※お姫様コスプレその4


 「HP 006/100 」
 「MP 000/000 」
 (ステータス画面確認中)
 「どく」



 大きなお城の奥深く。空しく豪奢な石造りの間に男が案内されてきました。
「こちらでさァ」
 亜麻色の髪の近衛隊長が扉を開けて先に立ちます。一歩後ろを続くのは漆黒のローブを身にまとい、顔を隠した怪しい男です。男の歩みは悠々と、仮にも王族に連なる者の前へこれから出ようというのに、少しも恐れ入る風がありません。その態度は不遜極まりないものです。
 近衛隊長が鋭い視線で咎めますが、分厚い布地に遮られ男へは届かないようでした。

 重い扉を開けるともうひとつ、細かな彫刻を施した扉が二重に部屋を囲っています。厳重に外から守られた、どうやらここは寝室のようでした。贅を凝らした部屋には不似合いな…ひとりが眠れば満員になる小さなベッドが置かれています。
 その枕元に銀髪の男が不安そうに立ち尽くしていました。
「あぁやっと来た!早く、早く診てやって!」
 男の到着したのを見て、銀髪の男は待ちかねたように大げさな手招きをしました。

 男の顔を覆っていた布が落とされます。夜の色をした乱れ髪と、半分を包帯にぐるぐる巻かれた端整な顔が現れました。
 男はこの王宮の森の外れ、北の塔に棲む魔法使い。しんすけ様といいました。
 そして今にもべそをかきそうに彼にすがりつく情けない銀髪は、一度は強大な魔王をもその手で倒したはずの猛者。冒険の褒美にこの国の姫君と結ばれた勇者ぎんときです。

「なぁ、直るよな?お前ならこれ直せるよなァ?」
「何があった」
 しんすけ様は不機嫌でした。俗世と交わりを絶って暮らす魔法使いを呼びつけるとは。彼に会うには王族といえども自ら塔へ出向くのが掟です。
 答える代わりにぎんときは自分の立っていた場所をしんすけ様に譲りました。


「こりゃあ…」
 声が震えたのも無理はありません。
 ベッドの中には姫様の姿がありました。
 姫が眠るには粗末過ぎる寝床で、堅くまぶたを閉じています。胸の上で組みあわされた指は職人の彫った石細工のようです。
 流れる黒髪、ぬけるような白い肌はそのままに、姫様はまるで息のない人形になられたかのようでした。



 魔法使いはその知識をもってお医者の役もこなします。しんすけ様の表情はすぐさま事務的なものへと変わり、姫様に手を伸ばしました。
 けれどその前に。
「お前は出ていろ」
 しんすけ様はぎんときの横を動こうとしないもう一人の顔を見やりました。これから姫の夜着を脱がせ、ことによっては身体のずっと奥まで明るみにさらすことになります。それを見せるのは憚られました。
「あぁ、いいのいいの。この子はいいの」
「しかし」
「いいいい。事情はわかってっから」

 しかしぎんときがあっさりと言います。訝しげに眉を寄せますが、姫の夫である彼が言う以上、しんすけ様に何も言えることはありません。ふたりの視線を気にしながら、診察を始めることにしました。


 まずは呼吸を確かめるのか、姫様の口元へ手が伸びます。
 ところがなんということでしょう。
 それまで引き結ばれていた唇がわずかにゆるんだとたん、粘り気の濃い白濁が、中からひとすじしたたり落ちました。
「………」

 心の底から汚らわしそうに魔法使い様に睨まれても、ぎんときはしれっとどこ吹く風です。
「だーってちょうどそこ使ってたんだもんよ。しょーがねぇじゃん」
「………」

 術の中にはいかがわしいものも数あれど、基本的にはしんすけ様は魔術を究めんとする求道者です。
 彼は呆れてものも言えません。ぎんときの隣ではやはりもうひとりが、顔を真っ赤にうなだれています。この男につき合わされるのも大変だと、しんすけ様は彼らしくもない同情すらしてしまいました。


