんには抵抗などないも同然だった。
見えないのなら聞こえるようにと、はちゅくちゅく、品のない音までわざとたてた。
えらいでしょ。
は銀ちゃんに、こんなことだってできるのよ。
ちらちら様子をうかがうと、銀ちゃんも体を起こしてこちらを見ていた。
ほらね。
とても気持ちの良さそうな、そして満ち足りきった顔。をいいこいいこしてくれる。
「で、おめーは何と戦ってんの」
声にした覚えはなかったのに、いわれのない競争心がバレていたとは。
先を舐めながら根本では、指で作った輪を締めて緩めて、は懸命に手と舌を使った。かなり酔っていたはずなのに普段より反応は敏感なほどだ。心はこもっているものの、単調なのこんな触り方で、はちきれそうに大きくなる。
あえぐことこそしないけれども感じてくれているのはわかった。きゅっと唇を引き結び、あのおしゃべりが声も出さない。
代わりに何度もせわしく唾を飲み込んでいて、少しでも銀ちゃんの助けになるよう、は両手の動きを早めた。
「あー…すげーイイ」
快感にまかせて漏れたその呻きがなによりへのご褒美だった。
さっきの先生の声をきっかけに、銀ちゃんももうわざとらしく声をひそめるのはやめていた。
そしてへというよりはむしろ、あとのふたりへ聞かせるように、よく通る声で問題を出した。
「なぁ、?俺もう出そうなんだけど。銀さんイクときはどうすんだっけ?」
ずじゅるるる。音をたて、強く吸い上げてから、もう一度深くくわえなおす。
それがの答案。もちろんひゃくてん。
さらさらと髪を梳きこぼしていた指に、次第に強い力が加わった。下腹部へ押さえつけられた頭はもはや逃げられない。
「は…っ、まだ…。もっと…な?」
ぐっと奥まで太いのをねじこまれ涙が出る。
「苦しい?」
もちろん。
でもは黙ってしゃぶり続けた。どう答えようと意味はない。銀ちゃんの気が済むまでは道具だ。
いっぱいに頬張った口の中で、前触れとなる痙攣を感じるとやはりまだ怖い。
とっさに怯えて身構えたの、髪を引っ張り、強く引き寄せ、
銀ちゃんは中に熱を吐き散らした。
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