 気を取り直し姫様の夜着へ手を伸ばします。胸元で結ばれたリボンをほどくと、軽い絹地がはらりとひろがり、丸みを帯びてやわらかな乳房があらわになりました。
「………」
 薄々予想はしていたものの、その惨状は目を覆いたくなるほどでした。
 姫様の胸といい腹といい足といい、ありとあらゆる所には真っ赤な口づけの跡がありました。3つにひとつはくっきりとついた歯型です。よくよく見れば肌はべったり濡れ光り、どこもかしこも獣の舌にでも舐めまわされたようでした。
 足をつかんで広げてみると中心からもとろとろと、口から漏れていたものと同じ、おそらくぎんときのものでしょう生臭い粘液が垂れていました。
「…後始末くらいしてやれ」
「どう?直るよな?すぐに直せるよな?」
 我が道をゆく勇者様はひとの話など聞いてはいません。
 それでも姫様を心配する気持ちは本当のようでした。


 でもしんすけ様は黙ってかぶりを振りました。
 呆然と目を見開く男に、姫様の手をとり見せてやります。
「………っ!?」
 さしものぎんときも息を飲みました。その手はすでに手首の近くまで泥の塊と化していました。姫様はみるみる侵食され、ぎんときの目の前で肘が、さらにその上が硬い土くれと変わっていきます。
 しんすけ様はもう一度、ぎんときに姫様の手を見せました。小指の先に小さくぽつんと、針で刺されたような跡があります。
「おそらくここから毒が入ったな。…あれだ」
 あごで指した先には花瓶が置かれています。病人を慰めるためにしては生々し過ぎる赤色の薔薇が、大輪の花を咲かせていました。
「毒薔薇だ。どこであんなものを手に入れた?」

 しんすけ様はもうぎんときを見てはいません。険しく細められた隻眼は、それまでなりゆきを見守っていた小柄なその人に向けられていました。強く問い質す口調になったのは致し方ないことでしょう。
 彼がそれなりに丹精して作り上げたせっかくの人形を、だいなしにされてしまったのです。
「え…?」
 ぎんときが目を丸くして、傍らに寄り添う彼女を見つめました。



 ずっと側にいたもうひとり。隣に立つのはなんと、姫様です。
 ベッドの中に横たわるのと同じ黒い髪、きめ細かな肌。身にまとうドレスも同じものです。けれどベッドの中に居るのとは似ても似つかない健やかなお姿。
「…だって!だって銀ちゃんが…!銀ちゃんがいけないんです…っ!」
 人形とはいえ自分とうりふたつの身体を目の前でいじりまわされて、その顔は怒りと恥じらいで真っ赤に染まってしまっていました。





 夜と朝をひとつずつさかのぼった、すなわち一日前のことです。







「いやっ!いやっ!やめて!やめて!銀ちゃんっ!銀ちゃん…っ!」
 涙ながらに姫様がどれほど言っても聞いてもらえません。ぎんときは姫と同じ顔、同じ身体をした人形を、姫様に見せ付けるようにその目の前で犯していました。
 うつろな目をした人形はどんなに強く突かれても声ひとつ出しはしませんが、ぎんときを包む内側の壁はきゅうきゅうと強く締まります。
「ははっ、こりゃいいわ。すげぇ気持ちいい。こりゃ姫様がハマるのもわかるわ」
「は、ハマってなんか!ハマってなんかいませんっ…!」

 魔法使いの通された場所は実は控えの間に過ぎません。ふたりの為の寝室はもうひとつその奥にありました。
 ぎしぎしと激しく軋みを立てているのは大きな天蓋つきのベッドです。堅固な作りの寝台は上で何人が暴れようとも壊れる心配はありませんが、垂れ下がる紗のカーテンはひっきりなしに揺れていました。


 ぎんときは姫様そっくりな人形に、もう二度も精を放っていました。
 見分けのつかぬほど似せてあるとはいえ、所詮お人形はお人形。吐き出されたものを飲み込む仕組みは備えていません。身体がゆすぶられるたびに口からこぼれる精液を見て、姫様は悲痛な声を上げました。
「そんな子の中に出しちゃいやっ!もうやめてぇっ…」
 泣きながら手をのばします。愛する人が目の前で別の女を抱いているのです。嫉妬で気が狂いそうでした。
 ぎんときの心も、その愛も、身体も。そしてもちろん放たれる種も、すべては姫様のものです。できることなら飛びかかり、力づくでも奪い返したいのですが、今の姫にはそれもかないません。
 姫様もまた、ぎんときと同じ顔同じ身体の人形に後ろから犯されているのでした。

「あっ…、あっ、あ…ふっ、んっ、いやっ、いやぁっ…」
「なーに言ってんの、お気に入りなんだろ?わざわざ魔法使いに頼んで作ってもらったお人形だろ?」
 言葉で嬲るぎんときに、姫様は夢中で首を振りました。
 もとはといえばぎんときが長いあいだ国を留守にしていたせいです。独り寝の寂しさ苦しさについに耐えかねた姫様は、恥をしのんで北の塔へ赴き、魔法使いに代わりの玩具をもらったのでした。


 帰って来て、それを知ったぎんときは怒りました。姫をほったらかしにしていた自分の怠慢は棚にあげ、姫様の不実を責めました。もちろん胸の内側は、姫をたっぷりいたぶれる理由ができたことに大喜びだったでしょう。
 ご丁寧に姫様そっくりのお人形まで魔法使いにこしらえさせて、おしおきをすることにしたのです。


「ご、ごめんなさ、ごめんなさいっ!もう、しないっ、もうこんなのと、しないからぁ…っ、あぁっ…」
「だぁめ。姫様はそいつにヤられてな。俺はこっちのお姫様とヤるから」
 目くばせをするとぎんときの人形が姫様の腰を抱えました。いつの間にやらぎんときの人形もぎんときの命令しか聞かなくされています。
「やっ、ああんっ、あんっ、だ、だめぇ…っ、だめ、だめっ、ひんっ…!」
「我慢しなくてもいーんだよぉ?わかってんよ?気持ちいいんだろ?しょーじきに言やァ怒んねーよ?」
「ちが…、ちが…っ!ううんっ、んっ…んくっ…!」
 敷布に爪を立て、歯を食いしばります。ぎんときと同じ形をしたものに延々とこすり続けられ、絶頂はその身に迫っていましたが、愛する人の目の前で違う男に気をやらされるなど決してあってはならないことです。
 けれどそうして姫様が健気な意地を張れば張るほど、ぎんときの目は躍りました。


 やがてぎんときは人形の穴から自分自身を抜きました。姫様には絶対にしない手荒さで人形の身体を裏返すと、今度は後ろから挿入して、そのまま抱え起こします。
 うつ伏せにされた姫様の前で、自分と同じ顔をした人形が大きく股を開かされていました。
 赤黒く猛ったぎんときのものが中心に深々と埋められています。白く泡だった淫らな液に男女の性器がまみれていました。
 そしてぎんときは姫様に、ニヤリと口を歪めてみせました。
「舐めろよ」
「…?!…?…っ?!」

 姫様の目はぐるぐる回ります。なんとおぞましいことを言うのでしょう。いやいやと顔を伏せるのですが、後ろから髪をつかまれて無理やりに顔を引き上げられます。
「は…っ、いや、いやぁ…っ」
 まぐわう男女のつなぎ目が姫の間近に突きつけられました。
「いや…、いや…、いや…っ」


 がむしゃらに髪を振り乱し、けれどもやがて姫様は気づきました。
 ぎんときの瞳が期待いっぱいに自分を見下ろしていることに。
 ぎんときも姫様に見られているとわかったようです。声をたちまちやわらげて、今度は撫でるようにささやきました。
「あーあ。姫様に舐めてもらいてぇな〜?そしたらこんな人形じゃなくて、姫様に挿れてやるのにな〜?」
「…ほ、ほんとう?」

 ぎんときがうそつきだということは姫様もよーく知っています。きっとその言葉も。
 それでも今はそのひとことを無理にも信じるほかありません。


 ゆっくりとあごを突き出して、口を半分と少しだけ開き、姫様は震える舌を伸ばしました。
 ぎんときと人形のつなぎ目に、おそるおそる舌の先が触れます。
 わずかに露出した裏筋をぺろりと縦に舐めてみると、しょっぱいような、甘味もあるような、自分の味と匂いがしました。
「ははっ、そうそう。やりゃできるんじゃんいい子いい子」
「気持ちいい…?」
「ああ。すげーイイよ」

 うれしくなって、今度は舌の平たいところでぺろんと舐めてみます。ぎんときがそんな姫様を褒めながらずぼずぼ挿れたり出したりしました。
 心地良さそうなぎんときの様が姫様の心を蕩けさせます。ふくろに垂れてきた露も残らずきれいにしてあげました。くう…と小さな声を漏らしてくれたので、もっともっと心をこめて舐めました。
 そのうち自分を慰めているような、おかしな気持ちになりました。
 ずっとその間も姫様の中はぎんときにかき回されています。与えられていた快感に向き合うと、うっかりさらわれてしまいそうでした。
 ほんのいたずら心から、つなぎ目ではなく人形の花芯をそっと唇で包みました。お口の中で夢中になって舌を転がす姫様に、ぎんときは何か察したようでした。

「あぁ、そろそろか。いいよ、お前も一緒にイクか」
「だめ…だ、だめ…、そんなの…」
「んだよもうギリギリじゃねーか。我慢しねーの、ほらっ」
 ぎんときに命じられた人形が小刻みに腰を動かします。こらえきれずにぎゅっと目をつぶると、かえって身体をまっすぐ貫く甘い刺激に追い詰められました。
 熱くせつない息が漏れます。
「あ…ふっ…、銀ちゃん、銀ちゃん…、きもちいい…?」
「ああいーよ?おめーは?」
「うん、うんっ…、、いい…、気持ちい…」
「イキそう?」
「ん…っ」
 言えずに口をつぐみかけると、お腹を破られるかと思うほど深くぎんときに突き刺されました。
「んあああんっ!」
「一緒にイこ?、な?ほら、見ろよ、こんなに深く挿入ってんぞ?ほら、見てみ」
 目の前にあるその部分はぎんときの怒張をくわえこんでいました。自分のものなのかひとのものなのか、とっさに頭が混線します。けれど間違いなく姫様の身体も中でぎんときを締め上げていました。
「ああっ、うんっ、うんっ、…、だめ、だめ、もう、いっちゃう、、いく、いっちゃぅっ…!」
 きゅんと身体が竦みます。爪先から頭のてっぺんまでが、裏返される気持ちがしました。
 同時に目の前のぎんときもぴくぴく何度も脈打って、
 しばらくすると隙間からたっぷりの汁が漏れ出したのですが。


 それを見た姫様は青くなりました。



「あああっ!だめぇっ!出しちゃだめっ!だめぇっ!そんな子の中に出しちゃいやあっ!」
「あぁ〜…無理無理無理もう無理だって。おー出てる出てる。おぉぉぉぉ…」
「やだあぁぁぁぁっ!ばかっ!ばかっ!銀ちゃんのばかぁっ!」





 ぎんときのあまりに心無い仕打ちに今度は怒った姫様が、ひそかに手に入れた毒花で、二度とお人形を使えなくしてしまったのでした。








「あり。もう御用はお済みですかィ?」
「あぁ。ありゃァもう使いものにならねぇ。どこへなと適当に始末しろ。…いや、中に入るのは後にしな。もうしばらくは取り込み中だ」
 寝室の外に控えていた近衛隊長に命じると、しんすけ様は懐から細い細いパイプを取り出しました。甘ったるい煙を長く吐き出し、深いため息を隠します。
 今ごろは姫様の機嫌をとるために歯の浮くやりとりをしているのでしょう。
 臆面もなく頭でも撫でて
 「あぁ悪かった悪かった。そんなにヤだったとは思わなかった。そりゃ銀さんが悪かった」
 「ばか…っ!ばか、ばか!銀ちゃんはのものなんだからっ、一滴もよその子にはあげないのっ!」
 「…よそのコったっておめーの顔したお人形じゃねーか、なァ?」
 「でもだめぇぇぇっ!」
 「あーはいはい」
 そしてぎゅううと抱き合って、「仲直り」でも始めるのでしょう。

 あれはこの世になんの役も為さず、互いに仲良くすることだけを仕事にしているふたりなのです。そんな連中にまともに関わっては馬鹿を見ます。
 魔法使いのしんすけ様はうんざり肩をすくめると、空へ薄くのびる紫煙に紛れて間もなく姿を消しました。



 大きなお城の奥深く。王族でも限られた者にしか立ち入ることの許されない一画です。
 訪れる者とてほとんどいない、静かで寂しく、広い住まいで。
 勇者ぎんときと姫様は今日も幸せに暮らしていました。


 めでたしめでたし。









リクエストありがとうございました!
P子様から「お姫様パロをもう一度。できれば魔法使い様も何らかの形で交えてほしいです」でした。
過去のお話はこちらからどーぞ→勇者ぎんときとおひめさま